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ヤミ属性な回復担当  作者: 月菜
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異世界到着、二人の従魔

「…………」

目が覚めるとそこは、どこかの森の中だった。ゆっくりと体を起こして立ち上がり、一度深呼吸する。自分で体を見てみると、確かにそれは子供の体だった……いや。正確には僕が10歳の時の体だ。服を少し捲って左腕を見て確信した。11歳の時に付けた火傷がないし、というか11歳以降にできた傷がないことから本当に体が若返ったのだと思い知る。

「本当に来ちゃったし……っていうか、若返ってるし……はぁ」

異世界早々、一度目の溜め息だ。まぁ、考えていても仕方ない。色々やらなきゃいけないこともあるし。


まずは、持ち物の確認。

今の僕は黒いフード付きのパーカーの下に白い服、そしてカーキのズボンといった何の遜色もない格好だった。パーカーの中にナイフが2本ある。顔は多分、10歳の頃の僕だと思う。次に目覚めた時に隣に置いてあった鞄を鑑定してみた。すると____


空間袋(アイテムボックス)

大容量。中には異次元空間が広がっており、生きていなければどんなものでも収納可能。また、魔物の死体を入れると自動で解体され素材だけが残され、他の部位は使用者の魔力に還元される。


おぉ……いきなり高性能なアイテムが。拾って中を開けてみると、ステータスと同じような透明な画面が出てきた。


・100000メル

・回復薬(下級)×30

・回復薬(中級)×30

・回復薬(上級)×25

・回復薬(特級)×20

・麻痺毒(弱)×30

・麻痺毒(中)×25

・麻痺毒(強)×20

・睡眠薬(弱)×30

・睡眠薬(中)×25

・睡眠薬(強)×20

・精神安定剤×50

・抗鬱剤×50

・ミスリルのナイフ×10

・携帯用の小型のミスリルのナイフ×5

・魔石(上級)×20


……なんでこんなに薬だらけなんだ?いや、命主になるって言ったし、神様の気遣い……のつもり、なんだろうか。というか、ご丁寧にも僕が地球の精神科で処方してもらっていた精神安定剤と抗鬱剤、それに睡眠薬まである。いやいいけどさ?別に。で、100000メル?……あぁ、お金か。知識を探ると、どうやらこの世界の金の単位はメルで、銅貨、銀貨、金貨、白金貨と替わるらしい。めんどくさいなぁ、覚えるの。


持ち物は確認した。次は……そうそう、従魔だ。従魔召喚っと……えー、属性に応じて魔物、魔獣などを召喚し、契約すると。知識からそれは分かるが、どうやればいいのやら。とりあえず、いきなりは怖いので簡単な魔法をやってみる。左腕を捲り、パーカーの中にあるナイフを肌に押し当てる。地球でよくやっていたのと変わらない、すぐにいつもの傷ができて、血が滲む。すかさず、僕は言った。

「ヒール」

すると、一瞬で傷は塞がり何もなかったかのようになった。なるほど、これが聖魔法か。


この世界の魔法は明確なイメージさえあれば詠唱なんて関係なく、慣れれば無詠唱でもやれるものらしい。


「……自分には、使いたくないなぁ」

せっかく切ったのに、傷が消えたら意味ないだろう。人を治すのはいいが、リスカの傷に使うのはやめよう。


「さてと……やってみますか」

一応、やり方は頭の中に入ってる。……一般常識ではないと思うが、どうやら神様がサービスしてくれちらしい。いや、従魔召喚は神様が勧めたんだから当然か。まぁ、いいや。地面に召喚の魔法陣__なんか書けた。記憶にあったらしい__を書き、その前に立つ。一度ゆっくりと深呼吸して、始めた。

「我が下僕、我が従者となりうる者よ。我に力を与え、守り、我に尽くせるならば……汝の望むものを与えよう。我は汝の力を望む。聞こえているならば、応えよ。__召喚!」

うわぁ、めっちゃ厨二だ……けど、思い付く呪文がこれくらいしかなかったんだ。仕方ない。最後の召喚を口にした瞬間、地面の魔法陣が青白く光り、次の瞬間、現れたのは見目麗しい二人の男だった。一人は暗い赤髪に琥珀の鋭い目をした男。もう一人は色素の薄い金髪に優しげな緑の目の、甘い顔立ちの男だった。二人共、色気溢れる見事なイケメンである。

