御前会議
王都。御前会議の行われる獅子の間へと続く、無意味に長い回廊。そこを歩む男の足取りは酷く重かった。頭を垂れ、胃の辺りをさすりながら顔をしかめ、しきりにため息を吐きながら歩むさまは絞首台へと向かう死刑囚を思わせた。
王国宰相、エリオール伯爵。辺境に追い詰められた〝王国〟の内政を一手に取り仕切る人物だが、立場の割りには覇気に欠けると陰口を叩かれる大貴族だ。線の細い文官といった容貌に、威厳を出すため生やした口髭が絶妙に似合っていない。
扉の前に立つと、彼は再び深いため息を吐いた。意を決して獅子の間に足を踏み入れると、複数の視線が突き刺さり、彼の胃をきゅっと縮ませる。列席者は一人を除いて揃っており、落ち着かない気分を味わいながら自身の席に着いた。
彼が部屋に足を踏み入れた瞬間、ぷっつりと会話が途切れた。そして、なぜか注目を浴びる羽目になった。気まずくなってさまよわせた視線が誰かとぶつかりそうになり、慌てて目をそらす。エリオールが苦手とするものはいくつかあるが、そのひとつが雑談だ。目的のない会話をどのように進めればよいか分からないのだ。
貴族とは、そうした会話を通してある時は正面から、ある時は何重にも裏の意味をこめて駆け引きをするものなのだと頭では分かっている。宰相ともなれば言葉ひとつで数多の人々を意のままに動かして然るべきなのだろう。妻にもそう言われた。生まれながらの貴族なら息をするようにできて当然なのだと。
エリオールにそのような才能はない。よって、このような場では周囲の人々が交わす会話にじっと耳を傾け、なぜ何も喋らないのかと責めるような不躾で胡乱な視線に気付かないふりをするのが常だった。いたたまれないの一言である。
王の臨席を告げる、近衛兵の口上が聞こえてきた時には心底ほっとした。
「地上における唯一の王、人族の偉大なる守護者にして寛容なる保護者、いと高貴なるレクルスとマドースの血脈にしてバルトメルンの冠を戴きし者――」
列席者が全員が直立し、仰々しい口上を聞き流すか、あるいはあくびを噛み殺している。すでに滅びた王国、共和国、都市同盟。それら全ての後継者こそ〝王国〟なのだと高らかに歌い上げる、ありがたくも尊き口上なのだった。
「――〝王国〟を統べる者、ハルパルト・ウェル・ヒムノス一世王の臨席である」
ようやく口上が終わり、ハルパルト王が姿を現す。王は椅子に腰掛けると、黙ってうなずいた。それを受けて、列席者も腰を下ろす。寡黙な王だ。眉間には常にしわを寄せ、がっしりとした長身は風雪に耐え忍ぶ大樹を想起させる。
その王に、じろっと視線を向けられた。エリオールは慌てて口を開く。
「えー、では、始めましょう。本日、皆様にご参集いただきましたのは交易都市レドで蔓延する伝染病についての経過報告、なのですが……現地で対処に当たっているペリエス司教から、いくつか不穏な知らせが届いておりまして……」
ちっ、という聞こえよがしな舌打ちの音が獅子の間に響く。ベルン侯爵。鎧が身に付けられるか怪しいほどの肥満体だが、これでも王国軍の総帥だ。
「結論から言いたまえよ、エリオール伯。伯に負けず劣らず、我らは忙しい身なのだ。こうしている間にも、悪しき魔族どもは侵略の牙を研いでいるのだぞ」
「ええ、まさにベルン候のおっしゃる通りで……レドに〝魔人〟が現れたとの報告がございました。かの地で広がる伝染病との関連は未だ不明となっておりますが、早急に対処の必要があるかと……ぜひ皆様のご意見を伺いたく……」
エリオールの言葉を聞いて、ベルンが目を剥いた。
