第63話[騎士団長]
ジグロメテア王国に馬車で向かう事、数十分。
俺達は少女の名前を聞いていた。
リヘロと名乗る少女の手を握り、ルタが笑顔を向ける。
「大丈夫だよリヘロちゃん」
「私達が何とかしてみせるから」
お姉さんぶりたいのだろうか、リヘロを気遣うルタに心が癒される。
そんな中、急に馬車が止まった。
「すみません、ここからは来客に怪しい人物がいないか確認があるんです」
「問題ないですかね?」
馬車の運転手さんがそう尋ねて来たので俺は「大丈夫です」と答えた。
その事を運転手さんが兵士に伝え、兵士達が馬車の荷台へとやって来る。
城下町までまだ遠いのに、もう門番が居るのか。
でもまあ、これはある意味ラッキーなのではないか?
此処で俺が勇者だと伝えて、そのまま王様へと取り繕って貰えば……。
そう思い俺は兵士達に勇者のアザを見せ、俺が勇者である事を伝えた。
「勇者様でしたか、これは大変失礼しました」
「王様に会いたいんですが取り繕って貰えますか?」
「勿論です、直ぐにでも……、んっ?」
眉間にシワを寄せ、兵士はサナの顔を覗き込む。
俺も自然とサナに視線が行き、そして吹き出してしまう。
「何だよサナ、変顔何てして」
周りもサナの顔を見て笑う。
サナなりにリヘロを気遣っているのかな?
そう思っていたが、どうやら違うみたいだ。
「おい、サナって……」
「ああ、間違いない」
「犯罪者のバルサ・ナントレイだ」
えっ?
「騎士団長に連絡を……」
「すみませんが勇者様、此処を通す訳には行きません」
えっ、何で?
状況が理解できないまま俺はサナを睨んだ。
「何したの?」
「いや〜、前に神童と呼ばれた人物と出会った事を話したじゃないですか?」
「ああ、したけど……、まさか……」
「そのまさかです」
「なら何で付いて来たの?」
「いや〜、まさか犯罪者になっているとは思わなくて……」
「一応、牢屋にも入りましたし……」
その後、幼い騎士団長の家に臭い袋を投げただろうが。
はあ、仕方ない。
此処は俺が何とかするしかないか。
そう思い、後から駆けつけて来た騎士団長に俺は頭を下げた。
だが……。
「謝罪など不要です」
「どうかお引き取りを」
同い年位の少年に俺はそう告げられた。
彼が神童と呼ばれている人物なのか。
髪は長く、何処か冷たい目をしている。
「申し訳ないが、はいそうですかで帰れないんだよ」
そう言うと俺はリヘロについて話した。
「だから?」
「犯罪者を庇うなど本当に勇者何ですか?」
「でも……」
「これ以上、進むのでしたら例え勇者だろうと敵と見做して斬ります」
そう言うと騎士団長は剣を抜く。
そんな……。
まともに取り合ってくれないじゃないか。
何か策は無いのか考えているとセツコが拳を握り飛び出して来た。
そして……。
第63話 完




