第2部第1話[苦痛]
俺達は今、森で遭難していた。
そして、食料も尽きていた……。
「ごめんね、セッちゃんが食べ過ぎたせいで……」
「仕方ないよ、お腹は誰でも空くし、セッちゃんは悪くないよ」
「そうよセツコちゃん、幸いにも此処は森の中、自然の恵みなら沢山あるわ」
歩き回っている間に綺麗な水のある池と小さな洞窟も見つけたし、池の水を加熱殺菌してルリ姉の魔法で洞窟内の気温を下げて水を冷やせば飲水の確保はできる。
まあ、何とかなるだろう。
そう思っていた……。
そして、事件は数時間後に起きた。
山菜を採り、それらを材料にスープを作ったのだが……。
「セッちゃんが先に食べるね」
「えっ、いいよ」
「毒があったら大変だし、俺が先に食べるよ」
二人は女の子だし、いざって時にトイレ的な事で困るだろう。
そう思って言ったのだが……。
「大丈夫だよ」
「セッちゃんに任せて」
そう言って五月蝿いので、セツコに毒見役を頼む事にした。
そして……。
「どう?」
「何とも無い?」
「うん、とっても美味しいよ」
俺とルリ姉は安堵して、スープを口に運んだ。
そして、具材のキノコを噛み、キノコから出た出汁をゴクリと飲んだ時だった。
急激な腹痛と吐気に襲われて、俺とルリ姉は激しい苦痛に襲われていた。
「セッちゃん、本当に大丈夫だったの?」
「うん、平気だよ」
「ホントに本当?」
「お腹とかオエってなったりしない?」
「そう言われてみると……、セッちゃん何だかお腹痛くなってきたかも……」
そしてしばらくして、セツコも苦しみ始めた。
なんて事だ、セツコの奴、自分の腹の痛みに気づいていなかったのか?
昔に聞いた事がある。
馬鹿は風邪を引かないんじゃ無くて、引いた事に気づかないんだと……。
くそう、セツコもそのパターンかよ。
やっぱり、連れてくるんじゃ無かった。
そう思い、俺は慌てて茂みに入りアレをする。
やっぱり俺が先に食べておくべきだった。
そしたら、ルリ姉もセツコも苦しまなくて済んだのに……。
どれ位経ったのだろうか?
俺達は三人、腹を抱えて苦しんでいた。
ハハハ、まさか旅に出て直ぐに死を迎えるなんて……。
そんな勇者、俺くらいだよ。
「大丈夫ですか?」
いつの間にか知らない人が居る。
年齢は俺より下っぽい男の子か……。
「さあこの薬を飲んで、楽になりますよ」
言われるがまま薬を飲み、俺は眠りについた。
そして、目が覚めると男の子はスープを作っていた。
「えっと、どちら様で?」
「あっ、初めまして薬売りのタイシです」
こうして俺達は薬売りのタイシ君に命を助けられたのであった。
第1話 完




