紅薔薇姫の試練
城の一角にある会議場に、有識者たちが集まっている。議場にはふたつの長いテーブルが置かれ、赤と白のテーブルクロスが引かれることにより、ふたつの派閥がはっきり分けられていた。
しかし、そのふたつのテーブルに割り込むように置かれた円卓は縞模様。彼らは中立派と呼ばれる者たちだ。
今から行われるのは、薔薇会議。国王をのぞくすべての者が出席を許される。
この一室には、様々な思惑が薔薇の花弁のように渦巻いている。好きじゃねえなあ、こういうのは。モーリス・ルブランはそう思った。
じっと座っているのは性に合わないのだ。いっそ酒でも飲みながら話し合えばいいのに。そんなことを言ったらお偉方に叱られるだろうか。
「ミアレスさまが登城なさったそうだな」
「これで紅薔薇姫と白薔薇姫がそろったわけだ」
ひそひそと交わされる会話を聞きながら、モーリスはくあ、とあくびをした。彼が座るのは赤いテーブルだ。
「眠そうだな、モーリス・ルブラン」
その声に顔をあげると、眉間にものすごいシワを刻んだ男がこちらを見下ろしていた。
「あ、ユベール大臣。どぉも」
ユベールは、無駄のない動作でモーリスの隣に座った。几帳面なしぐさで指を組む。
「紅薔薇の瀬戸際だというのに、随分と呑気に構えているものだ」
「まあ、なるようになるかなあって思いまして」
モーリスはのんびりと後ろ手を組んだ。ユベールは、ちらと視線を投げてくる。
「寝癖がついているが、まさか今まで寝ていたのではあるまいな」
「あ、バレました?」
この季節は眠くなりますからねえ。のんきな言葉に、青筋をたてるユベール。
「貴殿の養い子がスカーレットさまの護衛騎士になったのだろう。少しは後ろ盾になろうという気概はないのか」
「俺はただの騎士団長ですし、さしたる権限もないですからねぇ」
騎士団が政治的権力を持つと、すべてを武力で解決するようになってしまう。
(まあ、今の国王だってクーデターで権力を奪ったんだけどな……)
白薔薇派が紅薔薇派を逆賊だと名指す。そのことを理解できないわけではない。しかし。
(あのままじゃ、国は滅びてた)
――モーリス。従兄弟上を救いたいのだ。あの日、アルバートは言った。
結果的に王位を簒奪したとしても、一時的に国を荒廃させたとしても、アルバートは国を変えた。モーリスもそれに加担した。多くの犠牲を払ったことは確かだ。だが、今でも間違っていたとは思わない。
「騎士団も一枚岩ってわけじゃあないし」
「なにをいう。すべての騎士たちを纏め上げ、紅薔薇につかせるくらいのことをしてこそ陛下の騎士を名乗れるというもの」
騎士団長とは何かを語り始めたユベールの話を聞き流しながら、モーリスは白薔薇派の長テーブルに目を向ける。彼らは顔を寄せ合い、何事かを話し合っているようだった。
──なんだ?
