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13話 視察⑤

 朝早く起きてしまいました。連れてきたメイド赤いツインテールのユルシュル、青いサイドテールのシュザンヌに着替えを手伝ってもらっている間に昨日のことを思い出しましたわ。


「野ウサギいるのかしら?」


 連れ帰ろう。ウサギさん飼いたい。もふもふしている感じのウサギさんか、真っ白なウサギさんが良い。


「ローズ様、野ウサギは不衛生です」


「そうです、駆除が終わるまで待ちましょう」


「問題を直接見に行くことも重要よ」


 ウサギさん撫でたい。ウサギさん。ウサギさん。


「左様ですか。でしたら、我々は野ウサギがローズ様に近寄らない様に徹底させて頂きます」


「不要よシュザンヌ。邪魔になるだけだわ」


 野ウサギが近づいてこないなんてダメに決まっているじゃない。


「ローズ様! いくらローズ様が近寄りがたいからって野ウサギはそれをわかってくれるとは限らないのですよ!」


「近寄り……え? まあ、それはさておきわかっていなくても結構よ。これから知って貰うのですから」


 そう、私がウサギさんに対して友好的であることを!


「流石ですローズ様。威圧なさるのですね」


「ローズ様がそうおっしゃるのでしたら、私達にはもう止められません」


 何か私が思っている反応と違いますような……何故でしょうか? 私がおかしいのでしょうか? まあ、いいでしょう。


「そういえばサムエル様はどちらに? 起きたらベッドにいらっしゃらなかったのですが?」


「え? ローズ様サムエル様と同衾なさっていたのですか?」


 何故かユルシュルが期待の眼差しで私を見つめます。シュザンヌもじーっと見てきました。


「いえ、サムエル様はあちらのベッド。私はそちらの長椅子で眠りましたわ」


「は?」


「今なんと?」


 私が昨晩のことを説明しますと、ユルシュルもシュザンヌも呆れたような表情になっていましたわ。


 しかたないじゃない。私、あの時本気で緊張していたのと、同衾する勇気もありませんでしたもの。


 遠くでひそひそとユルシュルとシュザンヌ様が喋っています。それ、私の前でやっちゃダメですから? 寛容な私だからお許ししますが。


「まあ、いいですわ。貴方たちがついてくることはお許しします。私に何かありましたら、お困りになるのでしょう?」


「はい! ありがとうございます!」


「勿論、ローズ様のお傍から離れません」


 それは邪魔。でも彼女たちのお仕事なのよね。


「精々、私の邪魔はしないでくださいね」


 着替えが終わりますと、私の後ろにぴったりとついてくる私にはもったいないくらい可愛らしいメイド達。


「そういえば朝食はどうしましょうか?」


「野ウサギが現れたのを確認してからでも遅くはないわ」


「畏まりました」


 さてと、どれほどの野ウサギパークになっているのやら。


 お屋敷を出てみると、辺り一面野ウサギの絨毯が完成していました。


「何よこれ」


 想像していたのは精々そこら中に野ウサギがいる幸せ空間。ですが、これはもう絨毯。野ウサギの絨毯。足の踏み場がありません。


 野ウサギたちは茶色や灰色のものでウサギにしてはやや大型。稀に白いウサギもいらっしゃるので一種類だけという訳ではなさそうですね。


 私は早速足元にいる大きめの茶色い野ウサギに手を伸ばそうとしますと、ユルシュルが素早くその子を抱える。


「危険ですローズ様!」


「へえ?」


「ひぃ!? いえ、ローズ様に何かあってからでは困るのです」


 今この子、何故恐怖の表情をしたのかしら?

まさか危険危険と言っているのは、ユルシュルが野ウサギを怖がっているから? ではないですよねさすがに。


 ユルシュルが抱きかかえている野ウサギの頭を撫でようとすると、今度はシュザンヌが私の手を停める。


「何か?」


「申し訳ありません。ですが先ほども言いましたように野ウサギは不衛生です。……もしかしてローズ様。野ウサギをおさわりになりたいというのですか?」


「初めからそのつもりでしたが?」


 私がそう言いますと、ユルシュルもシュザンヌもえ? という声を漏らし、目を見開いています。何故でしょうか? 何故なのでしょうか?


「もしかして、私にウサギは似合いませんか?」


「いえ、そのようなことは」


「断じて……我々は、我々は……」


 少し怯えるような二人。そしてお互いが見つめ合い。何かに気付いたような顔をされます。そして私の方をじっと見つめますと恐る恐ると言った雰囲気でユルシュルが声を出しました。


「ローズ様。もし私共が一匹確保してその野ウサギを綺麗に洗いしつけもできましたらその野ウサギを飼っていただけますか?」


「何を言っているの?」


 そんな素敵なアイディア。採用に決まっているじゃない。もうあなたってば本当に優秀なのねユルシュル!


「ひぃ!? ごめんなさい」


 あれ? おかしいわね。今、なんでユルシュルは私に謝ったのかしら?


 その後、何故か野ウサギを逃がしてしまったユルシュルを見て少々悲しい気持ちになりましたが、とりあえず 朝食の為に一度お屋敷に戻りましょうか。


今回もありがとうございました。

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