5話 王宮生活①
さてと……お部屋に戻られたサムエル様のとこにはいつ頃出向いて宜しいのでしょうか?
ナウ? ナウ? ナーウ? 少々気が早すぎますよね? サムエル様にもご予定があるはずです。
私を可愛がる以上に重要なご予定などあるのでしょうか? ……いえ、一国の王子ですからね。そんな円満夫婦をずっとできませんよね。
「ですがやはり一度くらいは触れてくださっても」
正確には腕を引っ張って頂いたのですが、あれはあくまで案内する為。
手を握って欲しかった。頭を撫でて欲しかった。欲を言えば、力いっぱい抱きしめて欲しかったのですが。
「公務をされていますのでしょうか? 見学とか……見学。そう! それよ!」
私はサムエル様の部屋と繋がっている扉に耳を近づこうとしますと、その扉が勢いよく開かれましたわ。
「ちょっと! ここは私の部屋ですよね? レディの部屋に許可なく入るのは宜しくなくてよ!」
心の準備ってものがあるでしょうが! 嬉しくてキュン死したらどうしてくれるんですか! ノックされてもキュン死しますけど!
私に注意されたサムエル様が少々驚いたような表情をしていますが、しばらくして悪かったと呟かれましたわ。
「それで何か用がおありで? 忙しいのではなかったのですか?」
忙しい中わざわざこちらにいらっしゃいましてありがとうございます。サムエル様のお顔を拝見できるだけでローズは幸せですよ。
「要件はある。君は少々俺のことが嫌いみたいだからな。嫌がらせに今後用がない限りは俺から離れることを禁ずる」
「……?」
えっと? 嫌い? 聞き間違いよね? それとも言い間違い? とにかくサムエル様と常にご一緒しろってこと? え? キュン死で済みますの?
「それは困りますね。死んでしまいそうです」
「そうかそうか。まあ、本当に死ぬ訳ではなかろう。それくらいの気持ちになってくれるなら結構だ。こっちにこい」
キュン死しろと。そしてまた強引に腕を掴まれましたわ。これ部屋分けした意味あるのかしら? まあ、常にサムエル様の部屋にいていい訳ではないでしょうし。
サムエル様が公務用の机で作業している間。私は来客用の机に用意された紅茶を頂いています。
「私は何をすれば?」
「この部屋から出なければ何をしていても構わん。この部屋には一部の国家機密こそあるが、君は次期王妃だ。この部屋に置いてある程度のものなら、君が閲覧しても問題ないだろう」
そういわれてしまい、辺りを見渡すと大きめの本棚がございました。あちらの資料のことでしょうか? えーっと……? うん! 多分だけど私理解できない!
何をしていても構わないと言われましてもさすがにサムエル様のお邪魔になることはできませんよね。
困りましたわね。お膝の上に座りたい。お邪魔にならないかしら?
「さっきからこちらを見ていてどうした?」
「邪魔かどうか考えていただけ」
「邪魔? 俺がか?」
そうねぇ。サムエル様が邪魔って思うかどうかだしあっているわよね。
「勿論ですわ」
「ここまでくると本当に腹立たしいな」
腹立たしい? まさか私が悩んでいるという現実に対して、憤りを感じていらっしゃいますのね!
そこまで私のストレスに対して配慮してくださるなんて素敵。今日はキュン死日和ね。
「そのお言葉だけで結構です」
「!? 君は俺が腹立たしいと思っていることが嬉しいのか??」
「はい! とても喜ばしいですわ!」
私が素直に返事をすると、サムエル様はあまり気分の良さそうな表情をされませんでしたわ。何か間違えてしまったのでしょうか? まさか、淑女らしからぬと判断されてしまったのでしょうか?
次からは落ち着いたお返事をしましょう。
「邪魔だとかそういうのは一切気にするな。君にどうこうできる問題ではない。自分の不運を恨むんだな」
「つまり、気にするなと仰いますのでしょうか?」
それはお膝の上に座ることを許可して頂いているということでしょうか?
「では遠慮なく。失礼しまーす」
私はサムエル様のお膝の上にお行儀よく座りましたわ。
「はぁっ!? おいローズ! どういうつもりだ!!」
今ローズとお呼びになってくださいました!?
「邪魔かどうか気にするなと仰られましたので。私のしたいようにしているだけですわ」
「君には俺が椅子に見えたのか? とにかく邪魔だ! どけ!」
「邪魔かどうか気にするなと仰ったのはサムエル様ですわ。私はそのお言葉を信じてみただけですのに」
変ね。ここはぎゅっと抱きしめてくださるつもりでしたのに、やはり淑女らしからぬ行動は控えた方が好感を持っていただけるのかしら?
しかし、めげない私はそのまま座り続けたため、サムエル様もそのまま私を膝の上にのせて公務を続けましたわ。
今回もありがとうございました。
え? この作品こういう方向性で大丈夫です?