「ま……〝魔人〟だと? いや待て……その報告は信頼できるのだろうな。バルシド辺境伯は何をしているのだ。みすみす〝魔人〟の侵入を許しておきながら、報告を寄越しもせずに何をしておるのか。早急に使者を送って問い詰めねば」
「今はそのような場合ではありますまい!」
ベルン侯を遮って声を上げたのはケルトント大司教だ。実質的な〝教会〟の指導者であり、狂信的な人族純血主義者でもある。興奮すると口角泡を飛ばし聖杖で床を打ち鳴らすのが癖で、目に宿る光が正気ではないとエリオールは常々思っている。
「討伐、討伐、討伐あるのみ! 汚らわしい伝染病の運び手たる〝魔人〟の誅滅は神のご意志! 今こそ王国軍総帥たるベルン候、貴殿の出陣の時ですぞ!」
ケルトント大司教に名指しされて、ベルン侯が顔をしかめる。
「大司教の言う通り、魔人の討伐は早急に行わねばならない。しかしだぞ、単身でレドに乗りこみ伝染病を撒き散らすという邪悪なやり口、陽動の可能性も捨て切れないだろう。となれば王国軍総帥である私が王都を空けるわけにはいかない。それにだな、軍隊というものは軍勢を相手取るためのものであり、たった一人の〝魔人〟を倒すために動かすのは、言ってみれば大鉈をナイフ代わりに振るって食事をするようなもの。ここはやはり、もっと魔人の討伐にふさわしい人選をだな……」
長々と演説しているが、ようするに王都を動きたくないのだ。安全な場所から指示を出し、手柄は自分のもの、失敗は部下のせい。それがベルン候という男だ。
「総帥ともあろう者がそのような軟弱な……」
「大司教! 報告にはまだ続きがございます。よろしいでしょうか」
ベルンの逃げ腰にケルトント大司教が激高し、収拾が付かなくなる前にエリオールが割って入った。大司教にはすごい目で睨まれ、矛先がそれたベルン候はなぜもっと早く助け船を出さないのかとでも言いたげにエリオールを睨んでくる。
率直に言って、やっていられない。国軍派のトップであるベルン侯爵と、教会派の重鎮であるケルトント大司教の板挟みになっているエリオールを援護しようという人間はこの場に誰一人として存在しない。触らぬ神に祟りなしというわけだ。
二人を抑えられる権力を持つハルパルト王は常の如く瞑目しているし、王国軍の副総帥であるベルシド辺境伯は国境のダクエル要塞から動けない。末席に座る〝王国の金庫番〟ユディル子爵は何がおかしいのか、うっすら笑ってさえいた。
残りの列席者はベルン候を筆頭とする国軍派、ケルトント大司教が差配する教会派、良識派とは名ばかりの風見鶏のいずれかであり、実質的に発言権を持たない。エリオールは、保身と権益の拡大に汲々とする国軍派と教条的な人族純血主義を唱える教会の間でバランスを取り、何とか現実的な案へと落としどころをつけるという無理難題に挑まざるを得ない立場にあった。胃痛で死にそうにもなる。
そして、これから報告する内容はさらにエリオールの立場を悪くする。
「レドにおいて〝勇者の斥候〟リーエンの生存が確認されました。目下、魔人と接触して情報を探り、討伐の糸口を探っているとのペリエス司教の報告です」
「あのリーエンだと……?」
「生きていたのか……今さら何のために?」
リーエンの名を出した瞬間、獅子の間がどよめいた。
かの〝勇者の一行〟は〝人族の領域〟から敵を駆逐し、一時は〝人外の領域〟への再進出すら夢ではないと思わせた人族の希望の星だった。勇者の死後、行方不明となっていた生き残りがほぼ一年ぶりに姿を現したのだ。
