第13話[俺だけ……]
街のオヤジの話しによると、サナは街の入り口辺りに倒れていたらしい。
宿屋の主人と肉まん屋のオーナーがサナを助けたらしく、そのお礼にと洗濯機や食べ放題に使える机を錬金術で作ってプレゼントしたみたいだ。
そして約一年余りこの街で荒稼ぎしたらしく、俺達がこの街にたどり着く約一週間前に、サナは街から出て行ったらしい。
その話しを聞いて、ルリ姉は涙を流していた。
「サナちゃんに会える」
そう呟くルリ姉。
余程、サナに会いたかったんだな。
いや、ルリ姉だけじゃないか、セツコも会いたそうにしている。
「タッくん、早くこの街を出ようよ」
「まあセッちゃん、少し落ち着いて」
俺はオヤジからサナの次の目的地を聞いて、酒場へと向かった。
俺達もサナと同じで旅をしている。
当然、旅にはお金がかかる訳で、クエストを受けて報酬を貰うまでは次へは行けない。
二人にそう話すと納得してくれたみたいで、俺達はクエストを張り出している掲示板に目を通していくのだが……。
[オークの巣を壊滅、報酬金貨一枚]
かなりの報酬額に俺達は驚いていた。
「すごい、他にも銀貨数枚のクエスト多数だ」
「お姉ちゃん、オークの巣を壊滅して来ようかな」
いや、流石のルリ姉もオークの巣を壊滅させる何て無理なんじゃ……。
金貨一枚の報酬だしな……。
そう思っていたが、どうやら杞憂だったらしい。
オークの住む洞窟内の気温を上げ、サウナ状態にし、暑くて出てきた所を狙い、火炎系の魔法で次々と焼き殺していった。
何だろう、凄く酷い。
「さて、生き残りが居ないか確認して行きましょう」
蒸し暑い洞窟内の温度を下げてオークの巣を見て回るが、正直臭い。
コレはオーク達の汗の臭いか?
鼻が曲がりそうだ。
それにしても洞窟内に広がるオーク達の死体。
中には子供や赤ちゃんまで居る。
クエストとはいえ、こういったものを見ると何だか心が痛むな。
全てのオークの死を確認し、洞窟を出るとミノタウロスが居た。
セツコと目が合い、二人が拳と拳をぶつけ合う。
「ンモオォォォ」
ミノタウロスの断末魔。
どうやら拳が砕けたらしい。
そしてセツコはミノタウロスの背後に回ると、ミノタウロスの立派な角をへし折った。
「いや、セッちゃん」
「追い返す程度でいいからね」
クエスト対象でも無いし、さっきのオーク達の死体を見た後では流石に殺すのは気が引ける。
そう思っていると、今度は茂みからゴブリンが一匹現れた。
咄嗟に剣を構え戦ったのだが、よくよく考えてみたら、俺ってスライムより弱いんだよね?
だが、想像以上にゴブリンは弱く、俺はゴブリン相手に善戦していた。
「二人共見て、俺ゴブリン相手に善戦しているよ」
「流石はタッティーナ、お姉ちゃんの自慢だわ」
「タッくん凄い、めちゃカッコいい」
「ンモッンモッ」
何故だかミノタウロスまで拍手をしてくれている。
何だろ、俺今が一番輝いているかも知れない。
しばらくして、ゴブリンは逃げ出し、俺達はミノタウロスと別れ、街へ戻った。
恐らく、ルリ姉がオーク達を殺し、セツコがミノタウロスと戦った事によって、俺のレベルは鰻登りに上がったのだろう。
宿屋のベッドでそんな事を考えながら、俺は宿屋に引き篭もる事にした。
何がオークだよ。
何がミノタウロスだよ。
何で俺だけゴブリンなんだよ。
クソ……。
第13話 完




