表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/13

蔓延る魔の手

 古びた家屋が数軒建ち並ぶ村があった。

 

 村を囲う塀は最低限の意味合いしか持ち合わせていないことが見て取れる程に寂れており長い間手入れもされていない。


 村全体の広さはそこいらの牧場よりも狭く村というよりかは集落に近いのではないかと錯覚する程だ。

 

 そんな活気のない村に建つ一軒家の扉がゆっくりと開く。


 中から若い少女が出てきた。


 エメラルド色の両目に白い肌で小麦色の長い髪を後に束ねて赤い頭巾を被っており、簡素なローブに近い衣服に見を包む少女は普通であれば今をときめく若々しさにふさわしい爛漫さが満ち溢れる年頃であるはずなのに表情には陰りが見えている。


 おまけにここ数日睡眠があまり取れていないのか目の下には隈が出来ており、まるでつい先程まで()()()()()()()()()()()()()()


 足取りも重く村の中央にある井戸へと進む少女。


 両腕にも力が充分に入らないためか井戸から側に置いてある桶で水を汲み取ろうとするがその動きはたどたどしい。

 

 「うっ…くぅ………」


 苦悶の声を出しながらやっとのことで水を汲み終えると元いた家屋へと戻ろうとする。


 「やぁ、精が出るね。()()()()()()()


 どこからともなく現れ少女の背後からそう呼び掛ける男。

 その声を聞いた途端少女はぴたりと静止する。


 男はやや小太りの中年で、丸々とした黒色のキノコヘアーをしている。

 紫のローブを纏っており、首には高価そうなアミュレットを身につけていることからある程度の地位があるのだろう。


 その男は時間が止まったかのように動かなくなる少女を真後ろからほくそ笑みつつ歩み寄る。


 男の足音が近づくにつれ少女の肩が徐々に震え出し強張った表情で真下に視線を落とす。


 「そう怖がることもないだろう? 君は()()()()と違ってそこまで悪夢に悩まされていないのだから」


 俯いたままの少女のすぐ真後ろまで来るとそう呟く男。


 少女はさらに震え出し瞼を閉じてこの恐怖に包まれた現実から逃げ出したいと心から懇願するかのように一粒の涙を流す。


 「うっ……うぅっ………」 


 その様子を見るや男はさらに笑みを増すと少女の肩に手をやり舌なめずりをする。


 「おやおや泣いてしまったのかい? なにも君のご両親と妹が死んでしまったわけではないのだよ? ()()()()()はだけどね……ふひひ」

 


 その言葉を聞くと少女は今まで耐えていた全てが溢れ出しそうな感情に押し潰されそうになり足腰がままならなくなってしまう。


 倒れそうになるが、ギリギリの所でなんとか踏み留まるとようやく男の方へ振り向く。


 「お願いします……どうか、村のみんなを悪夢から解放してください……!」


 振り絞るように出した掠れた声で男に助けを求める少女。


 「おいおい、なにも君の村の住民を殺すつもりはないよ? 死なれてしまったら私のこの村を乗っ取る計画にも支障が出るからねぇ…しばらく眠ってもらうだけさ」


 皮肉めいた男の物言いに対し少女は逆らう気力を削がれているためか声を押し殺しながら泣くことしかできない。


 「最初にこの村を見つけた時には格好の支配地だと思ったね。主要国から離れているし住み着いている人数も数える程しかいなかった……つまり」


 少女の周りをぐるぐるとしながら独り語り始める男は悪意に満ちた表情で右手をかざす。


 「まさにこの私の精神スキルである()()()()()の使いどころというわけさ!」


 男のかざした右手から闇に包まれた瘴気が発生し、少女はこの村が悪夢に苛まれた元凶である精神スキルを前に狼狽する。


 「あ……あぁ………」


 「始めは村中の者達を支配による悪夢で昏睡状態にさせて、徐々にこの私に服従するようにする計画だったが……お前だけは僅かばかり精神耐性があったのは誤算だったよ」


 自分の精神スキルに絶対的自信があったのか、悪夢による効力が完全には及ばなかった少女にやや不満を見せる男。


 「まぁそれもお前だけなわけだしな。お前が()()()()()()()()()()()()()今この村で悪夢にうなされている住民達は生かしといてやろう」


 少女に余計な画策を行わせないように語気を強め睨みつける男。


 今の少女にそのような抵抗等できるはずもないが、その考えすら許さないと男に脅迫され少女は絶望に苛まれることしかできない。


 「うぅ……」


 「そうがっかりする必要はないぞ? これからは()()()()ここの村長になっただけのことなのだから。住民達も日が経てば以前のように暮らし始めるさ……」


 もはや少女にとっての()()となった男は話の続け様にこれまでの悪意ある笑みと比べものにならない顔を浮かべる。


 「()()()()()()()()()()()()でねえぇぇ!!! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」


 暗がりに包まれる小さな村は悪夢という見えない闇に飲み込まれようとしていた。


 ―――しかしながらその村に今まさに真なる支配者が近づいていることに男と村に残されたただ一人の少女は気づいていない。


しがまおを読んでくださりありがとうございます!!


この作品を読んだ後によかったらブックマークと評価していただけたら嬉しいです!!


評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】を押していただければ出来ます!


評価して貰えるだけでものすご〜くモチベーションに繋がるのでぜひぜひお願い致します〜(*´∀`*)☆彡

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