第46話[子供王国]
「という訳でタイシ君が新たな仲間になりました」
ルリ姉達に事の経緯を説明し、タイシ君が新たに仲間に加わった事を皆んなに話した。
「成る程、魔王を倒して国を動かすか」
「ふむ、確かに魔王を倒した勇者の仲間なら国も力になってくれるでしょう」
一人呟きながら、納得するサナにタイシ君は近寄り、今までの事を謝った。
「気にしないで下さい」
「私も感情的になりましたし、お互い様です」
そう言ってサナはタイシ君に笑顔を向ける。
二人も仲良くなれそうで良かった。
まあサナ自身、優しい奴だから受け入れてくれるって分かっていたけどな。
「んっ〜、よっし魔王退治頑張るぞ〜」
セツコはそう言って拳を天に向ける。
そこは俺の役目じゃ?
などと思いながらも俺達はセツコ同様に拳を天に突きつけ「お〜」と言って、この村から出て行った。
タイシ君の案内の元、森を抜け新たな国へ辿り着く事に。
「お腹空いた〜」
セツコはそう言ってお腹を押さえるが……、正直、俺もお腹が空いていた。
森で木の実を食べたりしたけれど、何だかお腹が満たされない。
こうガツっと肉でも食べたい気分だ。
そう思い、近くのレストランに入るが……。
「いらっちゃいまちぇ」
子供のウエイトレスが現れ、俺達は困惑していた。
「キャー、可愛い」
正確にはルリ姉以外だけど……。
席に案内されたがメニューが無い。
仕方がないのでオススメを尋ねると……。
「パンです」
「えっ、パン?」
「お肉とかは無いの?」
「お肉は焼いちゃダメって言うから……」
えっ?
どういう事?
困惑している俺に近場に座っていたおじさんが話しかけて来た。
「坊主、旅人かい?」
「ええ、そうですが……」
「すまないな、今この国では子供王国の日何だ」
子供王国の日?
おじさん曰く、ここ数ヶ月間、子供が商売をしたり色々と活躍する日なのだとか。
小さな内から自立性を高める為にこういった日を設けているという。
成る程、だから焼いちゃ駄目なのか。
子供が火を扱うのは危ないもんな。
「じゃあ、パンでお願いします」
「かしこばり……、かしこまりまちた」
噛んでしまったのか、新たに言い直して小さなウエイトレスさんは注文をキッチンに伝えに行った。
そして直ぐにパンが運ばれてくる。
恐らく事前に大人が焼いて置いたパンなのだろう。
冷めてはいるが、子供達が頑張っているんだ。
此処は我慢しよう。
パンを食べ終えて、お会計を頼む。
すると……。
「金貨三千枚になります」
えっ、高すぎない?
「あの、そんなに持ってないんですが……」
「駄目です」
「払ってくだちゃい」
そんな……。
お会計であたふたしている俺を見て、近くに座っていたおじさんが駆けつけて、代わりにお会計を済ませてくれる事に……。
「お嬢ちゃん、金貨三千枚に匹敵するコインだ」
「これでいいだろう」
「はい、お会計ありがちょうごじゃいます」
そしておじさんが、役場に行けば子供コインなる物を支給してくれる事を教えてくれた。
この期間中は子供コインを使い生活していくらしい。
たまにさっきみたいに高額な請求をする子がいるが、そういう場合は適当にあしらうか、大人を呼べば解決するみたいだ。
何から何まで教えてくれて、ありがたい。
俺達は役場に向かい、子供コインを受け取ると、王様に挨拶をしに、お城へと向かうのであった。
第46話 完