「俺を喚んだのはお前か?」

赤髪の男が口を開いた。凄い低音ボイスだ。

「ボクを喚んだのも、キミだよね?」

顔立ちに合った甘い声で問いかけたのは金髪の方。どうやら、二人召喚してしまったらしい。

「ああ。僕がお前達を召喚した。まずはお前達二人のことが知りたい。お前達は“何”だ?」

従魔召喚で喚ばれるのは、人為らざる者__魔物や魔獣、悪魔、魔人などだ。と言ってもピンキリである。なので、まず僕は二人が何なのかを尋ねた。

「ボクらは夢魔(ムマ)だよ。淫魔(インマ)とも言われるね……分かる?人と交わって、生気を奪い取るってやつ」

夢魔、ね。あんまり良い印象はない。

「見て分かると思うけど、僕は男だ。これで交われるのか?」

男同士のやり方は……一応知っているけど、生憎僕はソッチに興味はない。むしろ遠慮したい。

「性別は関係ねえよ。つーか、生気奪うだけなら交わらなくてもいいんだ。が、美味い生気が溢れるのは、人間が快楽に溺れてる時だからな……」

どうやらゲイらしい。しかし、夢魔か……別に体を使うのに抵抗があるわけじゃない。どうせ傷だらけの体だし、どうなったって構わない。とりあえず、ここは置いておこう。

「僕の召喚に応じたのは何故だ?」

これは僕に忠誠を誓えるかどうかを判断する一つの質問だ。僕個人の、ちょっとした好奇心もあるけど。これには赤髪の方がニヤリと色っぽく笑みを浮かべて答えた。

「お前の喚ぶ声が聞こえて、ふと漂ったお前の匂いに惚れた。お前が食べたいから、喚ばれた」

さすがに顔が引きつった。いやいや、ストレート過ぎるだろ。

「キミの甘美で艶やかな香り……本当にたまらないよ。他のやつも来たがってたんだよ?それをボクらが跳ね退けたのさ」

僕は、美味しそうなのか……なんというか、微妙だ。喜ぶべきなんだろうか、これは。一瞬沈黙したが、軽く咳払いをして続けた。

「では、お前達の望むものは___」

「もちろん、お前の生気だ」

最後まで言うまでもなく、そう答えられた。うーん……無理、ではないんだけど……。生気を与えるってことは、あれだよな?その、交わるってことだよな?…うん、悩む。

「生気を与えるというのは、どのくらいの頻度なんだ?……毎晩?」

毎晩はさすがに体力的にきつい。

「最低が週一かな?毎晩じゃなくても大丈夫だけど、貰えれば貰えただけ力が出るし」

週一が最低ということは、余裕を持って週二、三くらいか。

「…ん?これって、もしかして二人共と契約すると僕にとっては週四にならないか?」

え、だってそういうことだろ。結構きついぞ、週四なんて。思わずげっとなる。

「二人一緒でも、やれねえわけじゃねえだろ」

いやいや、普通にきついから。しかし困ったな。さすがにその頻度だと体が……いや、待てよ。そうだ、僕には強力な聖魔法があるじゃないか。多少夜の営みで疲れても、ヒール一発で全回復だ!精神的に思うところはあれど、とりあえず肉体面だけならいける。よし、次は強さだな。

「お前達は戦えるか?というか、何ができる?どれくらい強い?」

ここ、結構重要。僕は元々の性質が闇だから闇属性と、後は神様に貰ったチートを聖、つまり回復に極振りしたので、戦闘能力はほぼゼロだ。怪我をしても大抵のものなら治せるが、しかしそれでは守りしかできない。攻めの力がなければ、何かあった時にはジリ貧になる。それは避けたい。というか、本当はその“何か”が起こらないのが一番良いんだけど……そうもいかないんだろうな。異世界だし。

「俺の属性は闇と火。まぁ闇は夢魔なら誰でも持ってるが。火は……そうだな。昔、火竜(ファイアドラゴン)を倒した時についでに加護も貰ったんで、結構使えるぜ?魔力量も多いしな。魔法なしでも強いぞ。少なくとも人間には絶対負けねえ」

…え?火竜(ファイアドラゴン)、倒した?!……い、いきなりチートきたぁ……ちょっと現実逃避したくなる僕だが、金髪が追い討ちをかけた。

「ボクは闇と氷。魔法は氷に特化していてね。闇はそんなに強くないんだけど。強さはねえ、昔のことだけど南の暑い国に大雪を降らせられるよ。後は、お城丸ごと凍らせたりもしたかな?いやぁ、あれは面白かったよ!凍った人間ってつつくと崩れるから、死体の処理が楽なんだよね」

なんか物騒だね?!え、南の国に大雪?お城丸ごと氷漬け?何やってんだよお前!

