第17話[長い橋]
大陸と大陸を繋ぐ大きな橋。
そこで俺達は数時間、馬車に揺られていた。
「お客さん、すみませんが馬達を休ませて構いませんか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
ルリ姉が運転手のおじさんと会話している中、俺とセツコは外を見て驚いていた。
見渡す限り馬車が止まっている。
此処は前の世界で言う、高速道路のパーキングエリアみたいな所かな?
丁度お腹も空いてきたのでルリ姉達と屋台を回る事に。
串に刺さった牛肉のステーキ、肉は柔らかく脂身も少ない。
塩との相性も良く、追加で何本か頼んでしまった。
他にも暖かいポタージュに、柔らかいパン。
更には俺達が向かう大陸の名物なのか、凍った木の実まで売られていた。
「この木の実は不思議な事に、凍ったまま実るんですよ」
食べ方も教わり、炎の魔法で木の実を溶かし食べるのだとか。
セツコは一切魔法が使えないので、代わりにルリ姉が溶かしてくれる事に。
表面は溶けてトロトロになりつつも中はまだ凍っていてシャリシャリとした食感が残っている。
木の実自体甘く、まるでちょっと溶けたシャーベットを食べている感じだ。
「馬車の運転手さんにも何か買ってあげないとな」
「そうね、向こうの大陸に着くまで一日以上かかるみたいだしね」
馬達の睡眠時間も含めて一日以上、それ程までに、この橋は長い。
それにしてもこんな長い橋、よく作った物だな。
魔法や錬金術で作ったのだろうか?
本当に凄い。
そう思いながら、馬車の運転手さんに屋台で買った食べ物を渡した。
「ありがとうございます」
「そうだお客さん、次馬車を止める所では服などを売っているお店がありますんで、防寒着を買って置いた方がいいですよ」
「向こうの大陸では一年中、寒いですからね」
成る程、俺達が住んでいた街は一年中暖かかったけど、向こうの大陸はその逆で一年中寒いのか。
雪でも降っているのかな?
あっ、やばい。
雪で思い出した。
過去の悲惨な思い出を……。
そういや、サナと初めて出会ったのも雪が降る日だったよな。
とりあえず、セツコには雪が降っていても、ハシャが無い様に注意しとくか。
こうして俺達は防寒着を買い、馬達の休憩を挟みながら馬車に揺られ、翌日の昼過ぎにようやくサナが居るであろう、ヒューガレット王国がある大陸に着いた。
やっとだ。
何の娯楽も無く、初めは弾んでいた会話も徐々に無くなり、ただ黙々と馬車に揺られるだけの退屈な時間がようやく終わりを告げた。
そして……。
「めちゃくちゃ寒い」
「防寒着プラス魔法で体を温めているのに何でこんなに寒いの?」
「タッくんが洋服代ケチるから」
いや、だって金貨一枚何だもん。
詐欺かもしれないじゃん。
向こうの大陸に着いて偽物だと気づいても遅いし、向こうもそれを狙って売っているかも知れないし……。
まあ、本物なのかも知れないけど……。
「まあまあ、二人共落ち着いて」
「私に考えがあるわ」
そう言うとルリ姉は三体の妖精を召喚した。
ああ、あの時、俺のパンツに入っていた妖精か。
「お願い、妖精の加護でこの寒さを防げない?」
「この程度の寒さ位、余裕よ」
「もっと寒くてもイケるわ」
「はあぁん、私達を暖房機扱い何て流石ルリちゃん、痺れちゃうわ」
そう言って、三体の妖精はそれぞれに加護をかけて行く。
俺には前にパンツの中に入っていたシュシュとかいう妖精がついた。
「凄い、全然寒く無い」
コレなら無事にヒューガレット王国に辿り着けそうだな。
そう思い、俺達はヒューガレット王国へ向けて歩みを進めていった。
第17話 完




