第20話[塔の魔女]
サナが城下町入り口付近にある不自然に積もった雪を払い、銅像になってしまった人達を確認して回る。
家族で逃げ出そうとしたのか両親と子供、三人の銅像まであった。
「ふむ、来る時はそんなに気にして無かったのですが、辺り一面不自然に雪が積もっているのを見るに、数多くの人達が犠牲になってしまったみたいですね」
確かにヒューガレット王国の事情を聞いて、辺りを見渡せば、あちこちに銅像があるのが分かる。
「何方にせよ、調べて見ても誰が旅人か分からないですね」
王様の話しによると、前に来た旅人は銅像に触れなかったから、そのまま帰ってしまったらしい。
まあ、銅像になるか試したいから銅像に触れてくれとも言えないだろうし、国から出て銅像になったのか確認する術もない。
「ただ、この呪いはヒューガレット王国の住人だけ有効なのが分かりました」
「でなければ私達は今頃、銅像になっていますからね」
「余程封印された事を恨んでいるのか、こんな回りくどい呪いをかける何て……」
確かにこの一件で、この国の人達は相当苦しんでいるだろう。
一度に全ての人を銅像に変えるんじゃ無く、人々に恐怖を与え苦しませる何て本当に悪趣味だ。
「さて、そろそろ塔に向かうとしますか」
「ああ、早く悪い魔女を倒して皆んなを元に戻そうな」
「ええ」
そう言ってサナは俺に笑顔を向けた。
もしヤバくなったら、サナを連れて逃げる。
その為にサナと一緒に行動しているが、本当に大丈夫だろうか?
今になって不安になってきた。
「着きました」
変態盗賊が先に侵入していたせいか、簡単に塔の扉が開く。
薄暗い螺旋階段を登りながら、俺はコウモリの飛び立つ羽音に驚き悲鳴を上げる。
「怖いなら帰っていいんですよ?」
「だ、大丈夫です」
くそっ、しっかりしろよ俺。
そんなんじゃ、いざと言う時、サナを連れて逃げられないぞ。
両手で頬を叩き気合を入れる。
そして最上階の扉の前に立った時、俺のポケットからシュシュが現れた。
「駄目、開けちゃ絶対に駄目」
そう言って俺達を止めるシュシュをサナが睨む。
「何ですかコレ?」
「ルリ姉が召喚した妖精でシュシュっていうんだ」
「って事はつまり、ルリさんは私を信じてくれていない訳ですね?」
頬を膨らませ怒るサナを俺とシュシュが慌てて宥めた。
「とにかく、この扉は絶対に開けちゃ駄目」
「ハッキリ言って貴方達、殺されるわよ」
「大丈夫ですよ」
「私には錬金術がありますから」
そう言ってサナが最上階の扉を開ける。
そして俺とサナは中に入り、ドス黒いオーラを纏った女性の前に立った。
「貴女が悪い魔女ですか?」
サナの問いに言葉にならない返事をして、魔女はいきなり俺達に向かって攻撃して来た。
「無駄ですよ」
「バリバリバリヤー君」
サナはそう言って錬金術で作った道具を使い、魔女の攻撃を防ぐ。
だが、バリアは砕かれ、その衝撃でサナの体は吹き飛んび、俺は慌ててサナの体を抱きしめてクッションの代わりになるが、サナの後頭部が俺の鼻に当たり、俺は鼻血をサナの顔にかけてしまった。
「タッくんさん、大丈夫ですか?」
「いやその……、鼻血かけてごめんね」
「何を言っているんですか、コレで鼻血を止めて下さい」
サナからハンカチを渡されて、それを鼻に押し当てる。
「頼むシュシュさん、サナに力を貸してやってくれ」
「なっ、タッくんさん何を……」
「なら、俺と一緒に逃げてくれ」
「ルリ姉達と協力して……」
「逃げるならタッくんさん一人で逃げて下さい」
「魔法使いに背を向ける位なら、死んだ方がマシですから」
何を意地になって……。
くっ、サナの錬金術の凄さなら知っている。
だからこそ、魔女の強さを理解してしまう。
たった一度、サナのバリアを破っただけだが、それでもあの魔女は普通じゃ無い。
「私は私だけの力で奴を倒して見せます」
「ガガガガガガ」
再び魔女が攻撃を仕掛けて来る。
その間、サナはあるバッチを胸につけた。
かつてポチを助ける為に作ってくれた道具。
あれは確か、攻撃を跳ね返す道具だった筈だ。
セツコの強力なパンチも跳ね返していた。
あれなら何とかなるかも。
そう思っていたが、宙を舞うサナの姿を見て俺は絶望する。
「くっ、これも駄目ですか」
粉々に砕かれたバッチ。
そして自信作が破れ、弱々しく笑うサナ。
「逃げて下さいタッくんさん」
「私も後から追いかけますから」
何言ってやがる。
そんな体力無い癖に……。
「何とかして逃げないと」
俺はそう呟いてサナの体を起こした。
その時、サナは俺の前で涙を流す。
「悔しいです」
「魔法使いに負けるのが、堪らなく悔しい」
「ちょっとタッティーナ、何やってんのよ」
シュシュの言葉にハッとする。
魔女の攻撃がすぐ側まで迫って来ていた。
咄嗟にシュシュがバリアを貼ってくれたが、そのバリアも破れ、そして……。
第20話 完




