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41話 お前がギャル?

 放課後の地底探検部。

 部室内では部長の葵 月夜(あおい つきよ)が、夏野 空(なつの そら)倉井 最中(くらい もなか)にそれぞれ与えた任務について報告を受けていた。

「月夜部長! この『丸のみ温泉』に決めました! 駅からバスで30分、複合型でイートインの他に飲食店が3店舗、くつろぎスペースや物産館もあります!」

 夏野がスマホをかかげて説明する。画面に映る施設の様子に葵と倉井は、おおぉーーと感心する。

「よし! それでいこう! ありがとう空君! さすが副部長!」

 握りこぶしで葵が褒める。“さすが副部長”って何? 疑問に思いながらも夏野は喜んだ。

 葵は倉井に目を向けた。

「さ! 次は最中君の番だ!」

「はい! 岩手先生は笑顔で二つ返事でした! とても楽しみと言ってました!」

「おおっ! 素晴らしい! 難しい任務をよくやり遂げた! ありがとう最中君!」

「はい!」

 葵は倉井の頭をなでて喜んでいる。ついで夏野も頭を出してきて同様になでられていた。


 そこにドアをバターーン! と豪快に開け、誰かが叫びながら入って来た!

「おらぁあ! 聞いたぞ! ここに強ぇえーギャルがいるってなぁあ!」

 キャッキャしていた3人は驚いて目を向けると、そこには長い黒髪で顔には白マスクの黒いパーカーを着た女生徒が立っていた。

 スカートがありえないほど長い。足首近くまで伸ばされたスカートから、ちょこんとつま先がのぞかせていて、片手には潰れたカバンを肩に掛けている。

 し、昭和? 夏野は懐かし映像のドラマで見た不良に似ているなと思った。

 葵は回りを見渡し女生徒に聞いてきた。

「ドッキリかな? カメラはないぞ?」

「そんなわけないだろ! あたいは聞いたんだよ! この学校で一番強いヤツを! したら、この部にいるギャルが最強って聞いたんだよ!」

 女生徒が怒鳴り、ギロリと(にら)むと夏野に向けて指を差した。

「お前だな!」

「は!? わたし?」

 夏野は自分を指して驚く。

 ……確かに月夜部長と会うから、毎日おめかしして学校に来ているけど、まさかギャルに見えるの? 夏野は自分の容姿に自信が持てなくなった。最近、月夜部長に合わせるようになったから? あまり気にしていなかったが影響も否定できない。夏野は悩みだした。

 その横で葵はガックリと膝をつく。

 急に崩れ落ちた葵を心配した倉井が声をかける。

「大丈夫?」

「最中君、わたしのハートはビッグバンだよ……。何でこんなにギャルギャルしているのに、そう見えないんだ……」

 あー、と倉井は納得した。最近はすっかり慣れ親しむようになったが、初めて見たときは怖かったことを思い出した。


「お前ら聞いてるのか!?」

 すっかり置いてけぼりの女生徒が叫んだ!

