表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/311

第11話[悪質な商人]

「まあ、いいわ」

「元からあの剣はあなたに上げるつもりだったしね」

「折ろうが何しようがあなたの勝手、ただし約束は守って貰うわよ」


嫌だ。

何も手にしていない状態で下僕契約何て絶対に嫌だ。

だが、策はある。

闘技大会の結果はセツコの圧勝。

余りに簡単に倒された物だから、観客の一人が「あれっ、ビビンチョ様手加減したんじゃね?」と言われる始末。

コレは渡りに船だと思い、俺達もソレに便乗する事にした。

初めは騎士のプライドが許さなかったのか、男らしく負けを認めてセツコの強さを観客達に力説していたが、ソレが返って逆効果。

ビビンチョさんは優しい騎士だと観客達に褒められてしまう事となる。

そして、次第にコレは勇者殿の慈悲なのではとビビンチョさんが勘違いしてくれて、結果俺達はビビンチョさんの騎士としての誇りを守る形となった。


「という訳でお姫様、下僕の件は無かった事になりませんかね?」


「はっ?」

「ビビンチョの騎士としての誇りが守られた所で私には何のメリットも無いじゃない」

「当然、却下よ」


フッ、どうやらお姫様は何も気づいていないらしい。

俺の目的はソコじゃ無いんですよ。

俺の目的は如何にセツコが、か弱い女の子か国民達に知って貰えるかどうかが目的だったんだ。

ビビンチョさんが少女相手に手加減したと観客達が思ってくれたお陰で、セツコは俺達の中で最弱の女の子という立ち位置ができた。

試合終了後に観客達に木の枝も折れないアピールをし、逆に影からルリ姉の協力の元、魔法が凄いアピールも出来た。

つまり、セツコは力は弱いが強力な魔法が使える魔法使いだと、観客の人達に思わせる事に成功したのだ。


「そんなセツコが伝説の剣を折ったとなると、国民達はどう思いますかね?」

「力の弱い魔法使いでも簡単に折る事のできる剣を王族達は伝説の剣だと言い張り家宝にしている」

「きっと国中の笑い者ですよ」


「脅しても無駄よ」

「あの剣にはちゃんと鑑定書がついてあるんだから」


えっ、鑑定書があんの?

予想外の出来事に俺は焦り、額から冷や汗が垂れた。


「ちなみに誰が鑑定を?」


「そんなの決まってるじゃない、あの剣を売りに来た商人よ」


は?

考古学者じゃ無くて商人?

それって騙されてるんじゃ……。

お姫様の話しに寄ると、その商人の目利きは本物だとか。

何でもこの国にある宝物庫のお宝を全部、本物だと言い当てたらしい。

いや、宝物庫にあるんだから本物でしょ。

後日、遠方の地の視察から帰って来た王様は笑いながら事の経緯を説明してくれた。


「流石にワシもあの剣が本物だとは思っておらんよ」

「ただ、娘のメビュナが目を輝かせていたので買ってやっただけの事、まさかソレが原因で伝説の剣があると噂される事になるとはな……」


何だ結局偽物だったのか。


「すまんが勇者殿、伝説の剣を受け取った事にして貰えんかの?」


「ええ、構いませんよ」


まあ、国としてのプライドもあるだろうし、ソレに特に受け取ったからと言って俺達に何か問題がある訳でも無いから、そういう事にしておこうか。

こうして伝説の剣騒動は幕を閉じるのであった。


「待ちなさい、絶対に下僕にしてやるから」


フッ、俺を下僕にしたいのなら、喋る赤奈ちゃんフィギュア(等身大)くらい、持って来るんだな。

俺はそう心の中でカッコつけ、お城を後にしたのだった。


第11話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