6話 王宮生活②
夕食の時間になってしまいました。王族の仲間入りしていますが、国王陛下や女王陛下は今日は別々でお食事を取るそうですので、私とサムエル様二人きりになるそうです。
ただいま、サムエル様に腕を掴まれたまま食堂に向かっているところです。
「いつまで腕を掴まれているのでしょうか?」
さっさと手を握ってくださいません? まあ、直接触れるのが恥ずかしいのであればこれで許して差し上げますわ。
「君にはこれで十分だろう? 逃げ出されても困るからな」
逃げ出す? いえ、そのようなご予定は御座いませんが、もしかして私が突然心変わりすることを恐れて離すことができませんのね。
「女性の扱い方も知らないのかしら?」
腕を離す程度でサムエル様から離れる女性なんて御座いませんのに! 女性のことをよくご存じないのですね! 良いですわ! ローズが生涯をかけて教えて差し上げます!
「知らなくて結構。君さえ繋ぎ止められれば、俺が女性の扱いを覚える必要はないんだ」
「では上手に繋ぎ止められると良いですね」
ふぉお!? なんですその告白!? え? 嘘? ホント? いっやったぁー!!
「逃がすつもりはない。今の所君にも思惑があるのか何か知らないが、逃げる気配もなさそうだがな。……それには安心している」
「……? 思惑?」
私の思惑? サムエル様に抱っこしてもらうこと? サムエル様とデートすること? サムエル様に頭を撫でて貰うこと?
「思惑くらいありますわ。そうね、互いに利害の一致でいれれば問題ありませんね」
「……そうだな」
サムエル様は私に何を求めているのでしょうか? 子宝? まあ、王族であればそれは当然ですよね。でもそれって私である必要がありませんし……?
そんな夫婦水入らずの会話をしていましたら食堂についてしまいましたわ。
「君はここだ」
「そう」
二人きりの食卓。かなり広い空間でしたが、私はサムエル様のすぐそばに並んで食事をすることになりましたわ。
「本当に逃がす気がないんですね」
「君が逃げ出すことはないと思うが、万が一は考えておこうと思ってね……君は僕が嫌いみたいだからね」
「嫌い?」
「ああそうだ。君の言動から感じる俺のことを小ばかにするような発言。嫌いでなければ何というんだ?」
心当たりが? 常にお慕いしていたような? はて? うーむ? わかりませんね。ですが、サムエル様にはそのように受け取られたという事実は変わりませんね。
「いえ、私はサムエル様のことがす……」
好きですよって言おうとしましたが次の文字がなぜか発音できません。
全身から汗が噴き出るような感覚。何故ですか?
「す……えっとですね。こちらの前菜はどちらの料理でしょうか? 南部地域で見られる郷土料理のように見受けられますが?」
「おい! 今何か俺がどうとか言っただろ? なんだ? おい!」
サムエル様が食事中だと言いますのに私の肩を掴んで揺らしてきます。
いえ、私も言いたいのですよ? え? なんで? 好きっていうだけですよ? あと肩に触れてくださりありがとうございます。あ、肩の出ているドレスを着てくれば良かった。
「別になんでもいいじゃないですか……それとも言わせたい言葉でもありましたか?」
あら? 今度はすらすらと言葉が出てきますわ。なによもう。
「君はやはり俺のことを小バカにするのが好きみたいだな」
もしかして私って今好きっていうのが恥ずかしくて言葉すべて飲み込んでしまいました?
いえいえ、そんなはずありませんよね。あと、サムエル様のことを小バカにするつもりなど御座いません。
「被害妄想も大概にして欲しいですわ」
私はこんなにもサムエル様をお慕いしているのです。小バカにするわけ御座いませんもの。
「その発言が既にそう感じてしまうが。君のいうことに一々突っかかるのはやめよう」
「あら。返す言葉も思いつきませんか」
そうですかそうですか。素晴らしいものと出会った時に言葉で表現できないとかそういう状況なのかしら? サムエル様ってばそこまで私のことを素晴らしいと感じてしまうのですね。
もしかして私が好きと言えないものサムエル様が素晴らしすぎて好きという言葉で済ませたくないのですわ。きっとそうよ!
言おうと思って全身鳥肌が立って汗がぶわっとでる感じがして心臓ばっくんばっくんになるあれはきっとそうなのよ!
あー! 答えがわかるとすっきりしたって気持ちになるわね! 超気持ちい! わかってしまえばなんてことはないわ! いつか相応しい言葉が思いついてその時に伝えればいいのよ。だって私たちは仲睦まじいおしどり夫婦なのですから!
ローズちゃん頭大丈夫かな?
あ! 評価頂きました! 文章3ストーリー3ありがとうございます!
平均レベルはあるってことなんですかね! 嬉しいです!
今回もありがとうございました!