モーリスは耳を澄まそうとした。が、隣にいる男のやけに通る声が邪魔して、よく聞こえない。
「ちょっと大臣、静かにし……」
ユベールの話を遮ろうとした、その時。丸テーブルにいた男の一人が立ち上がった。薔薇会議では、伝統的に無派閥のものが司会を務めるのだ。男は議題について書かれた用紙を手に、声をあげる。
「これより、第五十回目の薔薇会議を始めます。引き続き王位継承権について話し合いたいと思いますが、意見のあるものは手をあげ、指名されたら起立して自分の考えを述べるように」
彼が言い終わるかどうかの間に、白薔薇派の一人が手をあげた。
「はい」
「どうぞ、デュポン大臣」
指名されて立ち上がった男は、撫でつけられた前髪を撫でた。
「皆さまご存知の通り、先日、辺境の地に追いやられていた白薔薇姫が登城されました」
その言葉に、紅薔薇派が少し気色ばんだ。狭量な王が白薔薇を追いやったとでも言いたいのか。なんと不敬な。そんな声が聞こえる。
「生かしてやっているだけでも、温情を感じるべきなのに……」
隣のユベールがつぶやいた。
しかし、図星ではあるのだ──モーリスはそう思う。現王アルバートは、正当な王位継承者である白薔薇や、彼らが擁する派閥のを苦々しく思っている。だが、彼らを根絶やしにしてしまうのは、色々な意味で危険だった。
白薔薇は長く王位を支配してきた者たちだ。特にミアレスの求心力は馬鹿にできない。政治の中枢から遠ざけ、辺境の地に送るのが、もっとも平和的な解決だったのだ。
デュポンが話を続ける。
「会議は踊るといいますが――ここ何週間か、話し合いは帰結を見せません。白薔薇姫と紅薔薇姫、次王にふさわしいのはどちらなのか。お二人をこの場に召喚し、確かめるのが得策かと」
──二人をこの場に呼ぶ? やはりなにか企んでいるな。モーリスは、反対すべく、とっさに手をあげた。しかし、隣に座っていたユベールが先に口を開いてしまう。
「それはいい。スカーレットさまに騎士もついたことだし、紅薔薇が王の器であると示すのに絶好の機会だ」
おいおい。なに賛成してんだ、この眉間シワ男。
「ユベール大臣、挙手してからお話ください」
「これは失礼」
モーリスが呆れた目でユベールを見ると、彼はむ? と首を傾げる。
「なんだ、その顔は」
「いいえーなんでもー?」
「モーリス騎士団長、何か?」
議長に声をかけられ、モーリスはへらへら笑う。
「いえ、なんでもないです」
「紅薔薇派は手をあげることもできないのか」
揶揄する言葉が飛んできた。
「脳みそが筋肉でできているから、考える前にしゃべってしまうのだろう」
ユベールが挑発に乗る。
「失礼だろう。それはこの男だけだ」
「ユベール大臣、静粛に」
──なんだかまずいことになりそうな気がする。向かいのテーブルでは、白薔薇派たちが含み笑いをしていた。
★
聞こえてきたピアノの音に、スカーレットは顔をあげた。部屋の扉を開けると、侍女たちが固まって話しているのが見えた。彼女たちはピアノの音に耳を澄まし、
「素敵な音色ねえ」
「ミアレス様ね。先ほどレッスン室に入っていくのをお見かけしたわ」
「ミアレス様は学問にも秀でていらっしゃるのですよ。姫様方の問いかけにすらすらと答えてらっしゃって……いやはや、感心しました」
眼鏡を押し上げそう言ったのは、家庭教師のレイズだ。
「ほんと、すべてにおいて秀でてらっしゃるのねえ」
「それに比べてスカーレット様は……」
「しっ、聞こえるわよ」
スカーレットが部屋から出ると、侍女たちが慌てた様子で散らばって行った。レイズもさっと視線をそらし、そそくさと歩いていく。
「……」
廊下を歩いて行ったスカーレットは、ピアノの音が聞こえる方角へと向かう。レッスン室の前で立ち止まり、そっと中を覗き込んだ。
室内にはミアレスと、妹たちがいる。ミアレスは白く細い指を鍵盤に走らせていた。妹たちは、ミアレスの奏でる美しい音色にうっとりと耳を傾けている。
ふと、ミアレスが顔をあげた。
