第7話[妖精三姉妹]
さて、今この場には妖精三体にルリ姉とセツコが居る。
対して向こうは一人、完全に立場が逆転したな。
「ねえルリちゃん、あの人間食べていい?」
「口から脳にかけて食べ進めて行きたいわ」
「ズルい、シャシャ姉、ショショが先に食べるの」
「生きたまま、目玉を食べるのが私の趣味何だから」
えっ、何この妖精達、ちょっと怖いんだけど……。
「あのさルリ姉、その妖精達何だけど……」
「可愛いでしょ」
いや、気持ち悪いよ。
人間を食料として見てるし、口から脳にかけて食べるだとか、生きたまま目玉を食うだとか、ちょっと趣味が悪い。
そうルリ姉に伝えると、二体の妖精がキレ始めた。
「あっ、何この不細工」
「ヘソから入って内臓全部食い散らかしてやろうか?」
「大体何でパンツ一丁なのよ」
「気持ちわるぅ〜」
そう言って二体の妖精達に責められていると、俺のパンツの中に入っていた妖精が俺を庇ってくれた。
「あっ?」
「何のつもりよシュシュ」
「あっ、まさかシュシュ姉、コイツに恋しちゃったとか?」
「パンツの中で生まれた恋、な〜んてね、プププ」
俺を庇ったばかりにシュシュって妖精が虐められて泣いている。
くっ、何とかしないと。
そう思っているとルリ姉が恐ろしい顔をして二体の妖精を睨んだ。
「シャシャとショショ、私の可愛い弟に何を言っているのかしら?」
「消されたいの?」
ルリ姉のその言葉を聞いて、手の平を返したかの様に二体の妖精は俺を褒め始めた。
「シュシュ、ありがとねタッティーナを庇ってくれて」
「当然よ、ルリちゃんとタッティーナの為だもん、何だってするわ」
(な〜んてね、私は姉と妹と違って頭の良い妖精)
(タッティーナに優しくすればする程、ルリちゃんは喜ぶ)
(私の一人勝ちね)
「あんた達、ふざけて……、嫌ぁぁ」
唐突に包丁女が悲鳴を上げた。
彼女の視線を追ってみると、そこにはセツコが居た。
「このパスタ美味しいよ〜」
「トマトベースかと思ったら全くの別物、セッちゃんこんなパスタ、初めて食べたよ〜」
いや、トマトじゃなくて血です。
鉄の味しなかった?
つーか、よく食べられるな……。
知らないって怖いわ。
「くっ、タッティーナ君に食べて貰おうと一生懸命作ったのに……」
「つか何で人ん家の物、勝手に食べるのよ」
「だってセッちゃん、朝ご飯食べて無かったから」
「そんなん知らないわよ」
「あ〜もう、何なのよアンタ達」
「セッちゃんだよ」
「名前を聞いているんじゃないわよ馬鹿」
セツコに対し、かなり苛立ちを見せる包丁女。
彼女には散々酷い目に遭わされてきたけど、何だか同情してしまう。
「さあ、大人しく憲兵の所に行って貰うわよ」
「くっ、こうなったら……」
包丁女は窓ガラスを破り逃走した。
余程、捕まりたくないのだろう。
まあ、何はともあれ助かった。
「ん?」
床に落ちている婚約届けを拾い見てみると、彼女の名前が書いてあった。
ソヒィア・ティーレ、あの子の名前はソヒィア・ティーレと言うのか……。
出来れば二度と彼女には会いたく無いものだな。
第7話 完




