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第25話[弱み]

終わった。

ヒューガレット王国の呪い問題が解決し、安堵した俺は溜め息を吐き、その場で寝転んだ。

冷たい地面の感触を体で受けながら、俺はサナの方へ視線を向けた。


「どうしたんだよサナ、そんな顔して」


浮かない表情を浮かべるサナにそう尋ねると、彼女は錬金術で作った道具が失敗作であった事を俺に話してくれた。

完全に嫌な記憶を消していたら「ありがとう」何て言葉が彼女の口から出る事はない。

何故なら封印された記憶が消え、自分が憎しみに支配されていた事も、それによって苦しんでいた事も覚えていないのだから。


「私は肝心な所で失敗してしまった様です」


「何言ってんだよ」

「失敗何てしてないじゃん」

「寧ろ大成功だよ」


俺はそう言ってサナに笑顔を向ける。


「なっ、そんな事は……」


「あるよ」

「錬金術で魔女を救うって言ってたじゃん」

「彼女は救われたさ、だからありがとうって言ってくれたんだ」


「タッくんさん……」


さて、そろそろ帰らないとな。

そう思い立ち上がるが、サナは座ったまま動かないでいた。

どうやら今回の戦いで負傷して動けないらしい。

全く、仕方ないな。

そう思いながら、俺はサナをおんぶする事に……。


「そういえばタッくんさん、姫様の婚約ってどうなりました?」


唐突に変な事を聞いてくるサナに俺は冷や汗をかいた。

今思えばあの時に包まれた光、サナと魔女の過去が見えたけど、サナとシュシュにも俺の過去とか見えたのかな?

流石に前の世界の記憶は、この世界で体験した時間じゃないので見られて無いと思うけど……。

この世界でも恥ずかしい事は一杯しているから、過去を見られると色々と不味い。

内心そんな事を考えながら平然を装い、俺は逆にサナに質問した。


「俺の過去を見たんじゃ無いのかよ?」


「いえ、見てませんけど」


俺は心の中でガッツポーズをする。


「そうなのか、別に何ともなっていないさ」

「あの時のまま、婚約もしていない」


「そうですか……」

(良かった)


サナの奴、昔を思い出し懐かしんでいるのかな?

まあ、銅像の件でゆっくり話しが出来なかったし、仕方ないか。


「所でタッくんさん、タッくんさんは今でも女性が苦手で?」


「ああ、そうだけど」


「だけど私にはこうして触れられる」

「運命感じちゃいませんか?」


「プッ、何だよ運命って、急にどうした?」


「なっ、笑うな」


俺はしばらく笑い、サナに触れても平気な理由を話した。


「あっ、でも大切な友達だとは思っているよ」


「はあ、友達ですか……」

(まさか女として見られて無かった何て……)

(まあ、プラスとして考えましょう)

(他は触れられない、私は触れられる)

(姫様やセッちゃんさんよりは有利な筈です)


そう考えるサナをシュシュがジトーっと見つめ、サナの心の中に語りかけていく。


「あんた、コイツの事を好きになった訳?」

「それに、本当はあんた歩けるんでしょ?」


シュシュに図星をつかれ、サナの額から大量の冷や汗が流れた。


「おんぶって何?」

「愛しの彼に、私の体を密着させたいとか?」

「フフフ、随分エッチな錬金術師さんだこと」


「なっ……、エッチって……」


「この事、コイツに話しちゃおっかな〜」


「それだけは止めて下さい」

「お願いです……」


「だったらルリちゃんに私が活躍したって報告してくれる?」


「ええ、勿論です」

「是非報告させて下さい」


「フフフ、よろしい」

「私、あなたの恋、応援しているわよ」


(何処がですか)


背後でそんなやり取りをしているとは知らずにタッティーナはご機嫌に塔を降りて行く。


第25話 完

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