「スカーレットおねえさま」
声をかけられ、スカーレットはぎくりと固まった。ミアレスは椅子から立ち上がり、こちらへやってくる。
「一緒にピアノを弾きましょうよ」
手を引かれて、スカーレットはかぶりを振る。
「わ……わたしはいいわ」
「そんなこと言わないで」
笑顔を浮かべているものの、目が笑っていない。スカーレットはびくりとして固まった。ミアレスは半ば引きずるようにして、スカーレットをピアノのそばへと連れて行った。
「『水の戯れ』を弾きましょう。お姉さまは下のパートね」
ミアレスはこちらの意見を聞かずに、てきぱきと言う。スカーレットは緊張しながら、鍵盤に指を置いた。ピアノの音色がレッスン室に響く。
しばらく弾いていなかったが、意外と弾けるものだ……。そのとき、音に誘われるように、一人の男がレッスン室に入ってきた。それが誰かに気づいて、スカーレットは注意をひかれる。
(あ、クロード……)
スカーレットの視線に気づいたのか、ミアレスがささやいた。
「あの方、姫様の騎士でしょう?」
「え、ええ」
「素敵な騎士ね。羨ましいわ」
「ミアレスだって、立派な騎士がいるじゃない」
「レスターというの。優秀だけど、面白みがないのよ」
スカーレットは、部屋の隅にいる無表情な騎士に目をやった。先ほどから微動だにしない。感情のない瞳と視線がかち合って、スカーレットはびくりとした。さっと視線をそらす。
(こ、怖い)
「えっと、ルカリア様は元気?」
スカーレットが問うと、ミアレスが手を止めた。ピアノの音がやんで、マーガレットとリリアが騒ぐ。
「どうしたの? おねえさま」
「もっと聞きたいわ」
ミアレスは鍵盤を見つめ、
「……おにいさまのこと、おぼえているのね」
「うん。少し身体が弱い方だったよね」
「ええ。最近はだいぶ回復されたわ」
ミアレスは淡々と言う。そうして椅子から立ち上がった。レスターが音もなく付き従う。
「待って、ミアレスお姉さま」
妹たちがミアレスを追って駆けていく。ナタリーがスカーレットを見て、遠慮がちに足を止めた。
「いいのよ。行きなさい」
そう言ってほほ笑んだら、彼女は目をふせ、ぱっと踵を返した。スカーレットはふう、と息を吐く。
ミアレスとすれ違うように、クロードがこちらにやってきた。彼は切れ長の瞳をこちらへ向けて、
「あんた、ピアノなんか弾けるんだな」
「一応ね。下手だけど」
「俺には、上手い下手なんかわからない」
クロードは、鍵盤に長い指を這わせた。
「クロードも弾けるの?」
「全然」
彼が鍵盤をたたくと、ぽろん、ぽろんと音が流れ始める。「水の戯れ」の主旋律だ。たどたどしい動きだが、メロディーは合っている。スカーレットは感心した。
「あなた、耳がいいのね」
クロードが指を止めると、ぽーん……と残響が鳴った。
「ルカリアってのは誰だ」
「……」
「白薔薇の人間か?」
スカーレットは少しためらったのち、ぽつりとつぶやいた。
「ルカリア様は、エルマー王の息子ではないという話よ」
エルマーの正妻と、他の男の子供だという噂を聞いたことがある。
「……ミアレスとは腹違いのきょうだいってわけか」
「そういうことになるわ」
「どうりで名前に聞き覚えがないと思った。庶子だから後を継げないわけだな」
「ええ」
浮かない顔のスカーレットに、クロードはどうした、と尋ねる。
「たぶんミアレスは、ルカリア様に王位を継がせたいんだと思うの」
いつも冷静なミアレスだが、ルカリアが絡むと少し様子が変わる。子供のころとはいえ、彼と少し会話しただけで、あれほど怒りをあらわにしたのだ。
「だがそれは……白薔薇が王位を奪い返したとしても不可能だろう」
「ええ。だからせめて自分が、と思っているのかもしれないわ」
ミアレス・ヨークシャーが他者を強く引き付ける人間であることは間違いなかった。賢くて、なんでもできて、妖精のように美しい。初めて会った妹たちが、あんなになついているくらいだ……。
「ミアレスは完璧だものね」
