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13話 コンビニで発見!

 ちょっとした買い出しに夏野 空(なつの そら)は、駅近くのコンビニへ歩いてきていた。

 全国チェーンのコンビニも、こんな田舎だと駅のそばか国道の大通り沿いにしかない。

 幸い夏野の自宅は徒歩圏内にコンビニがあった。

 ちょうどコンビニの自動ドアが開いた時、ピンクのキャップを被り高等学校指定のジャージを着た胸の大きな女性とすれ違う。

「空君?」

 声をかけられ振り返るとさきほどの女性がビニール袋をさげて立っている。

 よく見ると葵 月夜(あおい つきよ)だった。

「月夜部長! 全然わかりませんでしたよー!」

 驚いた夏野が声を上げる。

「いや、すまん! うつむいていて、わたしも空君と気がつくのが遅くなった」

 照れたように後ろ頭をかいている。

 こんな日に出会えるなんて…嬉しくなって夏野は葵の元へ駆け寄った。

「どうしたんですか?」

「ちょうど買い物が終わったところだ。空君もこのコンビニに用事があるんだろ?」

「はい。じゃあ買ってきますから待っててもらえます?」

「わかった。入り口横で待ってるよ」

「すぐに戻りますから!」

 そう言うと夏野はダッシュで店内へと入って行った。

 葵は笑って見送ると、入り口横に移動してヤンキー座りで待っていた。


 急いで買い物を済ましてコンビニの入り口に出る夏野。

「月夜部長お待たせしました! って、早く立ってください!」

 ヤンキー座りの葵を発見して慌てて立たせる。あらかさまに変な人に見える。というか高校のジャージが痛々しかったから。

「早かったね空君」

「その格好はどうしたんですか? この間はオシャレだったのに」

「秋物の服はあれだけなんだ。コンビニに行くだけだから…一応、オシャレでキャップを被ってきたんだが……」

「えー! 服ってあれだけなんですか~!」

「ちょっ! 声が大きいよ空君! サイズが合わないんで買い直している途中なんだよ」

「ふ~ん」

 夏野が葵の全身を舐め回すように見る。食いつくような視線にいたたまれなくなった葵は、薄雲のかかる爽やかな空を眺めた。

 そして胸で夏野の視線が止まる。……きっとここだ。ここに違いない! ジャージの上からでもわかるパッツンパッツン具合。

 これ以上追求すると自分にダメージがきそうなので夏野は話題を変えた。

「ところで月夜部長。どこかで休みませんか?」

「そうか。では公園に行こうか」

「……月夜部長。もう少し女子高生っぽく、オシャレカフェに行きましょうよ!」

「それだとお金がかかるぞ?」

「もう! おごりますから!」

 夏野は葵の腕を取ると強引に駅の方へと歩き出した。


 駅前には唯一のハンバーガーショップ、マク○ナルドがある。

 夏野はオシャレカフェとか言いながらマク○ナルドに入るとキャラメルラテを注文する。葵は恐る恐るグレープジュースを選んで、ちゃっかりおごってもらう。

 テーブル席につくと夏野が興味津々に葵に聞いてきた。

「ところで月夜部長は何を買ったんですか?」

「ん? これか? まあ、いわゆるバイブルを買ったんだよ」

 そう言って自慢げにビニール袋から一冊の雑誌を取り出す。付録が挟まっているため分厚くなっている。

 黒髪のモデルが何かに威嚇している表紙『アゲギャる』──ギャル系の雑誌だ。

「……部長はこの雑誌のファンなんですか?」

 夏野が真顔で聞く。

 前からなんとなくそう思っていたけど確信に変わった。月夜部長はギャルを目指している! 夏野は確信した。

「ファンっていうか、服とか化粧とかの参考にしてるよ。それに読んでも楽しいし」

「この間、泊まったときには雑誌はありませんでしたよね?」

「ああ、それ。お母さまに見つかるとうるさいから隠してたんだ」

 話しながらも夏野の顔が怖くなってくる葵。何がそうさせているのだろうか? 何故か責められている気がする。

 しかたないので葵は雑誌の封を切って開いて見せる。

「ほら! どれもカッコイイだろ? ちょっと憧れちゃうよね。空君も可愛いんだから、そんな怒った顔しないでくれよー」

「えっ!? か、カワイイ……」

 雑誌に載っている写真はどれをみてもギャルばっかり。だけど、不意打ちに葵に可愛いと言われ、夏野は赤くなる。

 やばい! どうしよう!? 月夜部長に可愛いって言われちゃった! 嬉しくて夏野は天に召された──


 夏野がポケ~っとしている間に、葵がジャージパンツのポケットから色付きリップを取り出すとガバッと身を乗り出す。

 くいっとアゴをつかむと夏野の唇にリップを塗り始めた。

「な、ななな…!」

「ほら、動かないで。……よし!」

 目を白黒させる夏野に塗り終わり満足気な葵。

「空君も少しはオシャレしなよ。リップを塗っただけでも印象がだいぶ変わるよ!」

 自分の唇から微かに甘い香りが漂う。…そういえばこの間、月夜部長に密着してたときにこの匂いを嗅いだ気がする。

 夢うつつな夏野の前にそのリップが置かれる。

「おごってくれたお礼だよ」

 二ヒヒと葵は笑って立ち上がる。

「明日ね!」

 ビニール袋に入れた雑誌を大事そうに抱えて葵はマク〇ナルドをそそくさと出って行った。


 そういえば、これって関節キスじゃないの?

 夏野は思い出す。

 どうしよう…今日は寝れないかも…。今さらドキドキしてきた……。

 なにげなくリップを手に取って回してみる。

 ちょっと出たと思ったらポロっとスティックが落ちた。コロコロとテーブルに転がる短いスティック。

 ……月夜部長。

 なんかいいように使われたようで夏野はイラっとした。


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