第31話[暖かな国]
「いいか、ダイヤを筒状に削り、それを魔力で繋げてく」
職人達に牢屋の鉄格子の作り方を学ぶゴブリン達。
硬いダイヤを手作業で削るのにも体力を消費してしまうのに、その上魔力まで消費してしまうとは……。
「ふふん、だったら錬金術で簡単に加工できる機械を作って差し上げましょう」
そう職人達に話すサナだったが……。
「馬鹿野郎、余計な事するんじゃねぇ」
そう職人に叱られてしまい、サナは頬を膨らませていた。
「ブー、錬金術の方が早いのに……」
そんな中、ダイヤを筒状に削っていたセツコが意外な才能を発揮させる。
「なっ、お嬢ちゃん凄いな」
「仕上がりも綺麗だ」
「えへへ、そうかな」
だが、そんな才能も十分後には……。
「何かセッちゃん、飽きて来たかも」
枯れてしまっていた。
「そろそろいいかな」
俺は昼食にシチューとパン、デザートにクッキーを焼き、職人達とゴブリン達にソレを振る舞った。
美味しそうに料理を食べるゴブリン達に子供達は興味はあるものの、ゴブリン達の顔が怖く近寄れないでいる。
そんな中、一体のゴブリンが近寄り、子供達にクッキーを差し出して笑顔で言う。
「一緒に食べよ」
「いやぁ、ママー」
そう泣き叫び去って行く子供を見て、悲しそうな表情を浮かべるゴブリン。
そんなゴブリンの頭を俺は優しく撫でてあげた。
「大丈夫だよ」
「その内仲良くなれるさ」
「勇者……」
大丈夫、時間はかかるかも知れないが、皆んなゴブリン達が良い奴だって分かってくれる。
そう思っていたのだが……。
翌日の昼にはゴブリン達は子供達の人気者になっていた。
「セツコおねーちゃんの言う通りだ」
「ねえゴブちゃん、一緒に遊ぼう」
セツコが仲介に入り、ゴブリン達と子供達との距離を縮めてくれたみたいだ。
流石というか、何というか。
俺に出来ない事をセツコはあっさりとやってのけてくれる。
「ありがとうセッちゃん」
「うん、ゴブちゃん達はタッくんの仲間だもんね」
「だってタッくんはゴブリン一族のタッくんなんでしょ?」
そう言ってクスクスと笑うセツコ。
「フッ、そんなセッちゃんこそ、もう立派なゴブリン一族だよ」
などと言って冗談を言うが、セツコは顔を赤くして固まっていた。
「はわわ、それってプロポーズなんじゃ……」
「へっ?」
「俺と一緒にゴブリン一族になろうぜって事でしょ?」
「もうプロポーズだよ〜」
いや、違うけど?
つか、プロポーズで思い出したわ。
「そういやセッちゃん、子供達に何話したの?」
「えっ?」
「俺達がラブラブだとか、キスを五回はしているだとか話してたよね?」
「えへへ、逃げろー」
セツコがそう言うと皆んな一斉に逃げて行く。
俺はそんなセツコを追いかけるが、全然追いつけない。
セツコの奴、追いかけっこに命をかけているのか、そう思ってしまう程、セツコは全力で俺から逃げていた。
「ゼェハァ、何で全力で逃げてんだよ」
「俺より速いの分かってて走っているの?」
まあいいか、どうせセツコには触れられないし……。
俺はその場に倒れ、呼吸を整える。
それからしばらくして、作業を再開し、そして数日が経過した。
壊した牢屋もすっかり元に戻り、村に帰ろうとした時だった。
ゴブリン達は俯き、この国に残りたいと言う。
「でも……」
俺は辺りを見回した。
すると街の人達はゴブリン達を囲み、暖かい言葉をかけてくれる。
「よし、分かった」
「俺に任せろ」
俺はゴブリン達が住める様に王様と交渉し許可を得た。
ゴブリン達の家が出来るまでは、俺達が住んでいた家に住んで貰い、その後は勇者達が住んでいた家として観光名所にして貰おう。
少しでもこの国が豊かになればいいな。
俺はそんな事を考えながら国を出て、村へと向かうのだった。
第31話 完




