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第61話 日時計

 次の朝、というかわしは夜中からずっと起きておるんじゃが、どうせ年寄りは早く寝て早く起きるから大丈夫だろう、と言われて夜中ず〜〜〜っと起きておったのじゃが…


 「うるっせ〜〜〜なジジイ。しつこいんだよ。何回も謝っただろう。」


 「セコスは冷たいんじゃ。夜中も半分半分で交替だっていったのに…起きてこないんじゃ。そうじゃ、わしは年寄り…寂しい年寄りじゃ。夜中1人ぼっちで、孤独な老人じゃ…」


 「ごめんね。これでいいだろ。謝ったからいいだろ。」


 「軽いんじゃ!来なかった上に軽い!セコス元気じゃな…昨日は眠れたか?」


 「うん、グッスリ。」


 「お前をこの塩の町、観光促進大使に2年間任命する!嫁さんを置いて単身赴任じゃ。貴様も味わうのじゃ、わしの孤独を!」


 「なんだ、その観光促進大使って。そんな役職ね〜よ。単身赴任なんてしね〜〜し、新婚だし、絶対やだね。やらね〜〜。」


 というやり取りを見かねてゲタンが口をはさむ。


 「で、もういいか内輪もめは。早い所、集まっている村人にこの日時計の有用さを説明してくれんかジューロー。」


 そうなのじゃ、昨日の夜から朝まで印付けがようやく終わったのじゃ。それを手始めにこの村に住む人たちに有効利用してもらって、ゆくゆくは森の民のスタンダードにしていこうという計画なのじゃ。


 特にこの村には塩製作という仕事があるのでうってつけじゃ。日時計を導入する事によって、いままでは感覚で作業していたのを時間管理を行い、より生産性を高めてもらう計画じゃ。


 今、日時計のある広場に村の民全員に集まってもらった。若い奴らの中にはガラの悪そうな奴らがいっぱいいる。ほとんどが塩精製の小屋で働いている各家庭の大黒柱ばかりだ。

 さすが海の男。毎日の海水運びで体ががっしりしている。まあ海の男でなくても森の民は男も女も基本体がガチムチじゃがな。

 まあ当然といえば当然か。毎日厳しい自然の中に身を置いておるのじゃ、体力がないと生きてはいけないのじゃろう。


 そんな事を思いながらも、集まった村人に日時計の説明をする。


 「…この印を柱の影がさせば、中天、ちょうど陽が真上の位置で日中の半分じゃ。いつもバラバラじゃったが、この1目盛りの間を昼食とする。」


 などと、最初は大まかに時間の概念を説明していく。


 「これで、何が便利になるかというと、例えばこの村では多くの者が塩づくりを生業としておるが、海水を蒸発する時間などを計っておけば、今まで4〜5人でいちいち海水の量を確認しに行かなければならなかったのが、この印が2目盛り進んだところで集まればいいので、今まで以上に効率よく仕事をこなせるようになるとかな。もちろん常時火の見張りは必要だとは思うが。」


 と説明したら、感嘆の声があがった。


 「ほかにもあるぞい。恋人達に最適な使い方なら、夜に月明かりの影がこの印を差す時に岬で会おうと約束しておけば、今までのように彼女が家を出るのをじっと木陰から見続けるといったストーカー行為をしなくてもよいのじゃ!。

 他にはお父さんがこの印を差すころに帰るから、その前までは自由に会えるねとか。若者いちゃいちゃパラダイスじゃ!」


 「「「「おおおおおお〜〜〜〜〜」」」」」

 あちこちから歓声があがる。先ほどのガラの悪そうな兄ちゃんたちもいい笑顔じゃ。


 「まだあるぞい、お母さんたちにも最適な使い方としては「この印までには帰ってきなさい」と子供達への目印や、お父さんが酒を飲むのはこの印までね。など、活用法は無限じゃ!あなたのアイデア次第じゃ!」


 「「「「へえええええ〜〜〜〜〜」」」」」

 お母さん方にも大好評みたいじゃな。


 すると、そんな喜んでいる皆の前に男3人が出てきていちゃもんつけだした。

 「おい、ジジイごちゃごちゃうるせえんだよ。俺はこんな印なんかなくてもいままで十分過ごせてるんだ。おまえらもこんなくだらね〜もんで喜んでるんじゃねえ!」


 先ほどの歓声が静かになる。


 「俺はジジイが気にくわねえ。こんな日時計だか何だか知らねえけどよ〜何でポッと出のジジイの言う事を俺たちがありがたがって聞かなきゃいけね〜んだ。面倒くせ〜。おい、ジジイ俺と勝負しやがれ!俺様に勝ったら何でも言う事聞いてやるぜ。ただし俺様に負けたら、この日時計ごとぶっ壊してやる、へっへへへへ。」


 わしはゲタン、セコス、ビークの顔を見回すが…我関せずって顔じゃ。面倒くさい事はジジイが始末しろ、どうせ言っても聞かないだろうからという様な顔で言ってくる。


 しょうがないのう。争いたくはないのだが…


 「よし、分かったわしが直々にお主たちを倒してやる。ただし、時間と勝負はコチラで決めさせてもらうぞ。」


 「へっそれぐらいはハンデだ、ジジイにくれてやるぜ。」


 「それでは、夜月明かりがこの印を差す頃に海辺のポコポ岬に来い。絶対に遅れるんじゃないぞ。しっかりと、この日時計で確認するんじゃぞ。わかったな!逃げるなよ。」


 「ああ、この印が差した時だな、わかったぜ。へっへっへその時まで首を洗って待ってな。楽しみだぜ。」


 と言い男達は引き上げて行った。


 ……………………………………村人たちは思った。

 「「「「日時計めっちゃ活用してんじゃん」」」」」


 その夜わしはめちゃめちゃ寝た!いや、だって昨日寝てないんじゃもん。もちろん約束はすっぽかしましたけど何か? まあ、日時計にはそういう使い方もあるんじゃ!という事を身を持って覚えさせたんじゃ。


 その後村では日時計の待ち合わせが流行って海岸が恋人同士でびっしり埋め尽くされたそうな…あっわしにからんできた男3人組もめっちゃめちゃ有効利用してるって。


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