第42話[雪の積もる村]
俺達は無事に目的地の村に辿り着いていた。
辺り一面、真っ白な雪景色。
そこへ一人の村人が俺達の所へやって来た。
「この時期にお客さんが来るとは珍しいのぅ」
村人の老人曰く、この時期は兎の魔物の繁殖期の為、客が来る事は無いと言う。
チキショウ、この村の情報をくれるのなら、その事も教えておいてくれよ。
でもまあ……。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん、雪で遊ぼう」
兎の魔物の一件からルタはお姉様何て堅苦しい言い方を止めた。
あの出来事のお陰で俺達は本当の兄妹になれたんだ。
そう考えると感謝してもいいのかもな。
「よし、皆んなで雪合戦をしよう」
「えっ、やだよ」
「セッちゃんの投げる雪は軽く凶器だもん」
「えー、ヤダヤダ、セッちゃん雪合戦やーりーたーいー」
「あはは、私もー」
ルタもセツコの真似をして駄々を捏ね始めた。
「コラッ、こんな所でゴロゴロしたら洋服が汚れちゃうだろ」
「ごめんなさい、お兄ちゃん」
「うむ、反省しているのなら許す」
俺とルタのやり取りを黙って見ていたサナがルリ姉に向かって話しかける。
「流石は兄妹、タッくんさんとルリさん、性格がそっくりですね」
「うふふ、二人共すごく可愛いわ」
「本当、兄妹馬鹿と言いますか……」
どうしてもルタが雪合戦をやりたいと言うので仕方なくやる事に……。
俺達兄妹チーム対セツコ、サナチーム。
雪をかき集め丸くし、セツコとサナめがけ雪を投げていく。
「フフフ、バリバリバリヤー君」
なっ、ズリぃ。
バリアで雪を防ぐとか反則だろ。
そう思っていると、ルリ姉が魔法でバリアを貼り、セツコ達の雪を防いでくれた。
「流石お姉ちゃん」
「ルリ姉が味方で心強いぜ」
「えへへ、そうかなぁ」
「ぐぬぬ、ならこれならどうですかな」
サナはそう言うと、自動雪投げ機を錬金術で作り出した。
大量の雪を機械に入れ、雪玉が時速百六十キロの速さで投げられていく。
間髪入れず投げられて来る雪をバリアで防ぎながら、ルリ姉は魔法で雪玉を作り、それらを投げていく。
「ちょっとサナちゃん、やり過ぎじゃ……、ブヘッ」
「なっ、雪玉が上から降って……、グヘッ」
いや、もうコレは雪合戦じゃないだろ。
セツコとサナの悲鳴を聞きながら、俺とルタは雪だるまを作り遊んだ。
雪合戦が終わり、俺達は火口に訪れていた。
本来なら危険なマグマも、氷だから大丈夫。
噴火しキラキラと氷の細かな破片が舞い散り、その美しさに俺達は見惚れていた。
その後は温泉に浸かり、雪景色に癒されながら体を温める。
こんな極楽で本当にいいのだろうか。
今日一日でかなり充実した時間を過ごしている。
そして、待ちに待ったカキ氷。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、カキ氷美味しいね」
「そうだな」
俺はルタの口の周りについたカキ氷シロップを拭いながら笑顔で答えた。
まだ行き先は決めていないが、次の場所もこの村の様に楽しい場所だといいな。
第42話 完




