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第110話[別れの涙]

夢占いの一件から数日後。

俺は自宅で新聞を読んでいた。

母さんから勧められたので何事かと思っていたけど…….。


姫様のパンツを被った変態が脱獄。


何だあの変態、逃げたんだ。

大きく書かれた記事に俺は目を通して行く。

どうやら、あの変態は自称盗賊王と名乗っていて、名前はアルバ・マントレスと言うらしい。

何が盗賊王だよ。

盗賊王ならもっと上手く隠れろよな。


「タッティーナが会ったっていう人、その人でしょ」

「脱獄何て怖いわぁ」

「私のやルリの下着が盗られるんじゃないかと思って、外にも干せない」


「セッちゃんもスライムさんパンツ、盗まれるか心配」


「セツコちゃん、いらっしゃい」

「そうね、心配よね」


あっ、居たんだセツコ。

気が付かなかったわ。

お前の方がよっぽど盗賊に向いているんじゃないか?

力任せに鍵なんか壊せそうだし。

ピッキング要らずじゃん。

などと考えていると、ルリ姉が帰ってきて、走って二階の自室へ向かい、しばらくしてルリ姉の泣き声が一階のリビングまで響き渡ってきた。

慌てて二階に上がり、ルリ姉の部屋の扉をノックする。

ルリ姉が泣くなんて何があったんだ。


「ルリ姉ちゃん、もしかしてパンツ盗まれたの?」


セツコ、いい加減にパンツから離れろよ。


「どうしたのルリ姉、何かあったの?」


誰かに何か言われたのか?

だとしたら俺はそいつを許さない。


「サナちゃんが……」


サナ?

サナに何か言われたのか?


「サナちゃんがこの街を出るって……」


えっ、そうかだから……。


「そんなのヤだよ〜」


隣で居たセツコまで大きな声を出し、泣き始める。

いつかはこんな日が来ると思っていた。

だけどやっぱり、別れは辛いよな。


「二人共落ち着いて、そんな顔を見せちゃサナちゃんが辛くなるわよ」


母さん。

そうだよな、サナなら笑ってお見送りして欲しいよな。


「セッちゃん、我慢する」


「ほらルリ姉、セッちゃんもこう言ってんだし、ルリ姉も我慢しないと」


「うん」


涙を拭い、部屋から出てきたルリ姉を見て胸が苦しくなる。

ルリ姉にとって、サナは唯一、歳の近い友達なんだろう。

だからこの場に居る誰よりもサナとの別れが辛い筈だ。


「失礼します」


そう言ってサナが現れた。

慌てて顔を隠すルリ姉。


「ママさん、勝手に上がり込み申し訳ありません」

「ノックしたんですが返事が無かったもので」


「いえ、此処は子供達に任せた方が良さそうね」

「私は下に降りてるから何かあったら呼んでね」


「お気遣い感謝します」


母さんが居なくなると、セツコが泣きながらサナを抱きしめた。


「セッちゃんやっぱりヤダよ」

「サナちゃん、行かないで」


ルリ姉もセツコ同様、サナに泣きながら抱きついた。

二人共、我慢するんじゃ無かったのかよ。

俺は滲み出る涙を拭い、拳に力を入れて我慢する。


「おや、タッくんさんはいいんですか?」

「美少女に抱きつくチャンスですよ」


「随分と余裕じゃないか」


まあ、サナは世界を旅しているからな、別れには慣れているんだろう。

そう思っていたがサナの言葉を聞いて、俺は考えを改めた。


「余裕何てある訳無いじゃないですか」

「正直、この街は居心地が良くて、もっとこの街に居たいと思ってます」


「だったら……」


「ですが、私には世界の人々を錬金術で笑顔にするという夢がありますし、今も私の錬金術を待っている人が居るかも知れません」


そう言うとサナは一つの箱を取り出した。

そして、何かのアイテムを使い廊下を暗くする。


「私はその人達の為にも旅立たないといけないのです」


箱を開け、沢山の光る蝶が箱の中から出て行く。

キラキラと暗闇の中を照らす蝶はとても綺麗で、俺達の手の平に止まるとその綺麗な蝶は物に変わって行った。

セツコにはキャンディ。

ルリ姉には小さな髪留め。

そして俺には二つのリボン。


「凄い、サナちゃん凄いよ」


「ええ、本当に凄いわ」


ああ、本当に凄い。

錬金術もだけど、セツコとルリ姉がいつの間にか笑顔になっている。

何だか認めるのは悔しいが、サナは本当に天才だよ。


「ハッハッハ、そうです」

「私は皆んなのその笑顔が見たかったのです」

「だから笑顔で見送ってくれますね?」


「「うん」」


俺達はそう言って頷いた。

皆んなを集めてお別れ会を開かないとな。


第110話 完

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