7話 王宮生活➂
食事を終えた私たちは、サムエル様がこのあとは特に予定がないと仰いましたので、私の提案により庭園内を散歩することになりました。
初サムエル様と夜のお散歩ですわ! 素敵! サムエル様すごい! 月や星より輝いていますわ! 昼間は太陽より輝いていますから当然でしたね!
「本当に離れる気がありませんのね」
わしづかみにされた腕を一瞥して一言。もう可愛いですわね。
そんなに私のことがお好きですのね。サムエル様ってば可愛らしいところもありますよね。
「だから言っただろう。君は俺のことが嫌いだからその嫌がらせにずっと一緒にいてやるって」
? ああ! なるほど。サムエル様ってば、よほどご自分に自信がございませんのね。きっと私が社交辞令でお慕いしていますって伝えていると感じてしまっているのですね。これは私の愛でわからせないといけませんね。
ああ、なんてことでしょう。つい護ってあげたくなってしまいます。こんなにも見た目がかっこいい方の内面が、ここまで可愛らしいだなんて聞いていません。
はぁ、キュン死。キュン死カウンター作りましょう。はいカンスト。
「君と庭園を歩くことになるとはね」
「? 私と歩くと何かあるのですか?」
「いや、池に落とされるんじゃないかと不安になるよ」
「この庭園にも池がございますの?」
我が家の庭園には池がありますけどね。それとも広すぎてどこかに池があるのでしょうか?
何しろ王宮の庭園はこないだのお茶会で初めて足を運んだものですから。つまり今日は二度目。広い庭園を全部把握などしていませんわ。
「いや、気にする必要はない」
「ふっ。ご自分で口を滑らしておいてよく言えますね。わざととしか見えませんよ? 構ってちゃんも大概にしてほしいですわね」
わざと口にして構って欲しかったのですのよね? わかっています。貴方のローズは完璧に理解しています。ただ控えてください。サムエル様の構って構って攻撃は、ローズにクリティカルヒットです。
「……なんなんだ君は。ああ、そうだ。やはり君は一度池に落とそう。そう思ったんだ」
「え?」
何か会話が成立しませんね。それともサムエル様女性を池に落とす趣味が? いけません! それはいけません! 矯正しなくてはいけませんわ! 一国の王子がそれはまずいです!
「あっ、あっ! ああああ! あり得ませんわ!! 何を考えていらっしゃいますの! 最低です!!」
「うっ! あ、えっとすまない。今のは俺が悪かった」
「あら? ちゃんと謝れるじゃない? 偉い偉い」
「くっ」
はあい。もう可愛い。可愛い可愛い可愛い可愛すぎます。私のサムエル様こんなにも内面が可愛らしい方だったなんて益々好きになってしまいましたわ。
「君のことはよくわかった。本当に君は俺のことを子供か何かのように扱うな」
子供か何か? 我が子のように扱う? ん? 我が子ってことは当然愛しく思う? これですわ! 違いありません!
「そうね。その認識で間違っていませんよ。子供を扱うように接しています」
「このっ」
この? おかしいですわね。全く理解できませんわね。もしかして鳴き声かしら? もう! キュン死カウンター二個目カンスト! 何してくださるんですか!
「とにかく君を二度と池には落とさない。約束しよう」
「……? ええ、当然です。わざわざ宣言する必要があることとは思えませんけどね」
二度と? 言い間違いかしら? 自信満々でかっこつけたのに可愛い凡ミスですね。でも大人なローズは黙ってますよ。だって可愛い可愛い私のサムエル様の自尊心を傷つける趣味なんて御座いませんもの。
「君は星は好きか?」
「星? いえ、どちらかと言えばもっと輝くものが好きです」
言えた? もしかして今サムエル様のことが好きですって言えました? ふふふ、散々キュン死させられたのです。あなたもキュン死なさい?
「月か?」
あら? まあ、そうですよね。これはさすがに私の伝え方の失敗ですよね。
「もっと輝くものです。いつか答えにたどり着けると良いですね」
「まさか金品宝石?」
「……まあ、それも好きですけど。サムエル様にはまだ早かったですね」
「どういう意味だ!」
「ご自分でたどり着いてくださいと仰いましたが? もうお忘れで?」
楽しい。すっごく楽しいですわ。サムエル様とこんなにも談笑できるだなんて。政略結婚様様ですわ。公爵家に生まれて良かったこと一位更新です!
ちなみに元一位は宝石を買い与えて頂けることです。……私宝石好きですね。
「君がそういう女ということはよくわかった。そのうち理解しよう。全く……なんでこうなるんだ」
私のことを良く分かってくださったのですか? はあいキュン死カウンター残り全部爆発。カウントは死に直結しますのでもうやめます。
この小説ラスト以外決まっていませんので要望とかあればお聞きしますよ?
今回もありがとうございました。