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2話 慈愛②

 何ですかこの方。この国の王子様? え? 嘘ですよね? 人間がここまで美しい訳ありませんわ。彫刻とか絵画とかもっとこう芸術作品が動き出しているのです。


 これは芸術。あなた様芸術なのです。


「初めまして、サムエル・エル・ディ・カーリアムです」


「え……あ、ローズ・カーン・ラプラスよ。ラプラス公爵閣下の娘ですわ」


 私は何故自国の王子に向けて偉そうな態度を!? いえいえいいえ。違いますわ。これは偉そうな態度とかではなく……あ、これは挨拶です。……態度関係ありませんね。


 その後、お茶会での出来事が一切頭に入ってきませんでしたわ。サムエル様の声色までは頭に残っていますが、サムエル様のお言葉が脳みそを焼き切ってしまいましたわ!! 何もわかりません!


 ヘルプ! 助けて! イケメンが私の頭の中を白い絵の具で塗りたくってくるの!!


「ローズ嬢は随分強気な方なのですね。凛々しくて素敵だと思います」


「凛々し……女性をただ褒めれば宜しいとお思いですか? 発想が貧困なのですね」


 私を凛々しいだなんて、それって好印象ということで宜しいのでしょうか? ああ、できれば可愛らしいなどもっとシンプルで単純なお言葉の方が喜ばしかったのですが、ですがこのローズ、サムエル様に褒められてしまい天にも昇る気分ですわ!


「貧困……すまない君のような女性を前にしてしまい少々緊張してしまったようだ」


「ふっ、王子でありながら一公爵令嬢如きに堂々とすることもできないだなんて」


 それはなんとまあ、可愛らしい一面ですわ! あらあらあら! 私を眼前にして、普段通りのふるまいができないのですよね? あんなにもお美しく素敵なサムエル様が緊張なさっているだなんて……こんなにも可愛らしいのですね。


「き、君はよほど俺のことがきら……いや、今は茶会の場だったな。別の機会にしよう」


「ええ、そうしてください。その話題は今は相応しくありませんわ」


 そう、綺麗なお花畑とか、心地よい風が吹く緑一杯の王宮の庭園とか。王妃様のために作られたバラ園とかそういう場所ですべきよ! 私への告白なのでしょう!!


 きらって何かしら? 煌びやか? ええ、サムエル様は煌びやかに見えますわ。むっはー! これって私とサムエル様は以心伝心ってことで宜しいのでしょうか!


 そして楽しかったお茶会がすべて終わった後ですわ。私は王妃様に名指しで呼ばれてしまいましたわ。何かしら?


「ローズ嬢、楽しんで頂けたかしら?」


「えと……はい! 大変有意義な時間でしたわ」


 普段は私より身分の低い方々か家族に囲まれているせいで、王妃様相手に話すのってとてもドキドキしてしまいますね。


 勿論、先ほどのサムエル様との会話もドキドキしていましたが、今はあの時ほどはドキドキしていませんね。その、サムエル様は目の前にいらっしゃいますと、まともな返事ができそうにありませんでしたので……


 その後は王妃様から何回か質問され、それをなるべく笑顔で受け答えするように努めましたわ。お相手は王族の方。なるべく失礼のないようにしないといけませんものね。


「ありがとうローズ嬢。あなたのことが大体わかったわ」


「こちらこそ、王妃様とお話できて光栄でしたわ」


 一礼をし、その場を去りましたわ。去り際にふと視線を感じまして、そちらを見ますと、どうやらサムエル様がこちらをじっと見ていらしましたわ。


「サムエル様? どうかなさいましたか?」


 このような場所に佇まいますと、美術品が乱雑に置かれているみたいになってしまいますよ?


「いや、君と母上が話していると聞いてね。何を話していたんだい?」


「何って? ただの世間話ですわ。それとも私が何かやましい気持ちを持って王妃様に近づいたとでも? でも残念! お呼ばれされたのは私のほうですわ」


 私と王妃様がどのようなお話をされていたのか気になるのね? そんなサムエル様に根掘り葉掘り聞かれたら、徹頭徹尾教えちゃうじゃない!


「そうですか。俺はもう行きますね」


「先ほど王妃様とお話されていました内容は……え?」


 気がつけばサムエル様の背中はどんどん小さくなっていっています。あら? 私の目の前にいらっしゃるのがよほど緊張されてしまったのでしょうか?


 まあ、今後もお話なさる機会はございますよね? え? お楽しみにしているのは私だけってことはありませんよね?


 明日から王宮に通いましょうか? お父様もいらっしゃいますし、問題御座いませんよね?

タイトル通りになるまでもう少しお付き合いください。


今回もありがとうございました。

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