第101話[眠い]
俺は今、家の近所の河川敷でテントを張り、その中で過ごしていた。
家出の話しで盛り上がったのは良いものの、俺達は
ゾルドワーク国のお姫様が金欠だった事を忘れていた。
宿代なら貸しますと言うサナに対し、お姫様は「お金を借りるのは良くないわ」と言って頑なに借りようとせず、野宿をしようとする。
この人本当にお姫様かよ。
しかもセツコの奴が「お姉ちゃんを一人にできないよ」と言って野宿する様、皆んなに呼びかけるし、皆んなはそれについて賛成するし、領主様はテント三つを渡してくるしで野宿が確定してしまったじゃないか。
断るとセツコがダイヤを出して脅してくるし、大体砂がある所じゃなくて何で小石が多い所にしたの?
全身で足裏マットを体感している気分だよ。
「タッティーナ、居る?」
そう言ってルリ姉が俺を呼びに来た。
釣具と餌を受け取り、俺はルリ姉に皆んなに手紙を送ったか尋ねた。
「ええ、皆んなにちゃんと送ったわよ」
良かった。
一国の姫が家出したら大騒ぎだもんな。
セツコの所にもちゃんと伝えないとだし、俺の両親も心配に思うだろう。
いや、こんな近所だと心配なんてしないか。
俺はそんな事を考えながら魚を釣り上げた。
そしてバーベキューの準備をして、皆んなで晩御飯を食べる。
「はわわ、お肉美味しいよ」
そうか、そのお肉はセツコの両親が迷惑かけて申し訳ないと言って家に持って来た奴だ。
ちゃんと親孝行しろよセツコ。
「勇者様が釣り上げたお魚、美味しいですわ」
「あんたの所から持って来たお野菜も美味しいわよ」
「まあ、ありがとうございます」
両国の姫も仲良くなって本当に良かった。
後片付けを終え、俺達は雑談を少しして、それぞれのテントへ戻っていく。
セツコとゾルドワーク国のお姫様。
サナと姫様。
そして俺とルリ姉。
俺は寝袋に入りルリ姉と二人、お喋りをして眠りについた。
翌朝、セツコが元気よく俺達を起こして周った。
全く、普段は寝坊助の癖にこんな時だけ早起きしやがって。
「セッちゃん、まだ早いよ」
「こんな時間じゃまだ馬車屋、開いてないよ」
「えへへ、セッちゃん楽しみで早起きしちゃった」
そう言って頭を軽く小突き、舌を出して可愛子アピールするセツコ。
仕方がないので俺達は馬車の操縦士を起こし、割り増し料金で森へ向かうのだった。
第101話 完




