第50話[魔王軍幹部達]
シャルディとキャルディから報告を受けたザネンが、緊急と称し他の魔王軍幹部達を招集し、話し合いの場を設けていた。
だが、来たのはネクロマンサーとシャルディ、キャルディの姉妹のみ。
この事にザネンは酷く怒っていた。
「人望が無いんじゃないの」
そう呟きながら編み物をするネクロマンサーに近づくとザネンは編み物を取り上げた。
「貴様こそ魔王軍幹部の癖に何をしている」
「いやぁ、貧しい子供達にあげる為に服を編んでたんだ」
「ふざけるなよ」
「人間の為に編み物とか魔王軍幹部としての自覚はあるのか?」
「君の方こそ数年前に国を襲ったのはどういうつもりなの?」
「僕が行かなきゃ多くの人達が死んでいたんだ」
「だからどうした」
「貴様が邪魔をしなければ勇者を殺せていたんだぞ」
「だからどうしただって?」
「君は命を何だと思っているのさ」
「フンッ、死体を操る根暗マンサーがよく言うぜ」
「ちょっと、喧嘩駄目」
「お姉様、怖いですぅ」
「フンッ、魔王軍幹部の中で一番性格の悪いお前が何を言う」
「キャルディの悪口、許さない」
幹部四人が揉めている中、遅れてもう一人の幹部がやって来た。
(はあ、またやってる)
幹部招集何て言うから嫌々ながら来てみれば、案の定喧嘩しているよ。
面倒臭い事になる前に帰っちゃおうかな〜。
コイツらと話すより寝てた方がマシだしね。
それに来てない奴も居るし。
「あっ、ルビック」
げっ、キャルディに気づかれた。
「相変わらず可愛いお洋服を着てるね」
「あはは、キャルディは相変わらずダサい服を着ているよね」
「つか洗ってる?」
はぁ、見つかったら仕方ない。
適当に話しを聞いて帰るか。
僕は適当な席に座り、さっさと話し合いをする様に促した。
「実はだな……」
そう言って僕はシャルディとキャルディが勇者に襲撃し、それが失敗に終わった事を聞かされた。
まあ、この二人ならそうなる事は安易に想像出来ただろう。
魔王様の為とはいえ、優しいシャルディが戦いに出向いただけでも褒めてあげるべきだ。
「という訳でルビック、貴様に勇者を殺しに出向いて貰うと思う」
成る程、僕に……。
はっ?
僕に行けと?
ヤダよ、面倒臭い。
確かに魔王様の為ならこの身を捧げてもいい。
性別を持たない僕でも魅了する程、魔王様は素敵なお人だ。
愛してる。
でも、だからといって僕が出向く必要はあるのだろうか?
ザネンとネクロマンサーと同時に生まれ、魔王軍幹部最強と呼ばれた奴が、この魔王城に居る。
正直、彼に勝てる人間がこの世に居るとは思えないのだが……。
その事について話し、僕は勇者を殺しに行く事を拒否した。
「だからこそ、勇者を今の内に殺しておくのだ」
「あの馬鹿が勇者と戦い、本気になったらどうなる?」
「敵味方関係無しに全員を殺すまで止まらんぞ」
うっ、そういや、大昔に僕があいつのオヤツを食べて怒らせた事があったっけ。
あの時は魔王様が止めに入ってくれて助かったけど、次に奴が暴れれば……。
僕は体を震わせて、仕方なく勇者を殺しに出向く事にする。
「ああ、面倒臭いなぁ」
第50話 完




