笑顔
次の日、春樹はなんの迷いもなく学校へ登校した。
ああ、自分一人のためにわざわざあんな高級な寿司までとってくれる安藤さんとわざわざ家に謝りに来てくれる夏樹とその家族。前の学校では担任なんてどんなに辛い思いをしていても見向きもしてくれなかった。相談したってどうせ自分が悪いと言われるだけだろうな。下手したらいじめの加害者にも未来はあるとか言われてしまったかもしれない
学校に着き教室に入った。昨日、どうしても入るのに気が進まなかった教室。そしてその予感は的中し、再度嫌になった学校。
けど今は違う。何か違う、ここは前にいた自分の学校とは違う。自分が巻いた種ではあったけど、今は違う。ここは自分がいて良い場所なんだきっと
そして中に入ると、昨日と同じく。全員が揃っていた。教室に入るなり秋奈が話しかけてきた。
「あ、春樹くんおはよう。あのさ、昨日は話せなかったからさ、私、話したくて。これからよろしくね」
おどおどした様子で話しかける秋奈。そしてその後ろでなんか気まずそうにその様子を見ている美冬。そして奥では夏樹と海斗が話していた。
夏樹は春樹に気づき、なんとなく照れた様子で春樹の前に言って話しかけた。
「春樹、おはよう」
夏樹の辿々しい態度とそれを後ろから見ている三人の態度に春樹はにっこりと笑ってこう答えた
「夏樹!おはよう!昨日はお菓子、ありがとうね!今日からよろしく!」
春樹は満面の笑みで夏樹にそう話しかけた。後ろでオロオロと様子を見ていた3人も春樹のその態度にとてもホッとした様子だった。よかった、春樹くん、元気そう
「うん、春樹、ありがとう。こちらこそよろしく!」
春樹は発達障害であったがもともとはフレンドリーで明るい性格だった。だからどちらかというと友達作りは上手い方で誰にでも懐く性格をしていた。だから春樹にとって夏樹は決して嫌いなタイプではなかった。
安藤さんが教室に入ってくると、そこには和気藹々とみんなと仲良くしている春樹の姿があった。安藤さんはその様子をみるととても安心し、そして嬉しく思った。よかった。春樹くんはもともとこうやって明るい性格なんだね。すぐになじめそうだ
そして、その日1日、春樹はみんなと仲良く楽しく過ごした。ここでは前の中学のようにスクールカーストはなかった。みんな平等だった。誰が下で上もない、みんな一緒。そこにいる一人一人が一人の人間として尊重して扱われた
「どうしてもスクールカースト上位に立ちたい」と思っていた春樹にとって格差のないこの新しい環境はとても新鮮だった。そして本当の意味でここから春樹のこの田舎での生活はスタートしたのだった