そうつぶやいたら、きなり頬を引っ張られた。スカーレットは目を白黒させる。
「うぐ、なにするの」
「腑抜けた顔をしてるからだ」
「もとからこういう顔だし……」
スカーレットが頬をさすると、クロードがふ、と笑った。
「いま、笑った?」
「笑ってない」
「嘘だ、絶対笑ったわ」
顔を覗き込もうとしたら、髪をくしゃくしゃとかき回された。スカーレットは髪をおさえてむくれる。
「もう、何するの」
「完璧だからって、王の素質があるとは限らない。あんたにはあんたの長所があるだろ」
「私の長所ってなに?」
「甘いところ」
「それって長所かしら」
短所でもあるな。クロードは言った。
「あんたは変なお姫様だ。どっちが女王にふさわしいかと尋ねたら、ミアレスって答える人間のほうが多いだろう」
スカーレットはうう、とうめいた。
「だけど少なくとも俺は、あの女に仕えたいとは思わない」
「どうして?」
「あんたを選んだから」
スカーレットはクロードを見上げた。彼もじっとこちらを見る。
「戦わずにこの諍いを終わらせる。そう言ったのはあんただろう? 自信を持てよ」
「クロード……」
その時、ばん、と窓が開いた。スカーレットはびくりとして、クロードが素早く彼女を後ろ手にする。しかし、現れた人物を見て、二人は脱力した。
「なんだお前か……」
「ルドルフをよそにいちゃいちゃするのは見過ごせませんよ!」
ルドルフが窓枠をひらりと飛び越える。
「せめて扉から入って来い。斬るところだった」
「細かいですね、クロード君。将来ハゲますよ」
「おまえが禿げろ」
クロードが突き付けた刃をかわし、ルドルフはスカーレットに声をかける。
「姫様、ナイフに使われていた毒が判明しましたよ」
「本当?」
スカーレットはルドルフに駆け寄った。
「ええ。使われていたのはこれです」
彼は懐から小瓶を差し出した。中には派手な色のカエルが入っている。クロードは瓶を覗き込み、
「これは……なんだ?」
「ヤドクガエルですよ。その名の通り、このカエルから矢に塗る毒を取得するんです」
ルドルフは遠い目をした。
「ああ……思い出すなあ。まだ十二歳かそこらのころです。王宮の裏手にある森で、このカエルを探して奔走していた」
彼はちらっとスカーレットを見た。スカーレットは同情を示す。
「苦労人なのね、ルドルフ」
「そうなのですよ、姫様。ルドルフは剣だけしか能のない無駄美形とは違うんです」
ルドルフはちらっとクロードを見る。クロードが目を細めた。
「喧嘩を売ってるんだな? 買ってやろう」
「まさか。私はクロード君と違って平和主義なんですよ。他の騎士たちともうまくやってますし」
「腹の中では見下してるんだろ?」
「ノーノー、みんなトモダチデース」
「狸め……」
騎士たちの会話をよそに、スカーレットは小瓶に入ったカエルを覗き込む。
「信じられないわ。こんな小さなカエルなのに、毒があるなんて」
「ええ。意外とおとなしくてかわいいですよ。どうですか、一匹」
クロードは、ルドルフをぐい、と押し返した。
「いらん。さっさと持って帰れ」
「怖いですねえ、やどちゃんがおびえてしまう」
ルドルフが小瓶を撫でる。
「毒ガエルに名前をつけてるのか、おまえ……」
クロードが呆れていると、従者が戸口から呼びかけてきた。
「スカーレット様、陛下がお呼びです」
「お父様が?」
「おや、なんでしょう、一体」
「さあな。とりあえず行くぞ」
スカーレットは、クロードとルドルフとともに部屋を出た。
謁見の間に向かうと、国王とモーリスがいた。
「お呼びですか、お父様」
「ああ、スカーレット」
国王はスカーレットを手招いた。そばに向かうと、彼は苦い顔で口を開く。
「本日、五十回目の薔薇会議が行われた。議題は王位継承についてだ」
「ええ」
「それで、おまえとミアレスを召喚することが決まった」
スカーレットはかいぎ、と呟く。それから五秒ほど静止した。なおも固まっているスカーレットに、
「おい、大丈夫か」
