第62話 美人塩
俺達の長かった夏休みも、もう終わりじゃ。この2泊3日の合宿もマドンナなあの子との距離を縮める事はできなかった。帰ったらまた大勢の取り巻きの1人だ。しょせんモブだ…俺なんて。
そんなモブからの脱却。勇気ある告白だ。今しかない!俺にはこの夏しかないんだ!そんな想いを歌にしました。聴いてください、
「第3章 マドンナに告白」
長かった〜〜〜2泊3日の合宿〜〜〜〜♪
短かった〜〜〜マドンナとの会話〜〜♪
「つまようじとって」「はい」
これだけ〜〜〜♪
モブモブモブモブおれはモブ〜〜〜♪
あの娘にとってはおれはモブ〜〜〜♪
そんなおれでも告白するよ〜〜〜〜♪
勇気をもって告白するよ〜〜〜〜♪
本当にするよ。しつこいけどするよ〜〜♪
マドンナの隣の美代ちゃんに〜〜〜♪
だいぶぽっちゃり美代ちゃんに〜〜♪
おれはデブ専じゃないけど〜〜〜〜♪
最後に言うよ〜〜
今どきマドンナって♪(プププププ〜〜〜)♪
ジャジャジャン!
どうじゃせつないじゃろう?
と振り向いたがゲタン、ビークとも無反応じゃ。聴いてない。
「それで美代ちゃんに告白したのかよ!どうなったんだよ!」
と意外にもエメリさんが、くいついてくれて嬉しい!
「ジジイもう準備は終わったのかよ。みんな集まってるぞ」
セコスが遠くからわしを急かす。
もうそんな時間か。この2泊3日のバカンスも終わりじゃ。短かったけど思いで深いエピソードばかりじゃ。
ビークと一緒に砂浜を走り抜けた事。
ビークと一緒に砂浜で遊ぶ女衆を眺めた事
ビークと一緒にわしが考案した水着を着て
戯れる女衆をくいいるように眺めた事
ビークと一緒に女衆を…
「もうええわ! ビークと遊んでばっかりだな。仕事しろよ。遊びに来たんじゃねーぞ、ジジイ」
わしの感傷をだいなしにするゲタン。せっかくハゲ四天王に入れてやったというのに…そんなわしの感傷は置いといて、ビークと最後の挨拶じゃ。
「ビーク、楽しかったぞ、この3日間。お主と会えて本当によかったわい。」
「わしもじゃ、こんなに心を許せる友が出来て楽しかったぞ。そんな心の友にわずかながらプレゼントじゃほれ。」
とビークが小さい小袋を渡してくる。
なんじゃと思い小袋を開けると…
塩じゃ…10gぐらいの少ない塩じゃ。何か変わった塩かと思い舐めてみる。…塩じゃ。何の変哲もない塩じゃった。いったい何じゃこれは?と思い聞いてみると…
「おぬしのアイデアを現実に作ってみたのじゃ。命名「美人塩」じゃ。ちなみにこれはセイムさんの塩じゃ」
「なにににににに〜〜〜〜〜〜〜〜い!」
びっくりするわし。そういえば前に冗談で言ったけれども…説明を続けるビークのジジイ。
「本当はセイムさんから純粋な塩100%を作りたいところだが、だいたい汗1リットルから約10〜25gの塩が出来る計算じゃが、さすがにそんなに汗を集めれん。それ以前に本人には断られた。」
「えっじゃあ何この塩は?美人塩じゃないの?」
「わし100%じゃ。ビーク100%塩じゃ。てへっ」
「なにににににに〜〜〜〜〜〜〜〜い!ぺっぺっぺっっっっ舐めてしもうたじゃないか、わし!」
「うそじゃ。本人にも断られたが諦めきれないわしは、セイムさんが入った海のまわりの海水をこっそり集めて回ったのじゃ。何度も何度もな。」
変態じゃな…このジジイ。本人に断られた以上は諦めろよ…。
「だから100%ではないが、美人塩セイムさん1%で売り出そうと思う。どうじゃろう?」
「1%って!ほとんど入ってないんじゃないの?っていうか海水集める為に自分も入ってるよね海に?それじゃあ確かにセイムさん1%あったとしても、ビーク20%は入ってないその塩?売れるのか?」
「…例えわしが20%入っていようとも、残り1%にかける男達がいるのじゃ。決して諦めない不屈の漢達がな!」
「いや、格好良く言ってもダメ! 言ってる内容全然格好良くないよ!単なる変態だよ、マジで」
「もはや、わしの意思だけではどうにもならんぐらいの大プロジェクトなのじゃ。わしが死んでもそのプロジェクトは引き継がれていくじゃろう。」
遠い目をするビークを余所にわしは砂浜を走り出した!先に出発をしたゲタン一行に、わしを置いて先に出発したゲタン一行に砂浜を泣きながら追いつこうと走り出したのじゃ。
こうして、美人塩のおみやげを胸に秘めたままわしらの長い海岸遠征は終わったのじゃ。この美人塩が大ブームを起こすのはまた後の話であった。その後王城でも一世風靡するのであった。




