ふたつの月
一晩中泣いた
悲しくて泣いた
自分が情けなくて泣いた
時間を取り戻したくても
無理なことは分かっているから
もう一度、泣いた
泣いたところを見られたくはないから
泣く前のわたしの姿を思い出したけど
残念なことに
その姿は涙に流されて
思い出せない
1時間前も泣いていた
5時間前も思えば泣いていた
あなたは
わたしに優しかったから
本当は
わたしのこの涙は
嘘にしてほしい
わたしのなかで嘘になったとしても
あなたの前では
嘘にはならないこと
分かっているから
だから、
わたしは
あなたのやさしさを
思い出に変える
変えるまでは
時間がかかる
泣いた時間分
それ以上に
もっと、かかる
わたしのこころのエンジンは
たぶん、当分は
かからずにいるけど
仕方がないね
じゅうぶんな恋ができなかった
ありふれたやさしさにつつまれて
恋をあたためることを
おろそかにしていたこと
たぶん、同じ月を見ていても
何か違って見えた
違っていても
お互いに語らずにいた
月がふたつ
現れていれば
お互い、違って見えたとしても
そのまま
通りすぎていったのに
だけど
そんなことは
無理な話だから
今はただ
月が見えない
朝の時間が過ぎても
考えている