「…何をやらかしてきたんだ、お前達は……」

思わず深々と溜め息を吐いた。いや、いいんだよ別に。強いのは、良いことなんだ。本当二人共申し分ないですよ。もったいないくらい。でもね?物には限度ってものがあるでしょうよ。


さて。質問はこれくらいで十分だろう。だいたいは分かった。色々と大変な部分もあるけど……でも僕は、二人を採用することにした。生気を与えるのには抵抗があるが、仕方ない。それに、この二人は大丈夫だという気がした。本当に、ただの勘なんだけど。僕は、ゆっくりと告げた。

「お前達と契約する。名を与えればいいんだよな?」

契約の仕方は、だいたい名を与えて主の名を教え、その後条件を交わすというものだ。だがたまーにそうでないこともあるらしいので一応聞いておく。

「うん。それでいいよ」

どうやら問題ないようだ。名前、か。変な感じだな。僕自身に本当の名前がないし、他の人に名前を付けるなんて、違和感がある。けど……でも、何故か僕には直感的に二人の名前が浮かんだ。

「赤髪はハルト、金髪はシオンだ」

簡単な名前だ。浮かんだ時は違和感なかったが、ちょっぴり不安になって二人の表情を伺ったが、すぐにそんな不安は消えた。二人共、とても満足そうに笑っていたのだ。

「いいだろう。気に入った……お前の名は?」

赤髪__いや、ハルトが尋ねた。

「レイだ。こちらの条件は、主に三つ。僕を絶対に裏切らないこと。僕に嘘は吐かないこと。僕が死ぬまで、僕だけに仕えること。契約期間は、僕が死ぬまでだ」

名乗ってから、契約の条件を言った。こういうのは複数作るよりも、簡潔な方がいい。

「受け入れよう。ボクの条件は、キミの生気を週に二回程奪わせてもらうこと。これだけだよ」

「俺の同じだ」

互いに条件を掲示し、それを受け入れたら__

「…これで契約は成立したんだな?」

「うん……あ、契約印はどこにする?」

一応契約は成立したようだ。契約印……どうしようかな。少し考えて、僕は決めた。

「左手の甲に」

すると、一瞬チリッと焼けるような痛みの後に左手の甲を見ると、十字架のようなマークが浮かんでいた。多分、これが契約印なんだろう。ちょっとかっこいい。

「じゃあ……これからよろしくね。ハルト、シオン」

従者が二人できました。


さて。持ち物オーケー、従者オーケー、魔法もとりあえず使った。次は何をしよう?やっぱり、街……とかに行くべきか。今後のことについて悩む僕に、シオンが話しかけた。

「ところで、レイの職業(ジョブ)って何?」

……そういえば、何も教えてなかったな。忘れていた。お互い何も知らなければやりにくいだろう。

「命主だよ」

「うん?……命主?!」

「は?!」

僕が答えると、二人共何故か物凄く驚いた。信じられないという顔だ。……なんでだ?僕の顔から疑問に思っていることを察したのか、ハルトが答えてくれた。

「命主っつったら、あれだろ。とにかく凄えだろ。どんな傷も一瞬で治し、病も払う命の守り人ってな。数は少ねえが万能だし、人間共にはめちゃくちゃ重宝されんだろ?」

「いつだったか戦争の時、命主がいればそれだけで軍の士気が上がるーとかなんとかで、超人気だったし」

……何それ。命主ってそんな凄いの?!初耳なんだけど。神様め、騙したな。僕は目立ちたくないってのに……

「まぁ、色々あって……説明するのめんどくさいな」

自分のコミュ力のなさがよく分かる。というか、僕が天遣なこととか異世界から来たこととか、話した方が……いいよな。うん。

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