だがエリオールの報告が列席者にもたらしたのは喜びの声ではなく、困惑と憤怒の感情だった。一時は騒がしくなった獅子の間だが、ベルン候の大袈裟な咳払いで皆が黙りこむと、派閥の長であるベルンとケルトントの反応を窺う格好になる。
「ふん。これではっきりしたと言ってよかろう」
ベルンが吐き捨てるように言う。
「あの斥候が〝魔人〟を手引きしたのだ。たった一人の生き残りなどと白々しい……勇者の死もやつの裏切りが原因だったに違いない。今さら尻尾を振ってみせたところで、我々の目を誤魔化せるとでも思っているのか。舐めた真似をしおって」
決めつけるようなベルンの物言い。列席者の何人かは同調するようにうなずき、他の者も渋い顔をしている。まずい流れだ。エリオールは慌てて口を挟む。
「いえ、リーエンが裏切ったと決まったわけでは……現地のペリエス司教は伝染病の調査にも協力的だと報告を上げております。ひとまず様子を見て……」
「黙るがいい! そもそも〝勇者の一行〟を王に推挙したのはエリオール伯、そなたであったな。勇者の遠征が失敗し、裏切り者が〝魔人〟を引き連れて侵攻してきた此度の問題、どうやって解決する腹づもりか聞かせてもらおうではないか!」
声がでかいだけで、主張の内容はめちゃくちゃだ。決めつけ、牽強付会、責任転嫁、反論はいくらでも思い浮かんだ。だが発言力の強さと事前の根回しが全てを決めるこの場において、王国軍を背景にしたベルンの言葉は一定の力を持つ。
「ええと……つまりベルン候は〝勇者の一行〟から裏切り者が出たのが問題の発端とおっしゃりたい……となると〝勇者の一行〟ペリエス司教は騙されるか抱きこまれるかして、リーエンを信用できる協力者とする誤った報告を上げてきたわけで……現地の報告が信用できないとなると、ええ、これは大問題ですね」
ベルンの言葉を少しだけ膨らませて繰り返すと、これにケルトントが激発した。
「我が〝教会〟に裏切り者などいようはずがない! そのような不心得者に復活の奇跡が扱えようはずもなく、ペリエスの衷心は疑いようもない! それとも総帥は――おお神よ、許し給え――神聖なる神のご意志に疑念を抱いておられるのか?」
「そ、そうではない。ただリーエンなる斥候の裏切りは明白だと言っておる」
ベルンが慌てて取り繕う。万が一にも〝教会〟に魔人の疑いをかけられれば、一瞬にして地位も財産も、全てを失いかねないのだ。過酷で理不尽な〝魔人裁判〟は〝教会〟がしばしば持ち出す切り札であり、彼らの権力の源泉だった。
「総帥が懸念するように〝勇者の斥候〟と〝魔人〟が結託したのなら、侵入経路の特定も急務であろう。彼の者らがレドに現れたこと自体、取りも直さずダクエル要塞の守りが万全ではないと示している。総帥、これは王国軍の責任問題ですぞ」
ケルトントの居丈高な物言いに、ベルンが気色ばむ。
「ダクエル要塞は〝人族の領域〟の防衛が第一義である。ゴブリンどもの跳梁跋扈を許したあの忌まわしい事件の再来を防ぐためにあるのではないか。人族の間に密かに紛れこんだ魔人を狩るのはそちらの聖騎士団の仕事であろう!」
「な……何という物言い、無責任にも程がありますぞ。神の僕たる聖騎士団は不甲斐ない王国軍の尻拭いのために存在するのではありませんぞ!」
「もうよい」
不毛な言い争いに発展するかと思われた場が、ぴたりと静まる。
王国軍総帥、ベルン侯爵。そして〝教会〟のケルトント大司教。この二人をたった一言で黙らせる人間など、この場には一人しか存在しない。
「余が求むるは速やかなる〝魔人〟の排除。それのみよ」
人族に残された最後の〝王国〟の統治者、ハルパルト王その人である。会議が始まってからずっと瞑目していた王は、ベルンとケルトントを一瞥し、鼻を鳴らす。
