15話 視察⑦
ウサギたちが入り込まないようにする? いいえ、きっとウサギたちは何者かが運んできている。
「ねえユルシュル」
「はいなんでしょうローズ様!」
「おそらくこんなに大量のウサギは用意できないと思うの。つまり毎朝同じウサギたちが来ていると考えられない?」
「そうですね。確証はありませんけどそうかもしれません。もしそうであればどのようにするのですか?」
「簡単よ。準備が必要なの。だからユルシュル、シュザンヌついてきなさい」
私は町中を歩き回り、住民たちに朝のウサギたちの追い払い方を詳しく聞いたわ。
毎朝のように訪れるウサギたちの対策は追い払いと、畑への侵入を防ぐ柵などの作成でした。
しかし、それだけではやはり対策不足。何匹かは捕まえたりしてその日の夕飯にすることもあったそうですが、そのペースではやりウサギたちの数が減る気配がありませんね。
「さてそれでは用意も済みましたし、後は明日の朝すべてを終わらせましょう」
「しかし、お嬢様。これは少々大規模すぎやしませんか?」
「大規模で何か問題ありますか? 今更素人の私が考えて思いつくものなど、既に考え着いているはずです。でしたら、思いついてもできないことを私たちがやるのです」
しかし、待つだけとなってしまったので何もすることがありませんね。
お昼まで手持ち無沙汰になった私たちは、ウサギのフン掃除を手伝おうとしましたが、ユルシュルとシュザンヌが私が作業することを固く拒否。
自らがローズ様の手脚だから問題ない。と発言し、お二人が掃除を手伝っているところをただただ眺めることになりましたわ。
そして一通りの掃除が済み、お昼になりましたわ。
「ユルシュル、シュザンヌ一度戻ってサムエル様の所に行きましょうか」
「はい!」「畏まりました」
午前中、大して頑張ったわけでもなく、何かの手柄を上げたわけでもない私をサムエル様はどう思うのかしら?
撫でてはくれませんよね。
別の視察をされているサムエル様と合流し、昼食をご一緒させて頂くことになりましたわ。
サムエル様がこちらに気付き、私の方に歩み寄ってきます。
「ローズ。まさか本当に手伝ったのか?」
「私はやろうとしましたが、後ろの二人に猛反対されましたわ」
私が残念そうにそういいますと、サムエル様は私の頭の上に手のひらを乗せましたわ。暖かくて大きい。好き。
「お前には不要な行いだ。それで問題ない」
そういわれてしまいましたが、そんなことはどうでもいい。サムエル様のお手が私の頭部にふれている。
「その手。どういうつもりなのかしら?」
もしかしなくても、私を可愛がってくださっているのでしょうか? もっとこう、ガバっとガバっと来てくださっても。まあ、そんなことされてしまいますと、私照れて昇天仕掛けますけどね。
「ほう、さすがにいくらお前でも立場をわきまえて払いのけるなどはしないか。これは面白い」
そういいますと、サムエル様は私の頭を軽く撫でてから馬車に乗り込みました。私もその後に続き、お隣に座るのはまだ緊張しますので少し離れて座りましたわ。
「ウサギたちの件。どうなるんだ?」
「明日は防げません」
「開き直ったか。見栄を張るよりずっといいが、やはりと言ったところか。別に気にしなくていい。想定通りだ……明日は?」
「ええ。明後日には解決します」
「……そうか。期待しないでおこう」
「万が一、私の作戦が成功した時は、サムエル様はどうしてくださるのかしら?」
「やはり見返り狙いか。結果次第だな」
結果次第。なでなでが最上級だとして、いえ抱擁が最上級かしら?
まさか、キス? そうね、キスよね。最上級はキス。その下が抱擁、なでなで。
その一個下くらいが国宝とかの贈呈かしら?
「楽しみね。精々報酬に似合うものを頂ければですけど」
そういってサムエル様に微笑みますと、何故か微妙に引きつったような表情と言いますか、これは……そうね、間近に私がいて緩みそうな頬を必死でこらえている顔ね。
ローズちゃん、大・正・解の予感。
そして昼食を二人で頂き、すぐにサムエル様は別の仕事に戻られることになりました。
「お前はもうすることがないのか?」
「ええ、後は明日を待つだけです」
サムエル様は私の返事を聞き、少々考えこみましたわ。
何かあるのでしょうか?
「よし、ついてこい」
「あら? 私を楽しませてくださるのかしら?」
これは間違いなくデート。視察と言う名のデート。デート。デート。デート。
私はサムエル様に連れられ、次の視察現場にお供することになりましたわ。
ローズちゃんがボケないとこの作品はボケがいないことに気付いた私は……
(そもそもコメディだけどギャグコメディじゃねえわ。気にするとこ時なかった)
今回もありがとうございました!!




