真央、森の覇者と相対する。
沈黙していた森が突如揺れ始める。
その揺れは奥の方から真央達のいる拠点の方へとさらに大きくなっていくことから得体の知れないなにかがこちらに向かって来ていることが真央にも察知できた。
「えっ、なにこの振動!? なんかこっちに近付いて来てない!!?」
「主、下がっていろ。」
ダークネスロードが一言のみ告げた瞬間に茂みの中から獰猛な虎がダークネスロード目掛けて襲いかかってきた。
「ぐがあああぁぁぁあああっ!!!」
空を切り裂くような雄叫びと共に触れる物全てを抉る力を帯びた長爪をダークネスロードの頸目掛けて突き刺しに掛かる。
しかしダークネスロードは躱す素振りすら見せずに一瞬で自らの鞘に納めた邪剣を引き抜くとそのまま片手で振るい虎の攻撃を軽くいなす。
仕留められなかった虎はすぐさまダークネスロードから距離を取り戦闘態勢を保つように4本足を低く折り曲げながら構えており唸り続けている。獲物を喰らうまで一切引き下がるつもりはないらしい。
虎の体長は真央のいた現実世界における虎とは比較にならないほどの大きさであり、黄色の眼光にサーベルを彷彿とさせる長く伸びた牙に頭部から全身に掛けて緋色のルーンのような紋章が刻まれていた。
また、首と背中の間から2つに分かれた硬質感のある尖った岩のような物が生えており相当な高位の魔物であることが見て取れた。
「ふん、ここに来るまでにやけに魔物の気配を感じないと思っていたが……なるほど、この辺りはこやつの縄張りであったか」
「必要ないかとは思いますが…加勢を致しましょうかダークネスロード様?」
「よい、そのまま主の横にいろ」
ヴァンパイアクイーンの申し出を却下し、ダークネスロードは邪剣を相対する虎へ向ける。
「ちょうど良い腕慣らしよな、我が邪剣……受け切れるか?」
言い終えたのと同時に一瞬でダークネスロードは虎の喉元まで詰め寄り邪剣を振り下ろした。
(さすが闇の支配者を冠するお方………凄まじい迅速さですわね)
ダークネスロードの尋常ではない速力にヴァンパイアクイーンも感心する。
しかし、虎も野生の俊敏性を持ち合わせていたために紙一重でこれを躱す。間一髪で躱せたがこれまで狙った獲物から受けた反撃の中でも最も危険であったのは虎も肌で感じていたためにダークネスロードを獲物から強敵という対象に変更した。
「ほう、加減したとはいえ我の太刀筋から逃れるとはな」
「がうっ!!!」
ダークネスロードと虎が意思疎通できるはずもないが敵同士の会話とも取れるやりとりを行う両者。
「え〜なにが起きてるの……」
そしてここまでの流れが真央の体感では1、2秒程度のものであり当の真央は相変わらずついて行けずに座り込む。
その隙を野生の勘を持つ虎は見逃さなかった。
標的はこの場で最も弱そうな相手を狙うのが自然の鉄則であり虎もそれに従い電光石火の如くダークネスロードから横に回り込みその先にいる座り込んだ真央を噛み砕こうと牙を向けた。
「え、なんかこっち来た!」
「よもや、狙う相手を見誤るとはな」
ダークネスロードが横切る虎に対応しようとするが、後ろに控えていたヴァンパイアクイーンが真央を背後に虎の前へ立ち塞がる。
「ブラッドリーバイト」
ヴァンパイアクイーンの詠唱で即座に地面から巨大な鮮血棘がいくつも突出し、飛び掛かった虎を四方から拘束した。
「わたくしを無視して主様を捉えられると思わないことですわね」
「があぁっ!」
鮮血棘によりいきなら虎は身動きか取れなくなった虎は目の前のヴァンパイアクイーンを睨みつけながら唸るが、ヴァンパイアクイーンは眉一つ動かさずに虎を見据えている。
「先程の透明化に続き、良き力を有しているなヴァンパイアクイーンよ」
「出過ぎた真似なのは承知しておりますが、わたくしの目の前に来たからには誇りにかけて主様をお守りさせていただきますわ」
「よい、主に仕える立場であれば不遜な行為にはならぬ」
当然ダークネスロードであれば即座に横切った虎を即座に回り込み斬り捨てることも可能であったが、ヴァンパイアクイーンの意向を汲み取り譲ったに過ぎなかったため異論はなかった。
「がうっ! ぐううぅぅ………!!」
全身が動かせない状態で尻目に話しているダークネスロードとヴァンパイアクイーンが余程気に食わないのか、無理矢理に暴れ鮮血棘から抜け出そうとする虎。
だが、まるで拘束は外れないために規格外の敵相手に為す術無く無駄な抵抗を続けている構図となっている。
しかし虎にそれが分かるはずも無く目の前の敵を威嚇し続けておりさすがに興が冷めたのかダークネスロードが虎の所まで寄ると虎の頭上に邪剣を立てる。
「俊敏性はなかなかの物であったが、標的を見誤る所を見ると周りに脅威となる敵が存在していなかったのだろう。よもやこの場で一番強い主を狙うとは・・・その愚かさ、死をもって償え」
処刑宣告を下された虎の首が邪剣に刎ねられる寸前、それまであたふたしていた真央が立ち上がる。
「ちょっと待って!」
ダークネスロードを呼び止める真央にはある予感があった………。
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