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第66話 招かざる客

ネル族の部落に戻ってきてからは割と平和な日常を送っていた。森の民統一に向けてのプランというか仕事は多かったが、忙しいなりにも充実した毎日じゃった。


 ある日、そんな安穏な日々をぶち壊す出来事が起きた。


 昼食を食べ終わってまったりと過ごしておると、村の入口の方から悲鳴にも似た叫び声があがった。なんだと思い入口の方に歩み寄っていくと、そこには盗賊のような薄汚い格好をした粗野な男達が2〜30人群がっておる。


 いきがって肩で風をきるような感じで、顔も汚ったない顔じゃ。汚れているとかではなく、ほんと〜〜〜にぶっさいくじゃ。碌な奴がおらん。すぐに森の主力部隊、狩りの精鋭達が集まってくる。その先頭にはセコスが立って、男達に問いかける。


 「おい、てめーら何者だ。ここを森の民の部族ってわかって入って来てるのか?あん」

 ものすごい、メンチじゃ。わしが高校生の時こんなメンチ食らったら3滴はもらすじゃろう、というぐらいのメンチじゃ。


 「だれだ〜お前は。俺達は護衛だよ、護衛。城下町で雇われた正規の護衛だよ〜〜。手を出したらどうなるかわかってんのか?森の民とか関係ね〜んだよ。俺たちは。」

 ブサイクな上に憎ったらしい顔させたら、日本アカデミー賞、助演男優賞並みじゃなコイツ。それぐらい憎々しい顔で挑発する。


 セコスは一応メンチ切ったまま考えるように黙る。


 「護衛?いったいだれの護衛じゃ。」

 とわしが言うと、盗賊達の後ろの方から護衛2人を付き従える男がゆっくりと現れた。


 あれは見覚えある顔だ。確か…ネズミだ。いや、ネズミとはその容姿から俺が付けたあだ名で本当の名前は知らない。語尾にチューをつけるのは分かりやすくするわしの優しさじゃ。


 「これはこれはジューロー殿だったかな?覚える価値もない矮小な存在だと思っていたが、優秀な私の脳はどんな虫けらのような存在も覚えているもんでチューね。」


 日本語としてチューを入れるとおかしくなるが、わしの優しさじゃ!。優しさじゃぞ。


 「ふん、そんな虫けらのわしに何のようじゃ。」


 「チューチューチュー、午前中にゲタンの所に寄ったらお前はここだと聞いてな。そんな事よりわたしは、歩き通しで足が疲れたでチュー。先にどこかくつろげるところでお前等に話しをしてやるでチュー。はやく案内しろでチュー。」


 いかんチューをつけるとよいに不快感が2割アップじゃ。ムカつく奴だな…いきなり無双かましてやろうか。セコスを筆頭に男衆の殺気が凄まじくなってきている。やばい、ブちぎれる寸前か。セコスに抑えるように指示を出す。


 「その前にこの盗賊のような汚い男達はお前の兄弟か?ネズミ。ネズミ算式の増えて大変だな、お前の母親も。」


 「チューーーーーーだれがネズミか!それにこいつらは知らん、わしに勝手についてきただけじゃ。こいつらが何をしようとわしの知るところではないでチュー。」


 「そうなのか?さっき城下町で雇われた正規の護衛だと言っておったぞ。」


 「たまたまじゃないのか?わしではない他の雇い主の護衛がたまたまはぐれて、たまたまわしの後を勝手に付いて来たとかでチュは?」


 「ほう、たまたまじゃと…」


 こいつあくまでもシラをきりやがる。問題を起こしても自分のせいじゃない。しかし、城下町の正規の護衛に手をだせば、後々面倒な事になる。


 「そうだよ〜〜、俺たちはたまたま雇い主とはぐれちまった護衛だよ〜」

 と言いながら、男達がそこらにある、篭や荷物を蹴り始める。なにかあれば暴れるぞという警告のつもりか。


 「まあ私には関係ないことでチューけど、私に何か粗そうがあれば何をするかわかりませんけどねーチュー」

 ネズミがちらっと盗賊の集団に目配せすると男達はおとなしくなる。


 ニタニタ笑いがムカつくな、こいつら。全員ヘラヘラ笑いおって。完全に森の民をなめておるのう。どこからその自信がくるのか問いつめてやりたいわい。そんな雰囲気を感じ取ったのか、森の男達がもう我慢ならんという感じで動き出した。


 「なめてんじゃねーぞ、コラ!」

 セコスが先頭をきって、盗賊のブサイクに掴み掛かり、右腕を振り上げ殴りかかろうとしたその時、


 「やめなさい!セコス、その手を降ろしなさい。」


 振り向くと、族長のスブムだった。まだ解任前なので族長なのじゃ。それとまだムッキムキなのじゃ…


 「なに言ってんだ親父、ここまでなめられてやってられっか!正規の護衛だか何だか知らね〜けど、我慢出来るかよ!」

 盗賊を掴んだ手を振り払いスブムの方に向き直る。


 「冷静になれセコス。お前がいの一番に掴み掛かってどうする。大変失礼しました、皆様。私が族長のスブムです。遠いところお疲れになったでしょう、さっさこちらへ。」

 スブムが低姿勢で案内しようとすると


 「へ〜〜こんな雑魚い奴でも族長になれちゃうんだ〜〜。よっぽど森の民って弱いんだね〜。俺でもなれちゃうかもね〜、ぺっ」

 と言ってスブムの顔にツバを吐く。


 その姿を見て盗賊達が大声でバカにして笑う。うへへへへへへ、あははははははははははいいいひひひひひひひ、えひひひひひひひ


 するとネズミが、

 「本当にここの森の民は腑抜けばっかりでチューねー。あんな事されたら、わたしだったらもう有無を言わさず、ぶん殴ってやりますチューけどね。」

 とニタニタ笑う。


 その声を合図にまた盗賊が大声で笑う。うへへへへへへ、あははははははははははいいいひひひひひひひ、えひひひひひひひ


 森の民はもう怒りを通りこして目が座っている。だれも一言も発しずに、顔が一様に無表情だ。そんな中でもスブムは動じず、ツバを服で拭き取り、笑顔を絶やさずわしに声をかける。


 「それでは、ジューローさん、こちらの方々は人数が多いので、右奥の広場にて接待させていただきます。ジューローさんは私の家の奥をお使いください。では。」

 盗賊どもはスブムの後を大人しく付いて歩いていく。その後ろにはセコスを先頭に狩りのメンバーが続く。


 するとネズミが

 「本当にあんな奴が族長とは、ヌル族のゲタンもそうだが森の民は頭悪い奴しかいないんでチューかね?チューチューチューチュー。」


 もう我慢ならん言ってやる、言ってやるぞ〜〜〜〜〜〜〜このネズミ野郎!!!!


 「そんなにいじめないでくだされ〜ネズミさん。わしらはか弱いんですから〜。」


 とめっちゃへっぴり腰で言ってやった。

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