真央、散策する。
宿舎内にてヴァンパイアクイーンを召喚する以前にダークネスロードと真央が話していた今後の方針について聞かされるヴァンパイアクイーン。
一通りの内容を聞き終えるとヴァンパイアクイーンは少し思考した後にその妖艶な唇を開く。
「おおよその内容は把握致しましたわ。方針についてはわたくしも異論はありません」
「ありがとうございます! ヴァンパイアクイーンさん」
了承を得られて一安心する真央。
しかし、ヴァンパイアクイーンはそこで終わらず話を続ける。
「ただ…」
「え?」
予想外な反論が来るのかと身構える真央。
ダークネスロードは黙ったままヴァンパイアクイーンの主張を聞く態勢を崩さない。
「拠点、戦力増強を早急に行うのはいいのですが周囲の国やその地域の探索も優先事項と思われますわ」
「無論、それに関してはこの世界の知識を知るためにも必須だと理解している。だが、現状だと厄介事にならずにそれを行うことは容易ではあるまい」
ダークネスロードの不安要素の提示に対し、ヴァンパイアクイーンは得意げに顔を澄まし長髪をかきあげる。
「その点についてはわたくしを召喚していただいて正解でしたわね。影に隠れ情報収集を行うことに関しては自信がありますもの」
「え、本当!?」
先程とは売って変わりヴァンパイアクイーンに羨望の眼差しを向ける真央。
「それは心強いが、明確な理由を教えてもらえぬか?」
ダークネスロードの思惑はヴァンパイアクイーンの発言が単なる自信過剰によるものではないかどうかを確かめる必要があるためにその確認を求めるものだった。
事実ヴァンパイアクイーンは単純なパラメータは真央やダークネスロードに比べるとやや劣るし、ヴァンパイアクイーンの有するスキルの効力についても把握できていない。
当然そのことをヴァンパイアクイーンも理解していた。
「説明するよりも実際に見ていただいたほうが早いかと」
そう言うとヴァンパイアクイーンは暗闇に包まれた森林の中、自身の背中に生えた両翼を羽ばたかせ上空へ飛び立った。
「クリアスキン」
ヴァンパイアクイーンのスキル詠唱と共にみるみるとヴァンパイアクイーンの全身が透明になっていき消えてしまった。
「え!? ヴァンパイアクイーンさんが消えてるんだけど!!」
初めにヴァンパイアクイーンが消滅した悲劇がよぎり動揺する真央。
「ご安心を主様。わたくしは主様の真上にいますわ」
上空からヴァンパイアクイーンの声のみが響く。
「ほう、姿をくらますスキルを持っていたか。たしかに探索するならこれ以上のスキルはないな」
クリアスキンにより外敵から見つからず安全に探索もでき、更には夜間なのでヴァンパイアクイーンにとって最適の状況だと納得するダークネスロード。
「ありがとうございます。それではこのまま少し辺りを見渡して来ますわね」
「気をつけてねヴァンパイアクイーンさ〜ん」
そのまま透明化したヴァンパイアクイーンは上空から辺りを確認し、目ぼしい街や村ないか飛び回る。
後方には真央とダークネスロードがいた荒れ地のみのためその他を探索する。
右方には森から隣接した崖がありその先からは平原となっていた。
目視できる限りでは街は見当たらないがさらに先へと探索すれば見つかる可能性はある。
続いて左方へと振り向き颯爽と飛ぶヴァンパイアクイーン。
こちらは河川が流れており奥には洞窟らしき場所があった。
しかし地形的にも人の集まっているような場所はありそうにないのでヴァンパイアクイーンは探索対象から除外した。
そして前方は山間地帯が広がっており、山を超えなければその先は確認できない状態であった。
ひとまず大まかな探索対象は判別できたため速やかに真央達のいる拠点へと戻る。
台座に横たわりぼーっとしている真央と周囲に外敵がいないか警備をしていたダークネスロード。
「ただいま戻りましたわ」
「うわああっ!!?」
透明化を解除し真央のいた台座前に現れたヴァンパイアクイーンに驚き思わす台座から転げ落ちる真央。
「ちょっ…いきなり目の前に現れないでよ!? あ〜びっくりした」
「申し訳ございません、一応距離は空けていたのですが……」
「いやわたしドッキリ耐性0だからさ………」
力は遥か上を行く立場の真央がまるでその様子を見せないことに戸惑うヴァンパイアクイーン。
対してダークネスロードは警備をしていたにも関わらずいきなり透明化を解除したヴァンパイアクイーンに対して狼狽えることはなかった。
「戻ったかヴァンパイアクイーンよ。それで街は見当たったのか?」
「いえ、残念ながらすぐ近くにはありませんでしたわ。ただここから右方へ進んだ先に崖がございました、崖の上から広い平原があったのでおそらく街がある可能性があるとしたらそこかと……」
ヴァンパイアクイーンの報告を聞き、言われた方向を向くダークネスロード。
「ふむ、ヴァンパイアクイーンの見立て通りならばそちらへ向かったほうがよさそうであるな。主よそれで構わぬか?」
「いいけどここからまた歩くの疲れるなぁ、しかも崖ってどうやって登るの?」
「崖については跳躍していくしかあるまいな」
「ジャンプするってこと!? それで行けるのかなぁ」
「それも主の力を試す機会にもなるであろう、まずは………待て」
話途中に右腕を上げ真央とヴァンパイアクイーンに動かないように促すダークネスロード、自身は集中した表情で前方を警戒している。
「どしたのだーくん」
いきなりのことに棒立ちで尋ねる真央。
真央の横にいるヴァンパイアクイーンも険しい顔付きになっていた。
「この気配は、なにか来ますわね……」
「ああ、なかなかに力のあるやつがな……」
ダークネスロードとヴァンパイアクイーンは強者特有の感知でこちらに近付いてくる存在に警戒態勢でいた。
「はえ?」
そしてその両者を従える真央は呆けた様子で眺めていたのだった……。
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