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第68話 お金の価値

 「これはお金でチュー。お前等田舎者の森の民は見た事ないでチョー。っていうかお金自体知らないんでチョーチュチュチュ」

 すんごい小バカにした顔で見てくる。


 確かに森の民ではお金はない。基本助け合いの精神なので、ほとんどタダか物々交換じゃ。貨幣制度なんぞ必要ないのじゃ。


 森の生活には全く必要ないのじゃが、わしはゆくゆくは城下町に出かけるつもりじゃからがっつりお金の価値について聞いてみるか。


 「ほう、それがお金というものか、初めてみたのじゃ。ネズミさんすごいのじゃ〜。」


 「そうだろ、こんな田舎でチュからな。この1小バッキャ1個と薬草全部を引き換えてやろう。お得じゃろう?」

 笑いをこらえるような顔でそう、告げてくる。


 確かに貨幣制度のない森の民ではお金の価値なんぞわからんじゃろうが、わしは地球での経験がある。そう簡単には騙されんわい。そもそも、それが本当のお金さえ疑わしい、ちょっと聞いてみるか。


 「いや、そもそもそのお金というのが、どういう物かもわからんのにはいそうですかというほど、わしゃボケていなんじゃ。本物かどうかもわからんしな。そのお金偽物なんじゃないかな?」

 と疑いの目でネズミをチラッとみる。


 「いや、偽物ではないでチュよ。ちゃんと城下町で流通している貨幣だチュよ。」

 必至だな。偽物の貨幣を用意するほどの悪知恵は回らんか。


 ここでネズミが貨幣の説明を簡単にしてくれた。


 お金の素材は粘土層から出るバッキャムとよばれる粘土。この粘度は特別な物ではなく、希少性の高い素材ではない。もちろん森でも出土する。この粘度が優れているところは、釜で焼くと、固まって金属のような物質に変化するのである。伝導率が高く軽い。地球の鉄に似ているかな……鉄は軽くはないが。この世界では加工されて、鍋や鉄板、武器に利用され広く使われているポピュラーな物じゃ。


 そんなバッキャムを王城では型に入れて焼き上げて硬貨を製造し、城下町で流通させているらしい。もちろん偽造されないような配合がなされているらしいのだが…。


 お金の単位はバッキャ。バッキャムだからバッキャ。安易じゃがそんなもんじゃろう。


 「ほうほう、なるほどのう。」

 と感心したふりをする。


 「だから偽物ではないのだチュ。ちゃんと本物なんでチュー。」


 「それ以外の貨幣は何があるんかいのう?」


 小バッキャ、中バッキャ、大バッキャ、丸バッキャと連続して言うと早口言葉みたいで噛みそうだが、その順に金額が大きくなっていくらしい。


 今見せてもらっている小バッキャは細長い円筒系。たばこ1本ぐらいの大きさ。半分に折れるようになっていて、繋げることもできる。まあ小銭扱いじゃな。


 中バッキャは平ぺったい、たばこの箱ぐらいの大きさ。大バッキャは中バッキャより1周りおおきいぐらい。その上にある丸バッキャの大きさは金メダルぐらいだが丸パッキャなんかは金額が大きすぎて大手の商人ぐらいしか流通していないのではないかと言っていた。


 なるほど…あとは物価だな。いったい各バッキャの価値がいくらか知りたいがそんな簡単には教えてくれんじゃろう。なにせ薬草を1小バッキャで買い取ろうとヌカしておるのじゃから。


 「ネズミさんのその高そうな服、いいセンスしておるのう。わしも一度でよいから、そんなセンスのいい服着てみたいのう。城下町ではおいくらぐらいなんですかいのう?」


 「おうお前にもわかるか!このセンス!わしのお気に入りで1着5大バッキャだチュー、奮発したでチュよ。」


 チョロイな。よっぽど自慢したいのか。どんどんしゃべってくれる。もう1小バッキャで買い取ろうとしてる事忘れてない?っていうぐらいしゃべってくれる。


 んじゃあ、どんどん核心に迫りますか。


 「ネズミさんクラスになると、おいしい物もたくさん食べているのでしょう。なんか城下町おすすめの食べ物を紹介して欲しいのじゃ。」


 「今城下町で流行っておるのはパクパというトウモロコシ粉を薄〜く円系に伸ばしてその中に色々な食材を入れたのが美味しいのじゃ。

1枚でお腹いっぱいになるでチュー。それでも1枚3小バッキャという安さが人気のヒミツだチュー。」


 「ほう、それは美味しそうですじゃ。このジジイも死ぬまでには

食べたいものですな。ここらへんではトウモロコシがとれないのでわからないんじゃが、城下町でもトウモロコシ粉は高級品なのかのう?」


 「まあ、森の民には贅沢品でも、城下町では生活必需品なのでチュからそんなに高くないでチュよ、市場では100g=2小バッキャぐらいじゃないかチュー。もちろんわたしはもっと安く仕入れる事ができるでチューけどね。」

 次々と聞いてもいない自慢話を言ってきているが、うなずきながらも、お金の価値を換算していた。


 軽食3小バッキャ、トウモロコシ粉100g=2小バッキャ、まあ今まで生きた日本円に換算した方が分かりやすいな…円に変換するとまあ適当じゃが、


●1小バッキャ…100円

●半分に折った1/2小バッキャ…50円

●1中バッキ…1,000円

●1大バッキャ…10,000円

 たぶん想像じゃが1丸バッキャは100万円ぐらいするのじゃろうか。まあだいたいこんなもんだと思う、この世界のお金の価値は。


 関係ないけど、だれかドラゴン○エストのお金1ゴールドは日本円にすると、いくらか計算していた人がいたっけな。1ゴールドだいたい80円〜100円だったけ?だからあながちこの価値観も間違ってはいないと思う。よしこれでいこう!よいな!


 だいぶ考えがまとまったところでこのくそネズミ、たった100円でわしから薬草を持っていこうとしやがって、もうそろそろよいかな。聞きたい事も聞けたわけじゃし、こいつはもう用無しじゃ。


 「おいジジイ聞いているのかチュー。もうわたしは疲れたでチュ、さっさともってこいよ、薬草。全部だぞ全部。」


 といって持っていた1小バッキャを投げ捨てた。1小バッキャはキレイな放物線を描いてわしの後ろに落ちた。1小バッキャ=100円をわしにはいつくばって拾えというのか、このネズミ。もう我慢できん、我慢の限界じゃ〜〜〜〜。


 落ちていた1小バッキャを拾いあげ、

 「あっざ〜〜〜〜す。いただきま〜〜〜〜す。」

 わしは強く言ってやった。

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