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第58話 ジューロの夜

 次の日わしら一行は、塩爺ことビークの長屋に日時計を作るために、まだ陽が昇る前に集まった。といってもわしと、眠そうなセコスの2人だけだが。

 広い敷地があり、なるべく人通りが多くみんなが確認できる場所を探して、森から切り出した太い丸太を地面に垂直に突き刺す。ちなみに切り出しから運搬、垂直刺しはわしが行った。もう忘れ去られているが、チート能力「重力変換」だ。


 別に隠してたわけじゃないがセコスはそれを見て

 「すっすごいっすね。ジューローさん」

 と急に敬語になってよそよそしくなった…よっぽど驚いたようじゃな。


 後は地味な作業じゃ…まずは陽が昇った影を起点に、太陽が真上に来た時がお昼時。陽が沈みきった時が日没。と印を打って、間の時間は適当に打っておいて、後々に時間を精査する予定じゃ。

 そして、その印打ちは次の日の夜明けまで続く。夜中は2つある月の、第一月の明るさで打ち付けていく。これを2人で交替交替、主にセコスを中心に…だいたい9割セコスでと伝えたらセコスマジ切れ!

 自分はまだまだ成長期だからいっぱい寝ないとダメなんだぞ!という言い訳を臆面も無く堂々と主張して怒った。年寄りのほうが、寝る時間短いから、夜中にすぐおしっこに起きて

なかなか寝付けにくいからジジイがやるべきだ!と主張した。


 もっと年寄りを大事にせないかんよ!

 結局交替で行うことにした。そうして2日目の夜も更けていった。とりあえずセコムが先に帰ってわしが先に印打ちをする事になった。


※※※※


〈ジューロー目線〉

今は深夜0時くらいであろうか、第1月が天上付近で煌々と輝く。約束の時間(といっても適当だが)になってもセコスは現れず…あのやろう!わしに丸投げする気じゃな…あとで折檻じゃ!

 しばらくやる事がなく、月をボーっと見上げる。今日は特に地上に降り注ぐ月明かりのコバルトブルーがキレイに見える。

 ……ずっと月をボーっと何も考えずに見上げる。

 ……すると急に耳鳴りが聞こえ出し、除々に大きく鳴りだす。


 またきたか? この感じ。


 大きくなるにつれわしは目を閉じる。目を閉じるとしばらくふわふわと浮いたような感じになる。いや、実際には浮いてはいないと思うのじゃが…なんというか、高揚感に似た感じなのじゃろうか。除々に手足の先からじんわり温かくなっていき、最終的には身体全体が温かいというか、安心感に包み込まれているような感覚じゃ。自分自身がとても満たされ、幸福感を味わえる。


 実は初めてではない。この世界に来て3回目くらいじゃ。それも決まって、月明かりのキレイな夜中。耳鳴りが始まりの合図だが、その耳鳴りも次第におさまってきた。完全に鳴り止んで目を開けると、そこはいつもの世界。煌々とコバルトブルーの光が照らされている夜の異世界。


 ふと、海側をみるとセイムさんがたたずんでおる。こんな夜中にどうしたのかと思いゆっくり近づき声をかける。

「あれ、セイムさんどうしたんじゃ?」


 心ここにあらずといった顔をしていたセイムさんが声をかけて初めてわしの存在に気づいたような顔をした。今から夜更けまでまた一人で印付けは暇じゃからちょっとの間でもセイムさんと時間がつぶせたらと思い声をかけてみる。


 「セイムさん、どうじゃコッチで少しワシと話さないか?日暮れからず〜〜と一人で日時計の印打ちで暇なんじゃ。ジジイ暇なんじゃ〜。」

 と上目づかいで言ってみる。


 セイムさんはクスリと笑って了承してくれた。

 うきうきして、さっきの場所にセイムさんをいざなう。


 ふと今度は森の方をみるとエメリさんが、さきほどのセイムさんと同様に心ここにあらずといった顔でボーッとたたずんでいる。エメリさんにもセイムさんと一緒に近づいて声をかける。

 「あれ、エメリさんどうしたのじゃ?」


 するとセイムさんの時と同様に声をかけて初めてわしの存在に気づいたような顔をして


 「ジューロー?あれ、今ここでなんか光が、あれ?」

 と戸惑いながら話しかけてきた。エメリさんもダメもとで誘ってみよう。


 「どうじゃコッチでセイムさんと一緒に話さないかのう。日暮れからず〜〜と一人で日時計の印打ちで暇なんじゃ。ジジイ暇なんじゃ〜。」

 と、またバカの一つ覚えのように上目づかいで言ってみる。


 エメリさんはちょっと嫌そうな顔をするも、しかたないな〜という態度でOKしてくれた。

 わーいわーい両手に花じゃ。異世界に来て初めてのモテモテじゃ!ジジイじゃけどウキウキじゃ。そのまま3人で、日時計の印を打ちながら朝まで過ごしたのじゃ。


 つきあってくれた2人に感謝。

明日この話しの別サイド、セイムさんとエメリさん視点の話しがありますので、

合わせてみて頂ければ。

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