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第47話[桃]

城の門番から城内に居る兵士まで、全て子供だ。

こんなので、いざと言う時に守れるのか?

そんな疑問を胸に抱きつつ、俺達は王様の所へ案内される。


「よくぞまいったな、勇者達よ」


玉座に踏ん反り返る様に座る小さな女の子を前にして、俺は我が目を疑った。

まじかよ、王様まで小さな子供なのかよ。

この国は本当に大丈夫なんだろうか?

そう思っていると、小さな王様はとんでもない事を言い始めた。


「よいよい、口にせんでも分かる」

「そなた達の目的は伝説の勇者の仲間の武闘家が使っていた鉤爪じゃろ?」


えっ、そんなのがあるの?


「どれ、私とババ抜きで一騎討ち何てどうじゃ?」

「勝てば、鉤爪はくれてやるぞい」


しかもババ抜きで勝てばくれるって……。

何て優しい王様なんだ。

そう思い、小さな王様と一対一のババ抜き対決を始めたのだが、結果は惨敗。

俺は彼女に一度も勝てないでいた。


「フッフッフ、私の千里眼の前では勇者も赤子同然じゃな」


なっ、そんなの完全に無理じゃん。

つか、初めから鉤爪渡す気何てないだろ。

無駄な時間を過ごしたと思い、落ち込んでいるとセツコがやって来て、私もやりたいと言ってきた。


「良かろう、私が相手になってあげるわ」


えっ、セツコじゃ絶対に勝てないじゃん。

そう思いながらも、セツコと交代する。

配られるトランプ。

セツコの手札にはババがない。

ならババは王様の所か、こうなると必ずババを引かされて後は一度もババを引く事無く、あがられるんだよな。


(さて、千里眼の力を使うかの)

(先ずは未来を見て、こやつがどの位置のカードを引くか予知してババをそこへっと……)


「ブァックション、あっ揃った」


あれ?

セツコの奴、ババを引かなかった。


(よしこれかな……、うっ、何だかお腹が空いてきちゃったよ〜)


この後もババを幾度となく回避し、セツコはババ抜きに勝利した。

もしかして、セツコのクシャミや腹の音で集中出来ずに千里眼が使えなかったのか?


「なっ、何かの間違いじゃ、もう一度勝負を要求する」


まあ、千里眼というババ抜き最強のチート技を使い負けたんだ。

そう言いたくなるのも分かる。


「いいよ、それじゃ配るね」


セツコはそう言うとトランプをきり、配っていく。

そして配り終えて、セツコの手札を覗き込むと、そこにはババがあった。


(よし、先ずは透視でババの位置を……)

(なんじゃ、モヤがかかって何も見えん)

(まさか、こやつも能力持ち……)

(ならば、心の中を読み取りババの位置を探るか……)


タッくん大好きタッくん大好きタッくん大好きタッくん大好きタッくん大好きタッくん大好きタッくん大好きタッくん大好きタッくん大好き……。


(何じゃコレは、危うく私までタッくんを大好きになってしまう所だった)


げっ、セツコの奴、顔に出てるじゃねーか。

これじゃババが引かれねーんじゃ……。

そんな事を思っていると、王様はあっさりとセツコの持つババを引いていた。

千里眼に頼り過ぎて肝心な表情を読み取れなかったのだろうか?

その後はトントン拍子に進み、あっさりセツコが勝つ事に……。

何だろう、千里眼を持ってしてもセツコの行動は読み取れないのかな?

まあ、何はともあれ鉤爪をゲット出来たのは喜ばしい事だ。


そして俺達は鉤爪を装備したセツコを連れ、旅に出る事に……。


「何だかセッちゃん強くなった気がするよ」


見えない敵相手に攻撃を繰り出すセツコ。

勇者の仲間の武闘家が装備していた鉤爪を装備した事で、セツコは無敵になったんじゃないか?

まあ、偽物じゃなきゃいいけど……。


(んっ、何かお尻が痒いなぁ)


セツコの悲鳴を聞き、俺達は心臓が飛び出しそうな位、驚いた。

見るとセツコのお尻に鉤爪が刺さっているではないか。


「何が起きたの?」


そうセツコに言いながら、俺はセツコに触れない様にそっと手から鉤爪を外しそれを抜いて、タオルを重ねセツコのお尻を押さえる。

タイシ君が傷薬を持っていて、セツコはそれを手に茂みへ駆け込んだ。

そして……。


「セッちゃん、次からは気をつけるんだよ」


「もうそれ要らない」


えっ……。


「過去の英雄より今の英雄だよ」

「セッちゃんは拳一つで天下取るよ〜」


いや、ケツにコレが刺さるまでは装備する気満々だったじゃん。

何、トラウマになってんのさ……。

まあ、セツコが手に入れた物だから、文句は言えないけど……。


「という訳で鉤爪を返します」


「えっ、返すの?」


驚く小さな王様に会釈して、俺達は何も手にしないまま、次の街へ向かう旅に出たのだった。


第47話 完

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