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40話 応援するよ!

 週末の地底探検部の部室。

 早めに来た夏野 空(なつの そら)は、お菓子を広げて部長の葵 月夜(あおい つきよ)倉井 最中(くらい もなか)を待っていた。顧問の岡山(おかやま)みどり先生もまだ来ていない。

 夏野が一つ、二つお菓子を口に運んだところで倉井がボストンバッグを下げて部室に入ってきた。

「最中ちゃん! って、どうしたのその荷物?」

「これは月夜部長の家に泊まるから…」

 少し照れ気味に倉井が話す。ん? と、気がついた夏野が声をあげる。

「ええっ!? また最中ちゃんは泊まるの!? めちゃくちゃ(うらや)まし~~~!!」

「あ、あの。空ちゃんとは目的が違うから……」

 アタフタと倉井が説明するが、夏野は聞いてない。最中ちゃん、ずる~~いと連発している。


 そこに葵が部室にやってきた。

「おや? 今日は騒がしいな。うむ、2人とも元気があってよろしい!」

「月夜部長! なんで最中ちゃんだけ泊まるの!? ずるい!」

 いきなり夏野が葵に食ってかかる。タジタジな葵は倉井の背中にピューっと隠れると顔だけ出す。

「違うぞ、空君! 最中君は明日、(うみ)と温泉に出かけるんだ! それで朝が早いからうちに泊まるんだよ!」

「えっ!? おんせん……」

 聞いた夏野はホワンと想像した。

 一糸まとわぬ月夜部長が、恥ずかしげに豊満な胸を手で隠しながら湯船に浸かっている姿を……。その濡れたつるつるの肌がお湯のしずくでキラキラと輝いて誘惑している……。

 妄想に鼻息荒く、興奮した夏野が倉井の両腕をつかむ。

「あ、あたしも行くっ!! 行くって!」

 ガクガクと倉井の腕を揺らし夏野が迫る。なすがままの倉井は反論できずにいた。

 慌てた葵が夏野を止める。

「空君まって! とりあえず落ち着こう! な?」

「む、無理です!! 月夜部長と温泉に行くんです! なにがなんでもぉーーー!」

「いや、勘違いしているが、わたしは行かないぞ! 明日はバイトだから、海と最中君だけで行くんだよ!」

「え!?」

 葵の言葉にピタッと止まった夏野が倉井から手を離す。

 先ほどまでの興奮が一気に冷めた夏野はキョトンとしている。

「月夜部長は行かないんですか?」

「そ、そうだ。行きたいなら構わないが、わたしは無理だぞ」

「……わかりました。そういえば、わたしも用事があったのを思い出しました」

 冷や汗をかく葵に、テヘヘと舌を出した夏野が誤魔化す。でも本当は予定など無い…夏野はとっさに嘘をついていた。

 さんざん腕をガクガクされた倉井はジト目で夏野を見ている。慌てた夏野は思い違いを謝った。


「しかし、海はあれでドジなところがあるから、わたしからもよろしく頼むよ最中君! 明日は君に任せたよ!」

「はい!」

 葵の頼みにとびきり笑顔の倉井が答える。

 眩しい笑顔に夏野はピンときた! これは間違いない!

 倉井の腕をつかんで部室の奥へと引っ張っていく。

「月夜部長は来ないで! ちょっと最中ちゃんと話があるの!」

 ついてこようとする葵に釘を刺すと、部室の隅で葵に背を向ける。ふてくされた葵は腕を組んでイスに腰かけた。

「な、何? 空ちゃん」

 恐々と倉井が聞いてくる。

 夏野は葵に聞かれないようにヒソヒソと話し始めた。

「ねえ。ひょっとして最中ちゃんってさ……海ちゃんのこと好き?」

「はわぁああ~~。そ、そそそそれは……」

 ド直球な物言いに、あまりにも動揺して頬を染めた倉井が言葉を(にご)す。夏野はニコリと笑って(ささや)く。

「大丈夫。月夜部長には言わないし、周りには黙っておくから。わたし応援してるよ!」

「空ちゃん……」

 意外そうな顔で倉井が夏野を見た。夏野はウインクして続ける。

「ここだけの話。わたし、月夜部長が好きなんだ。秘密だよ?」

「ずっと前から知ってた。というか、本人以外にはバレてるよ空ちゃん……」

 倉井の言葉に夏野は、えっ!? っと驚いて口を開ける。

「ま、まさか! 知ってるのは桜と(あかね)先輩だけかと思ったのに……」

「ふふふっ。恋すると回りが見えないって言うものね。みんな優しいから言わないの」

 笑う倉井に今度は逆に夏野が赤くなる。

 マジなの……。ひょっとしてバレバレ? なのになんで本人はまったく気がつかないの? 夏野は葵への不満がさらに増した。

 夏野たちは新しい秘密を共有して葵の元へと戻っていく。

 その間、ヒマしていた葵は、お菓子を食べながらタブレットでギャル画像を見てオシャレの参考にしていた。


「話は終わったのかな?」

「はい」

 葵が聞くと倉井が満足気に答える。動揺している夏野の動きはギクシャクしていた。

 そこにみどり先生が部室に入って来た。

「今日は静かねー。何かあった?」

「いや、何も無いが…しいて言うと最中君と海が明日、温泉に出かけることかな」

「あら! いいじゃない! 私も行きたいな!」

 葵が答えると嬉しそうにみどり先生は言いながらイスに座った。

 腕を組んだ葵が片眉を上げる。

「それでは、今度部活で行こうか? 皆で」

「いいわね、それ!」

 みどり先生が楽しそうに手を合わす。

 ふふと笑った葵がハッと思い出す。

「そうだ! 岩手先生も呼ぼうか?」

「ええっ!? その…えっと、い、いいい岩手先生はあれこれ忙しいから…」

 慌てたみどり先生がしどろもどろに言い訳を始めた。

 倉井が葵の袖を引っ張る。

「ん?」

「みどり先生、困ってるから…」

 ムスッと倉井が葵を注意してきた。

「違うぞ最中君! わたしはミドリちゃんを応援しているのだ! こうした集団行動に入ることで岩手先生は安心してミドリちゃんと交流を深める切っ掛けになるのだ!」

「あー、なるほど!」

 葵の話に簡単に納得した倉井は、さすがと目を輝かせる。

「ちょ、ちょっと? あなたたち私の意見を聞かないの?」

 むしろ困ったみどり先生が眼鏡を直して聞く。

「わたしも応援しますから! そうしましょう! みんなで温泉! さすが月夜部長!」

 嬉しそうな夏野も加わって部員たちの意見がまとまる。

 もうこうなると無理。みどり先生は反対する気が失せた。

「よし! 最中君! 岩手先生の授業を受ける機会の多い君に説得を任せたい!」

「はい! がんばります!」

 ビシッと敬礼する2人。なんだかんだ倉井も地底探検部にすっかりなじんでいた。

 負けじと夏野も提案する。

「わ、わたし、近場の温泉を選定します!」

「うむ! 任せた!」

 こちらもビシッと敬礼する2人。

 そんな部員を見ながら、みどり先生は勝負パンツにした方がいいかしら? と余計な事を考えていた。


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