と尋ねるクロード。スカーレットは真顔でうなずく。
「ええ、わかってるわ、かいぎよね。バター焼きにすると美味しいやつ」
「それはエリンギだろう」
「だいぶ混乱されてますねえ」
ルドルフはスカーレットの顔を覗き込み、
「姫さま、会議といえばいろんな偉い人が集まる場。姫さまの可愛らしさを猛烈アピールする絶好のチャンスです!」
「おい、余計なこと言うな。アピールすべきは可愛らしさじゃないだろ」
「そうよ、可愛さはミアレスに負けてるし」
スカーレットはううん、と唸り、ハッ、と顔を明るくした。
「ジョセフ! ジョセフをアピールに使ったらどうかしら」
「いいですね! ではジョセフ&スカーレットのコンビで売り込みましょう。コンセプトは『かわいいは正義』でどうでしょうか」
そのコンビは一体どこを目指してるんだ――クロードはもはや突っ込む気にもなれないらしく、表情を無にして黙っていた。国王はため息まじりに、
「クロード。スカーレットのこと、くれぐれも頼むぞ」
「はい」
「おや? 真夏の太陽ことルドルフには頼んでくださらないのですか、陛下」
「ああ……というか、君のもっているそれはなにかね?」
国王の問いに、ルドルフは笑顔で答える。
「ヤドクガエルのヤドちゃんです。スプーン一杯の毒で大人を殺すほどの毒性があります」
「なせそんな危険なものを持っているんだ」
「ミアレス様が持ちこんだ毒でして」
その言葉に、国王が顔色を変えた。
「なに……?」
「どうかしましたか、お父様」
「……いや、なんでもない」
国王はかぶりを振って、
「とにかく、会議まで日がない。十分な準備をしてのぞんでくれ」
謁見室を出たスカーレットは、閉ざされた扉をじっと見た。
「お父様、様子が変だったわ……モーリス、何か知ってる?」
そう言って視線を向けると、モーリスは少し躊躇したのち、こう言った。
「……ヤドクガエルの毒は、エルマー王が自殺する際飲んだものだ」
スカーレットはハッとした。
「それは大変な苦しみだったでしょうねえ。化けて出ると噂されるのも無理はない」
ルドルフがしみじみと言った。クロードがそれに続く。
「ミアレスは、毒を使って復讐でもする気なのか? ずいぶんと安直だな」
「とはいっても、エルマー様は彼女の父上ですからね。心情的にはあり得る話だ」
もし、お父様が毒を飲んで自殺したら――想像したら、胃の腑がきゅっと冷たくなった。にくい相手を同じ目に合わせたいと思っても、無理はないのだ。
「俺もミアレス様には注意を払っとく。おまえら二人、ちゃんと姫様についてろよ」
モーリスはそう言って、クロードとルドルフを交互に指さした。
「お任せください」
「言われなくてもやる」
そう言ったクロードの頭を、モーリスはぐりぐりかき回した。
「生意気だなあ、おめーは」
じゃあな。モーリスは手をあげて去って行く。スカーレットはふらついて、がくりと膝をついた。
「おい、大丈夫か」
「あああ……どうしよう、会議に出るなんて……! むり、絶対むり!」
「毒におびえてるのかと思ったら……そっちか」
クロードは呆れる。ルドルフはぽん、とスカーレットの肩を叩いた。
「大丈夫ですよ姫さま。なせばなる、何事も! このルドルフがついています!」
「ポジティブだが、何のあてにもならない励ましだな」
クロードはそう言って、スカーレットの腕を引いた。
「おい、早く立て。人目につくだろ」
スカーレットはクロードの腕をていっ、と振り払う。
「クロードにはわからないわ。この美形! 他人に注目されても全然へっちゃらなんでしょう!」
「そんなこと気にして生きてない」
「潔いですねえ」
きっぱり言ったクロードに、ルドルフが感心する。
「絶対ミアレスと比べられるもの。暗くてぼっちな私は、絶対に王にふさわしくないって言われる!」
「自覚があったのか」
「姫さまは可愛いですよ。自信を持って当たってくだけるんです!」
「くだけるのはいやー!」
スカーレットはだっ、と駆け出した。




