真央、力を示す。
真央の掛け声を聞き、振り下ろした邪剣が虎の首に触れる寸前の所で止めるダークネスロード。
「主よ、なにか問題でも?」
処断を止めた理由の分からないダークネスロードは真央へその真意を尋ねるが、対する真央の表情は穏やかではなかった。
「さすがに殺しちゃうのはまずいような……」
「だが、こやつは主の命を狙った外敵だぞ。加えて我の支配能力も及ばない最上級の魔物であるから消す他ない」
「わたくしの精神スキルでも操れませんわ」
「うん、それなんだけど……多分なんとかなると思う」
真央の予想外の申し出に驚くダークネスロードとヴァンパイアクイーン。
そのまま真央は両者の間を通り抜けると鮮血棘に拘束された虎のすぐ前へと歩み寄る。
そうして相変わらず敵意剥き出しの虎に向かってみるみる険しい表情になり大きく息を吸い込む真央。
「こらああぁぁぁっ!!! 大人しくしなさいぃぃいいっ!!!!」
森中に響き渡る大声が木霊し、それを目の前で受けた虎は両目がひっくり返る程の衝撃で全身をガクガクさせる。
すぐ近くでそれを見ていたダークネスロードとヴァンパイアクイーンも初めてと言っていい程に動揺した表情で軽くよろけてしまう程であった。
さらには、その拍子にヴァンパイアクイーンは自身の鮮血棘を解除してしまう。
叫び終えた真央はダークネスロードとヴァンパイアクイーンの方を振り向くと頭を手でなぞりながら照れた顔をする。
「多分これで大人しくなった…かな? てへへ……」
両者共に大丈夫と言った真央の考えに理解が追い付かずにいたが、虎の方へ視線を向けると信じがたい光景が広がっていた。
「がう♪」
あれほどまでに獰猛な姿で真央達を敵視していた虎が飼い猫かと錯覚するレベルのなつき具合で真央の膝に顔を擦り付けながら猫撫で声で鳴いていたのだ。
「よーしよしよし」
愛らしい甘え方をする虎の頭を両手で優しく撫でながら可愛がる真央。昔ながらの大事なペットの如く扱う様子の真央に恐る恐る近づくダークネスロード。
「あ、主よ…これは一体どういう………」
「いやぁ最初見た時から思ったんだよね〜。この子見た目が大きな猫みたいで可愛いからちゃんと躾けたら懐きそうだなぁって」
「いや、そうではなく……如何にしてこの獣を従わせたのだ?」
「う〜ん? そう言われてもなぁ……なんか、直感で??」
実に曖昧な理由で答える真央だったが、ダークネスロードからしてみれば凄まじいこと成し遂げていたわけで真央は直感と述べたが、これは魔王の力による物であった。
<混沌の支配者>
如何なる魔物でも支配下における絶対的支配能力。
ダークネスロードが保有する闇の支配者の完全上位互換でありダークネスロードですら支配できない虎を従えさせたのはまさに魔王たる力故であった。
「お見事ですわ主様。倒すことならいざ知らず、まさか戦わずして従えるなんて」
手を下さず無力化したことに感服したヴァンパイアクイーンは胸に手を当て心躍らせるかのように真央を羨望の眼差しで見つめる。
ヴァンパイアクイーンの自身の心得として、絶対的強者には敬意と賛辞を忘れないよう課している。
ダークネスロード然り今現在圧倒的支配力を示した真央に対してもその心得が当て嵌まるのは至極当然といえるのだ。
「いやいやぁそんな褒められても照れるってぇ〜…にひひ」
照れ隠しをしようとする真央だが口角が抑えられない笑みで曲がりくねってしまい、もはやニヤニヤした顔を晒している真央。
「召喚だけでなくよもや支配における力までも圧倒的とは……。上級の魔物であれば我も従わせられるがよもや最上級の魔物を手懐けるとはな、さすがは主と言えよう」
「へ? 最上級??」
「左様……魔物にはランクがあってな、伝説級、最上級、上級、中級、下級と分かれている。最上級はおそらくこの世界でもなかなか巡り合わないレア物よ」
ダークネスロードは魔物及びそのランクに関しては召喚される魔物であるからしてそのことを事項として理解していた。
実際にその説明を受けたことで真由もダークネスロードに支配できないランクの魔物であることを認識することができた。
「こやつの名は古代の猛虎、森の覇者の異名を持つ最上級の魔物で間違いない」
「ぐるるるる♪」
喉を鳴らし先程までが嘘のように真央に頭を擦り付け甘える古代の猛虎。
「あれ? よく考えたらダークネスロードとヴァンパイアクイーンも魔物だよね? 2人もランクがあるの??」
「我は伝説級だが」
「わたくしもですわね」
「え、2人共なんだ! すごいねぇ!!」
素直に称賛する真央だが、この時ダークネスロードとヴァンパイアクイーンは揃って伝説級を複数召喚できる真央が一番凄いだろうと強く思ったのだった。
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