「ユディル、軍資金を用意せよ」
誰もが縮み上がる王の名指しを〝王国の金庫番〟ユディル子爵は涼しい顔で受け流した。彼は王位継承権こそ持たないが、ハルパルト王の異母兄弟であり、度胸があって頭も切れる。王に面と向かって異を唱えられる数少ない人物だった。
「恐れながら申し上げます、陛下。先だってのクラーケン増加に伴う海防の強化で、国庫は底を突いております。大規模に軍を動かすのであれば秋の収穫を待ってからになるかと。あるいは土地を差し出せばドワーフの融資も受けられましょうが」
他人事のように素っ気ないユディルの言葉に、ハルパルト王が眉間のしわを深める。王は寡黙だが、こうと決めたら頑として動かない。彼が魔人の排除を口にしたからには、誰かがその任を負うことになる。互いの動向を伺う空気が場に満ちた。
「ベルンよ」
しんと静まった獅子の間に王の声が響く。
「は、陛下」
「リーエンめが〝魔人〟と結託したと申したな。その意味を考えたか」
「は……と、言いますと?」
「我らが諸王連合に仕掛けた作戦が、そのまま跳ね返ってくるとは思わぬか」
つまり、少数の精鋭による要人の暗殺。優秀な斥候であり〝人族の領域〟を知悉したリーエンが強大な魔法を操る〝魔人〟と組めば、危険性は計り知れない。
「それは……ううむ、確かにそうした懸念はあるでしょう。ですがご安心ください。御身は我が王国軍の精鋭たちが必ずや守り通してみせましょうぞ」
「ずいぶんと勇ましい発言ながら、つい先ほど〝魔人〟のごとき存在には軍は無力と申したのは総帥ご自身ですぞ。ここは我ら〝教会〟の擁する聖騎士団が偉大なる神のご加護の下、邪悪を討ち果たしてご覧に入れましょうぞ」
「無力などとは言っていない、言葉尻を捉えた曲解はやめていただこう!」
いがみ合う二人の様子に、王はうんざりしたように瞑目してしまう。
ハルパルト王は、寡黙ではあるが決して愚鈍ではない。リーエンと〝魔人〟の脅威も正しく理解している。もう少し言葉を尽くして説明してくれればと思うが、それは高望みというものだろう。上位の継承権を持つ王族が相次ぐ戦乱と暗殺で落命していった経験が、今なお王の性格に暗い影を落としているのだ。
「陛下、今すぐ動かせて、軍資金もかからない戦力がいるではありませんか」
沈黙を破り、おもしろがるような口調で発言したのはユディルだった。
「ユディルよ、もったいぶるな。その戦力とやらを申してみよ」
目を閉じたまま、素っ気なく王が言う。見えていないのをいいことに、ユディルが肩をすくめ、くるりと目を回して言葉を継いだ。
「エンペリオ殿ですよ。かの〝天騎士〟であれば、細々とした兵站の準備や維持に気を遣う必要はなく、強力な〝魔人〟だって仕留めてみせることでしょう」
確かに〝天騎士〟であればやってのけるだろうとエリオールも思う。だが、今まで誰もそれを口にしなかったのには相応の理由がある。
「王都の守りは何とする」
不快感すら滲ませた王の問いに、エリオールを含め関係ない者まで身体を縮こまらせる。だがユディル子爵は余裕の表情で答えてみせた。
「まさにそこです。王国軍であれ聖騎士団であれ、動かすとなれば金も時間もかかります。レドに着くまで一週間、首尾よく〝魔人〟を倒して帰還するのにもう一週間。都合、半月は王都の防備が薄くなる計算です。これはよくない」
実のところ、ハルパルト王が自在に動かせる戦力は少ない。王国軍を構成するのはベルン候を始めとする大貴族の兵であり、聖騎士団は〝教会〟の要請を無視できない。二百人の近衛兵と、王都の守りを担う〝天騎士〟エンペリオだけが王の直属なのだ。
