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第103話[ゾルドワーク国のお姫様]

俺達は収穫した木の実をカットしてゾルドワーク国の皆んなにそれを配っていた。

木の実は甘く、特に子供達に大好評だった。


「お姫様、ありがとう」


「ドウイタシマシテ」


何でカタコト何だよ。

とはいえお姫様の表情、何だか柔らかくなった気がする。

国民の皆んなも喜んで木の実を食べているしな。

んっ?


「セツコお姉ちゃん、木の実一緒に食べよう」


「いいの?」


「うん」


あれ、セツコ何してんの?


「はわわ、この木の実とっても美味しいよ〜」


「はわわ、この木の実とっても美味しい」


子供達もセツコの真似してるし。

何、セツコってこの国の子供達に人気あるの?


「セツコお姉ちゃん、私もセツコお姉ちゃんと一緒に食べたい」

「私もセツコお姉ちゃんと食べたい」


何だろう、散々勇者だ英雄だの騒いでいた癖に、セツコが人気ってどういう事だ。

何だよあのアイドル的人気は、ちょっと羨ましいじゃないか。

くっ、こうなったら俺も……。


「勇者お兄ちゃんだよ」

「一緒に木の実食べたい人、あつまれ〜」


「うわ〜、きもーい」


「変なのが来た、逃げよー」


フッ、別に子供達が逃げて行った事はいい。

特に気にはしないさ。

寧ろ変質者がいきなり現れたとしても、あの対応なら安心できるだろう。

だが、セツコよ。

お願いだからお腹を抱えて笑うのは止めて、傷ついちゃうから。

俺、傷ついちゃうから。


「ちょっと、何馬鹿やってんのよ」


ゾルドワーク国のお姫様に叱られ、持ち場に戻る事に。


「グフッ、ブフフ」


セツコテメー、まだ笑ってんのかよ。

俺の顔チラチラ見て笑ってんじゃねー。

そんな時、ゾルドワーク国の王様と姫様の所の王様が一緒になって現れた。

良かった。

ルリ姉に渡した手紙、ちゃんと届いたんだ。


「あの、試食会の時は無礼を働き申し訳ありませんでした」

「後、お野菜美味しかったです」


「そうかい、そう言ってくれるだけで私は嬉しいよ」


そう言って王様はお姫様の頭を撫でた。


「それよりコレは君が考えたのだろう?」


「どうしてそれを?」


「勇者様の手紙に書いてあったよ」


咄嗟のカミングアウトに俺はお姫様に睨まれる。

いや、流石にね、言わない訳にはさ……。


「コレをお前が?」


「ええ、ずっと前から考えていました」


「なら何故言わない」


「お父様もお母様も私の話しを聞いてくれなかったじゃないですか」


お姫様の瞳から涙が溢れ落ちる。

そして心の中に溜まっていたものを全て父親に吐き出した。


「ゾルドワーク国の王よ、御立派な娘さんじゃ無いですか」


「ええ、私には過ぎた娘です」

「おいで、抱きしめさせてくれ」


「嫌よ、人前で恥ずかしい」


そう言って拒否するものの、強引に抱きしめられるとお姫様は満更でも無い表情を浮かべていた。

何だよ、素直じゃないな。


「お二人を見ていたら私も娘を抱きしめたくなったわい」


そう言うと王様は姫様を背後から抱きしめた。

咄嗟の出来事に姫様は悲鳴を上げ、王様はゾルドワーク国の兵士達に囲まれる。


「やめい、武器を下ろさんか」


ゾルドワーク国の王様が慌てて止めに入り、腰を抜かす王様を見て皆んなが笑った。

そして、別れの時間。

お姫様は一人一人に感謝の言葉をかけ握手をして回っていく。

そして俺の番がきて、お姫様は俺の目の前に立つ。


「木の実を配り、皆んなの笑顔を見て私、思った事があるの」

「このままじゃ、いけない」

「もっとお姫様として頑張らないといけない、そう思ったの」

「これもあんたのお陰よ、ありがとね勇者」


そう言ってお姫様は最高の笑顔を俺に向けた。

良かった、コレで本当に一件落着だな。


「でね、私あんたとなら別に婚約してやってもいいわよ」

「ほらっ、森で私の事、綺麗って言ってたでしょ」


顔を赤らめながらも笑顔で話すお姫様。

ちょっとこの流れって不味いんじゃ。


「私の事、貰ってくれる?」


お姫様に手を両手でガッシリと握られ、俺の意識が段々と遠ざかっていく。

そして……。


「ちょっと、何で倒れたの?」

「しっかりしなさいよ、ねぇ」


第103話 完

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