第14話[幸せな夢]
朝からセツコとルリ姉がドアを叩いて五月蝿い。
オークの巣を壊滅させた魔法使いに、ミノタウロスの拳を砕き角をへし折った街娘。
そしてゴブリンに善戦した勇者……。
何だよチクショウ、俺だけ役立たずじゃねーか。
もういっそ、二人で魔王を倒してくれよ。
一人、枕を涙で濡らしながら俺は眠り(二度寝)についた。
「あれ、此処は……」
辺り一面眩い光に囲まれている。
何だ、神様か……。
そんな事を思っていると、赤奈ちゃんが俺の前に現れた。
「達也君、諦めちゃ駄目だよ」
赤奈ちゃん……。
あっヤベ、赤奈ちゃんにそう言われると、めちゃくちゃヤル気が出ちゃう。
「私、達也君の凄い所一杯知っているよ」
「夏の水着ガチャの時、お母さんと海外に住むお父さんを説得して百五十連ガチャ引いて、私を完凸させたよね」
そんな、頑張っただなんて……、そんな事無いよ。
赤奈ちゃんの為なら、母さんに土下座する位、訳ないさ。
父さんは簡単に説得できたけど……。
「その勢いで魔王も倒しちゃおうよ」
「私、達也君なら出来るって信じているよ」
ああ、出来る事なら録音して何度でもリピート再生して聴いていたい。
つか、この夢が永遠に覚めなければ良いのに……。
そう思っていたが、俺はルリ姉のビンタに起こされてしまった。
セツコがやると色々と大怪我になるから、配慮してくれたんだろうけど……。
起こして欲しくなかった。
「タッティーナ、ごめんなさい」
「私、知らずにタッティーナを傷つけてしまっていたのね」
「セッちゃんもよく分からないけど謝るね」
「ごめんなさい」
二人共……。
いや、謝るのは俺の方だよ。
自分の弱さを棚に上げ、二人を責めていたよね。
まあ、心の中でだけど……。
「もう、大丈夫だよ」
「気を取り直してクエスト受けに行こうか」
赤奈ちゃんの言う通り、諦めずに頑張ってみよう。
それに二人と、もっと旅もしたいしね。
「その前にセッちゃん、朝ご飯が食べたい」
こうして俺は立ち直り、旅を続ける決心をしたのだが……。
「グギギ、グギ」
後にゴブリンの群に誘拐されてしまい。
早くも挫けそうになる。
第14話 完




