表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/31

1話 慈愛

「私、ローズ! ローズ・カーン・ラプラスっていうの! 貴方は?」


 金糸きんいろのいとのような細く綺麗きれーな髪をしている少年おとこのこは、お母様の胸元くびのしたにつけている蒼玉きれいないしにも負けず劣らずの蒼いおめめで、私のことを見つめてきました。


「僕は……サムエル」


 私は、彼をとても素敵かっこいい少年おとこのこだと思い、少年おとこのこの手を引いて新緑みどりいっぱい庭園おにわを駆け回りましたわ。


「ローズ! ローズ!」


 少年おとこのこは何度も私の名前を呼び、呼ばれることが嬉しくてつい走るペースを上げてしまいましたわ。


 そして私とサムエルは、池に落ちてしまいました。


 しばらくして目を覚ますと私は、午前中おひるまえ記憶おぼえていたことをすっかり忘れてしまいましたわ。


 耳に届いた一緒に遊んでいた子は、すぐにおうちに連れ戻されてしまったみたいです。



======



 そんな幼い頃から十年の月日が経ちましたわ。何故池に落ちたことを今更ながら思い出したかですって? それはですね。池に落ちたからです。


 この私が池に落ちたのです。何故か知りませんが、その急に重心が前の方に来てしまいまして……ね?


 当時のことはあまり良く覚えていませんが、幼い頃に池に落ちたことだけはなぜかはっきりと覚えていますのです。その時にどなたかと遊ばれていたそうですが、その人もすぐにご家族がいらっしゃったようで、帰られてしまいましたわ。


 恥ずかしい過去を知っている方がどなたか存じ上げませんが、その話を蒸し返したくない私は、その人が誰か未だに聞けていません。まあ、過去のことです。


 池から救出され、自室で一度湯浴みをさせていただきました。それから着替えを選ぼうとなった時でした。午後からの予定の為今のうちにドレスに着替えようということになりましたわ。


 今日は王宮にある庭園でお茶会を開かれますのよね。主催は王妃様でして、そこには伯爵家以上の十代の若者が招待されているそうです。


 私も一応公爵令嬢ですので行って差し上げましょう。王妃様から招待状を受け取った以上、これは命令のようなものですわ。


 専属メイドであるテレサに、お茶会に着ていくドレスを相談したところ、やはり私の銀髪に似合うものが良いと言われましたわ。それを決めるのがあなたの仕事でしょ?


「赤とか?」


「お嬢様に赤いドレスですか? うーん」


「……だめ? でしたら……この黒いドレスは?」


「いえ、今日はこの蒼いドレスにしましょう!」


 彼女が私に見せるように広げた蒼いドレスは、何かを想起させそうな感覚が脳を襲いました。何故でしょうか、もう少しで何かを思い出せそうな感覚でしたわね。


「まあ、いいわ。それにしてちょうだい」


 とにかく、私のメイドが選んだドレスです。彼女のセンスに間違いなどありませんわ。信じましょう。自分の大事なメイドですもの。


「どうでしょうか?」


「……まあまあですわね」


 何これ? 本当に私って可愛いわね。ああ、惚れ惚れしてしまいます。このまま一日中、鏡を見ていても飽きる気がしません。さすが私のメイドです。テレサ大好き。


「お気に召されたようで何よりです」


「そうはいってないでしょう?」


 いえ、いえいえ確かに口にしていませんが、その……大満足でしてよ? テレサのこと抱きしめてもいい? はぁ、控えめに言って大好き。


 馬車に乗り王宮に到着。王宮内ではたくさんの貴族令息令嬢がご挨拶を交わし合っていますわ。私も参加致しませんと。


「ローズ様!」「ローズ様! 御機嫌よう」「あらローズ様! 今日もお綺麗ですね!」


 私に気付いた令息令嬢たちが次々とご挨拶をしてきます。我が国は小国の為、公爵家以上の人間はそうそういらっしゃいません。つまり、私は今この庭園内で王族の次に地位の高い人間となります。


「皆様、相変わらずのようで何よりです」


 一度にたくさん集まってきた彼ら彼女らを一人一人丁寧にお相手したいところですが、この様子では無理そうですわね。


 皆、私に気に入られ、そのまま公爵家に気に入られることを狙っている方々でしょう。服の装飾品は派手すぎますし、正装であるのにけばけばしい。身の丈に合わない服装それは、少しでも上の身分の方々に合わせようとした結果のミスマッチなのでしょう。


 もしテレサがこの光景を見たら、阿鼻叫喚する姿が想像に難くないですわ。まあ、良いですけど。


 王妃様は離れた大きな席に座り、そのテーブルに対して縦長のテーブルが一つ接地されています。設置された縦長のテーブルに左右に並べられた椅子。


 時間になったことを王宮の官僚が皆に伝え、各々、指定された場所に着席致します。身分の高い者から並べられるような座り順のようですわね。つまり、この正面の空席は王族。王妃様があの大きなテーブルであると考えますと、こちらに座られるのは王子殿下ということになりますわね。


 私の年齢はぎりぎり社交界デビュー目前の16歳。王族との謁見は幼い頃にあったみたいですが、よく覚えていません。まあ、もし正面に座る方が初対面でなかったとしても、問題ないでしょう。


 どうせ向こうも覚えていないのでしょうから。いえ、覚えていらしたのでしたら、その、えっと、いえなんでもありません。そもそも私が覚えていないのです。


 第一本当にお会いしたことがあるかどうかすら……


 そのようなことを考えていますと、王子殿下がいらっしゃいましたわ。さてさて、どのようなお顔なのでしょうか。


 私は王子殿下の顔を拝見致しますと、金糸きんしのような細く綺麗な髪をしている青年は、昔はお母様がよく胸元につけていた蒼玉サファイアにも負けず劣らずの蒼い瞳で、私のことを見つめてきました。


簡易登場人物紹介

名 前・ローズ・カーン・ラプラス

身 分・ラプラス公爵家令嬢

容 姿・銀髪ロングストレート。紫紺の瞳。背丈は150cm前後

年 齢・15歳

個 性・素直な言葉が出せない

趣 味・デッサン

初登場・1話「慈愛」


初めまして! あるいはいつもありがとうございます!

大鳳葵生おおとりあおいです。


今後とも宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