第60話 ミチとミカの部屋
「ぼええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「なに、なにどうしたのミチ、ジャイ○ンみたいな声出して…」
ここは毎度のミチとミカの空間。体育館ほどの大きさにびっしりと敷き詰められた箱が並んでいる。その隙間に挟まりながら仕事をするミチが急に素っ頓狂な声を上げた。
「こ、これ、みてよミカ。」
ミチが箱の一角を指で指す。
「なに、あっジューローがいる星じゃない。何か介入者の動きがあったの?」
そういいながらミカが覗き込むと、そこにはジューローが夜月明かりの下、発光しているる映像が流れていた。
「まっまさか…これは…あの伝説の…」
「何?知ってるのミカ、今までにもこんな事あったの?」
「私も噂で聞いた事があるだけよ…小さい子どものうちに売り物になる星に送りこんで、徐々にその星の生きものを殺し、殺し尽くし、売り渡すという種族がいるっていう事を。その種族っていうのは月を見るとブルー波によって大猿になるという伝説の戦闘民族…」
「やめてーーーーーーーーそれ。その話なに?サイ○人じゃん。しかもフリー○編ぐらいじゃない?そのネタ…怒られるからやめて!」
「すんません、ちょうど世代なんで?」
てへって顔をするミカ。
「なによ〜世代ってあんた地球人でもないくせに…まさか、あんたひょっとして界○神さま?
星々を管理してるから、あんたって界王○さまだったの?ミカ。」
「やめんか〜〜〜い!ひっぱるなってゆーの、そのネタ…いいミチ、私が界王○という事は内緒よ。」
てへって顔をするミカ。
「まあ、冗談は置いておいても、これは初めてみるわ。」
「この発光している光は、すごく魔素に近い成分なんだけど魔素ではないのよ。この発光は今回で3回目だったんだけど、最初の頃より段々と光が大きくなっているわ。唯一共通点をあげるとすれば、月の光がコバルトブルーに一番輝やく時間だという事だけ。しかもこの光はだれにも見えていないの、本人でさえも。」
ミカは考え込む。
他の星にはもちろん、魔法を使える世界、人間ではなく魔族が支配する世界はいっぱいある。その世界には必ず魔素が存在している。魔素が不可欠なのだ。地球でいう酸素と一緒なのだ。普段は全く意識などはしないが、確かにそこに存在する…だから、魔素がないと魔族は生存できない。もちろん魔法も使えなくなる。
ジューローの転移した星には魔素が全くない。だから、魔族・魔物・亜人などの生物もいないし、魔法という発想すらないのだ。それなのに、先ほどの光には魔素ではない魔素に近い成分…
まさか魔素とは違う新たな要素が誕生するのか…そんな事、この宇宙開闢以来ではないのか…果たしてそんな事がありうるのだろうか?
しばらく黙り、映像に魅入る2人…その沈黙を破る様に響く低い笑い声が…
「くっくっく、ふふふふふふっっっっっ」おもしろい、おもしろ過ぎるよジューロー。」
ミチがふと見ると、姿・形はいつものツインテール少女だが、顔の輪郭に沿って20代男性に見える笑い顔がノイズとともに重なって不気味見える…
「ミカ恐! 顔が男になってるじゃない。2重人格者かあんたは!」
「くっくっく、ごめんごめん、ミチ。本当におもしろいわ。こんな事は初めて。ゾクゾクする…」
笑い終えたミカはまたツインテール少女に外見が変わり、身震いをする。
「今のところ、介入者のせいなのか、月明かりのせいなのか、ジューローの器なのか全くわからないけど、引き続き観測して何か変わった事があれば、また声をかけるわ。」
ミカの返事はない。
ずっと考え事をしているように指を口元に添えて、ほおずえをついている。なんどもミチが声をかけるが反応はない。ミチは次第に声をかけるのをあきらめ、仕事にもどる。
「これはもうしばらくしたら、あの方に報告したほうがいいな」
今では白い霧のようなものがかかって中を伺いしれない星の箱を見ながら、ミカはつぶやくのであった。




