第8話 セイムさん、レイクくん、リイナちゃん
ジジイショック!ジューローショックよ!
リイナの声?が頭に聴こえてくるんだ。これが念というものなんだろうか。詳しくはわからないが…。
〈ミンナニハワタシノコエ、キコエナイノ。センニンサマガハジメテヨ〉
みんなには聴こえていない。わしにしか聞こえないって事はわしにも念が使えるのだろうか?よし!わしにできるかわからないが、頭の中でリイナに向かって念じてみる!
〈ワレワレハ、ウチュウジンダ〉
〈ウチュウジンッテナニ?〉
すご〜〜い通じた〜〜〜!初めてで通じるってわしすごくない。すごいよね、わし!
と優越感にひたってるとレイクが
「なあ仙人さま、ウチュウジンって何?」
……………念じたつもりが口に出てた。
恥ずかしい〜〜〜〜セイムさんにボケ老人だと思われる〜〜〜〜〜。
「お言葉に甘えてお世話になろうかのう。セイムさんよろしく。レイクくんとリイナちゃんもな。」
無かった事にしてやったぜ〜〜〜!ウチュウジンのくだり、なかったことにしてやったぜ〜。
「こちらこそお願いします。ところで仙人さま…ウチュウジンって何ですの?」
「がび〜〜〜ん」
わしは小さくつぶやいた・・・
※※※※※
道すがらセイムさんに色々と聞いてみる。先ほどのひげもじゃに何でからまれていたのか。
「彼の名はゲフン、ヌル族の村長の息子でして…。親同士が決めた私の許嫁なのです。」
あのひげもじゃ本当にゲフンっていうんだ…
どうやらこの国は王城を中心として土地が肥沃な東のナル地区とケル地区。西の広大な森林に住まう森の民のヌル地区とネル地区、森の民はそれぞれの地区ごとに2部族に別れており、ゲフンの父親が村長のヌル族、セイムさんの父親が村長のネル族との事。
元々は森の民として同じ一族だったのだが、長い年月を経て2つの部族に分かれ、いがみ合うようになったと。
しかし、豊かな東のナル地区とケル地区の台頭により、貧しい森の民が差別の対象になるにつれ、
これではいかんと懸念した両部族の父親達が、娘と息子の婚姻を結ぶ事で、昔のように手を取り合い
一致団結し、東の民と対等に渡り合おうとしたらしい。
だがそこには思わぬ落とし穴が…
「彼は歳も私と近く、顔も悪く、頭も弱い人ですがそこは問題ではありません。親の決めた事です、逆らうつもりは毛頭ありません。しかし、私は許せないのです。あの方の…ひげもじゃのもじゃもじゃな体毛の毛深かさがだめなのです!」
……セイムさんは真面目な顔をして力強く言いました。
色々とツッコみたいことはありますが、アイツ本当にひげもじゃって呼ばれてたんだ…。
「そこまでの深い理由があるならばしょうがないのう。セイムさんは悪くない、気にするな。」
ものすごく無責任な台詞をはきつつ、適当にセイムさんの肩をもつ。
「だから何度もお断りしたのですが、何度も何度も諦めずに求婚しに来るのです。忘れていましたの、あの人が頭が弱い人だということを…。しかも並大抵の頭の弱さではないことを…。そうだわ、彼はチャンピオンよ!頭の弱さのチャンピオンなんだわと思い、今回はこちらの本気を見せようと、レイクとリイナを引き連れて私→リイナ→レイクの順番で伝言ゲームのように、最後はレイクに罵倒してもらうという行為を続けてましたら、急に暴れ出して私達を襲ってきましたの。わけがわからないです。」
えっ、ひどくない?何その精神攻撃。しかもリイナはしゃべれないのに、伝言してるフリだけ…。リイナとレイクは、完全にとばっちりだなこれ。
「この“ひげもじゃヤロウ”、“親のスネかじり”、“右だけ二重ヤロウ”って力強くオイラが言ってやったんだよ!」
いや、そんなに得意げに言われても…レイク。ちょっとひげもじゃに同情するな。そりゃあ怒るよな〜〜。
「そんな時、襲われそうになった私達を庇うように、ちょうどど真ん中に降臨なされたのが仙人さまでした。本当に助けていただいてありがとうございました。」
……ちょっとセイムさんが怖いな〜〜〜と思った道すがらでした。