常に裏切りを警戒して生きなければならなかった王にとって〝天騎士〟エンペリオは数少ない全幅の信頼を置ける相手だった。ダクエル山脈を越えて侵攻してきたゴブリンの軍勢をたった一人で壊滅させ、人族滅亡の危機を救った〝天騎士〟はそれ以前の経歴が不明であり、一切の後ろ盾を持たないがゆえに王の信頼を得た。
本来は人の手が届かざる空の領域。その守りを一手に担う〝天騎士〟の存在は、未だ人族が滅びずにいられる理由のひとつだ。ダクエル要塞と山脈の各所に置かれた砦群が防ぐのは地上の軍勢であり、ドラゴンやワイバーンの侵攻は阻めないからだ。ゆえに〝天騎士〟は王都を動けない。それが常識だった。
「人族最強の〝天騎士〟は王都から動けない。誰もがそう考えています。そう、我々だけではなく、敵もまたそう考えている。なればこそ、稲妻のごとき神速を以てすれば悪しき〝魔人〟の意表を突き、討ち果たすことも可能かと愚考いたします」
余裕たっぷりの表情で一座を見渡すユディル。反論する者はいない。
「奇策の誹りは甘んじて受けましょう。軍略を修めぬ浅学者なれば、足りぬ点は遠慮なくご指摘いただきたい。もちろん、他に優れた案があるならばすぐにでも撤回いたしましょう。私としては王の御心を安んじ奉りたい一心でございますので」
ユディルが締めくくる。反論など出るまいと高をくくった余裕の笑み。
しばしの黙考の後、王が首肯しかけた、その時。
「お……お待ちください!」
エリオールは口を開いた後で、愕然とする。
頭が真っ白になりかけ、苦し紛れに思い浮かんだことをそのまま言う。
「〝勇者の斥候〟リーエンは人族です、お忘れではあるまいか!」
だからなんだ、という疑念と敵意の視線が突き刺さる。胃が痛い。
しかし、異議を唱えたからには何か捻り出さなければ。
「人族に敵対する〝魔人〟を討伐する。ええ、それは構わないでしょう。しかしですよ、仮にも〝人族の領域〟から他種族を駆逐し、悪辣なる諸王連合の心胆を寒からしめた〝勇者の一行〟の生き残りをまとめて処断してよいものでしょうか。彼らは今なお民衆の間で人気が高く、勇者の生存説も根強く囁かれております」
勇者は死んだ。間違いなく。諸王連合は自らを脅かした敵手に対して最大限の敬意を示し、使者を立てて装備一式を〝王国〟に送り届けてきたのだ。
「然るに〝王国〟が〝勇者の一行〟の生き残りを問答無用で処刑したとなれば、庶民の反感を買うは必定。無用の火種を抱えれば諸王連合がつけこんでこない保証はございません。どうか、即時の処刑だけは思い留まりください!」
言い切った。王にじろりと見据えられ、せめて視線だけは外さず胸を張る。
「どのような処断を考えておる」
「は……捕縛して裁判にかけるべきかと。リーエンが裏切り者かどうか、行方をくらましていた間に何をしていたのか、全ては厳正なる裁きの場で明らかになるでしょう。ともかく生かすにせよ殺すにせよ〝王国〟の正義を満天下に示してからです。短絡的に殺してしまっては、それこそ相手の思う壺かと」
ごくりとつばを飲む。裁判。要するに結論の先延ばしだが、好き好んで火中の栗に手を突っこもうとする人間がいない限りは通る提案だと踏んだ。
深く長いため息。こつこつと、王が指で肘掛けを叩く音だけが響く。
「三日だ」
「は……?」
「三日後の日没までに天騎士を王都の守りに戻せ」
王はそれだけ告げると、玉座を後にした。
つまり、後はよきに計らえと。
誰がやるのか。恐る恐る、周りを見渡す。
御前会議に参加する人間、全ての視線がエリオールを見ていた。