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12話 視察④

 視察先での初日はあっという間に過ぎてしまいましたわ。日中移動していましたし、当然ですよね。


「あら? 私とサムエル様は同室なのですね」


「ああ、悪かったな」


 悪かったな? いえ、そんな滅相もありませんわ。むしろ普段は別室ですので、ローズ

はとても喜ばしいのですが、何故伝わっていませんの?


 よくよく思い返せば、私の好意って伝わっていますのでしょうか? いいえ、伝わっているはずです。だって、私達相思相愛なのですからね!


 はっはーん。さてはサムエル様、照れて思っていることと違うリアクションをされていますのね。可愛らしい方です。


 そういう風に考えてみれば、眉間におシワを……つまり、恥ずかしさの頂点。それがそういう時のご表情ってことなのですね。貴方様の可愛いローズはちゃんと覚えましたわ。


「どうしたんだローズ。不自然に目を吊り上げているぞ」


「いいえ、しかと覚えましたわという表情です」


「そ、そこまで領主のことを恨むことはないだろう?」


 ? そこまで領主のこと恨む? はて? なんの聞き間違いでしょうか? もしかしてですけど、羨ましいと思うことの聞き間違いなのではないでしょうか?


 これならば頷けます。ええ、晩餐の時の領主夫妻と来たらなんとも仲睦まじい様子。間違いありませんね。聞き間違いでした。


 ああ、これほど羨ましいことはあるでしょうか! いえ、私とサムエル様だって負けていませんけどね。全然負けてなんかいませんけどね!


「ええ、今度は負けませんわ」


「お前まさかこんなことで仕返しでもする気か?」


「ふふ、あらやだサムエル様、何を仰っているか、まるで意味がわかりませんわ。ふふふふふ」


 いえしかし、仕返しってどういうことでしょうか? いつの間にそんな恐ろしいお話になったのでしょうか。全然わかりませんわ。


 とにかく笑っておきましょう。愛嬌一番ですわ。意味が分からなくともサムエル様からのお言葉です。笑え私!


「君は本当に怖い女だな」


「あらやだ。今のは聞き間違いではなさそうですわね。ですがサムエル様、言い間違えていますわ。ローズは可愛い女、で違いありませんよね?」


「そうだな。君は黙っていれば可愛い女だな」


 それはつまり、喋っている時は聡明で美しいということなのでしょうか? 嫌ですわサムエル様。照れすぎて縮こまってしまいそうです。


 ふと用意された寝室内を見ますと、キングサイズのベッドが一つだけ置かれていましたわ。


「あら、ベッドはおひとつですね。当然、おわかりですよね? サムエル様」


「ああ、それで構わん。好きにしたまえ」


 やりましたわ! 婚約してから初同衾ですわ。そう思っていますと、サムエル様がなぜか長椅子に横になってしまいましたわ。はて?


「サムエル様?」


「ああ、君がベッドを一人で使いたいんだろう?」


 まあ、なんとお優しいのでしょう! ですがこのベッドは二人眠っても無理のない大きさ。それでさえも私お一人で使っても良いという計らい。さすが私のサムエル様です。今日百回目の惚れなおしですわ。


「まあ、お優しいのですね。ですが王子がベッドで眠らないのに、私がベッドで眠る訳には行きませんわ」


「そうか、では君には悪いがこの長椅子を使ってもらおう」


 え? もしかしてですけどサムエル様ってまだ私と同衾することに対して心の準備ができていらっしゃらないというのですか?


 そうですかそうですか。残念ですが仕方ありませんわ。そういうことでしたら……


「仕方ありませんわね。私はこちらで結構ですわ。どうぞその広々としたベッドをお一人でごくつろぎくださいませ」


「あっ、ああ」


 サムエル様が先ほど横たわった長椅子に横になりますと、ほんのりと感じる温もり。先ほどまでサムエル様がいたことを感じますと、心地よいような寂しいような。


「では、お休みローズ」


「ええ、おやすみなさいサムエル様」


 長椅子の上は狭く、とても寝にくかったですが、幸い寝相は悪くない私。落ちることなく眠ることができましたわ。


「ほんとにいいんだな?」


 寝静まる直後、サムエル様のお言葉が聞こえたような気がしましたが、長時間の馬車の移動で疲れ果てた私はそのまま眠りについてしまいましたわ。

何か希望とかってあったりしますか? 

このままで良ければ突っ走りますよ?


今回もありがとうございました。

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