 ハッと気がついた夏野はツカツカと女生徒に歩み寄り、語気強く迫る。

「ちょっと! なんでよ!? おかしいでしょ? 指さすなら月夜部長でしょ!? 見て分かるでしょ!? どう見たらわたしになるわけ!?」

「え…ちょ、ま、まてよ!」

 あまりの剣幕にタジタジとなる女生徒。先ほどの勢いはどこへやら、冷や汗をかいてジリジリと後ろにさがる。

 プリプリ怒る夏野は言いたいことをいうと長机へと戻っていく。

 そこに、なんとか立ち直った葵が声をかけた。

「みかけない顔だが、君は誰だい? わたしはこの“地底探検部”部長の葵月夜だ。今、激オコ中の彼女は空君、それと最中君だ」

「昨日転校してきた2年B組、冬草 雪(ふゆくさ ゆき)! この学校の番長になるため、シメに来た!!」

「な…なんだと!? 同じクラスだとーー!」

 違う意味で衝撃を受ける葵。昨日、転校生なんか来ていたっけ? 自分の記憶をさかのぼるが、まったく情報が出てこなかった。

「月夜部長! なんで知らないんですか! 同じクラスでしょ!」

 たまらず夏野が怒鳴る。お互い知り合いなら、先ほどのギャル疑惑は無かったはずだから。

「すまん、空君。これが全く記憶にないんだ。雪の姿なら見間違いはしないはずだが」

「もう! ちゃんとしてくださいよ~! とんだとばっちりです、わたし」

「ごめんよ~。今度、お詫びにプリンを買ってくるよ~」

「やった! ならいいです!」

 機嫌を直した夏野が喜ぶのを見て葵はホッとした。空君は怒ると怖いからな…しみじみと葵は思った。


 ふと黒い影が急に近づくのに葵は気がつく。

「あたいを無視するなーーー!!」

 怒った冬草が声を上げながら、葵に拳を繰り出していた!

 葵は平然と相手の拳を手のひらで受け止め、ニコリとする。

「うむ。スピードはいいが、腰が入っていないな」

「おいっ!? 完全に不意打ちだったのに!?」

 驚く冬草に、受け止めた拳をにぎった葵がぐいっと引き寄せる。

 葵の豊かな胸にポヨンとぶつかった冬草は、甘くさわやかな匂いに戸惑う。なんでこいつからこんな良い匂いがするんだと。

「どうしても勝負がしたいなら体育館に行こう。ここは狭いし、何か壊したらミドリちゃんの大目玉をくらうからな」

 冬草の首根っこをつかむと、葵は暴れる相手を引きずりながら部室を出て体育館へと移動しはじめた。

「おいっ! やめろって! もう勝負はいいから! やめてぇえええええーーーー!」

 悲痛な叫び声が遠くなるのを聞きながら夏野と倉井は顔を見合わせた。


 しばらくして我に返った夏野と倉井が慌てて体育館へと向かうと、すでに冬草はボロボロになっていた。

 他の運動部員たちが遠巻きに見ている中を夏野たちが人垣を分けて通っていく。

 体育館の隅でマットを敷き詰め、その上で葵が冬草の繰り出す突きや蹴りをいなしている。なぜか二人はすでにジャージを着ていた。

 葵は隙を見て逃げだそうとする冬草を素早くつかまえると、マットの上に転がして続きを要求していた。

 夏野たちに気がついた冬草は、すがるように倉井の腰に抱きつく。

「た、助けてくれ! こいつおかしいよ! 勝負しないって言ってるのに、空手の稽古させるんだぞ!」

 泣きそうな顔で助けを請う冬草に倉井はどうしたものかと考えていた。

 すると、冬草の背後に現れた葵が仁王立ちで笑う。

「ハハハハ! なにを言っているんだ。こんなことで根を上げているようだと、お母さまの稽古にはついていけないぞ?」

「お前の親なんか知らねーよ! もういいだろ!?」

 すでに泣き始めた冬草の腕を葵はつかむと倉井から引きはがしマットに転がす。ひゃーとか言って冬草が回っている。

 しばらく見ていた他の部員たちは、飽きたのか見物を止め解散していた。


 一方的な稽古が続き、限界を越え、もうやだ~~と大の字で泣く冬草を葵は優しく抱き上げると夏野たちに向き直った。

「すまないがマットを片付けてもらってもいいかな? わたしは雪をサッパリさせて着替えさせるから」

「あ…はい」

 夏野が答えると微笑んだ葵はありがとうとお礼を言って、スタスタとシャワールームへと向かう。

 仕方なしに夏野と倉井の2人は協力してマットを片付け始めた。

 倉庫にマットを入れ片付け終えたとき、夏野はそこでハッと気がつく。

「ちょっと! あいつ月夜部長と一緒にシャワー浴びて、月夜部長に着替えさせてもらってるって、ことじゃない!? いきなり来て、さんざん迷惑かけて、最後に一番美味しい思いをしてるじゃん! あああああぁーー悔しいぃーーーー!!」

 誰もいない体育館中に響き渡る夏野の叫び。身体中から負のオーラが漂っていた。

「空ちゃん……」

 倉井はかける言葉を失っていた。


 次の日、冬草雪が地底探検部に入部することなり、夏野はイスからずり落ちた。


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