第56話 ジューローやさぐれる
「眺めるだけじゃ〜〜〜〜」
と2人で黄昏れていた時にある人物が現れた。長屋の扉をガラッと開け、息を切らしながら入ってきた小太りな人が族長を見つけてドスドス入ってきた。
「ぞ、族長、はっ今、女ぜーはーぜーはー・着きはーはー」
うわ〜〜本当に出たよゼーゼーさん。9話と16話に登場して以来、ほったらかしだったのに。再登場じゃ! しかも名前本当にゼーゼーさんで決定。
今、後から来る予定だった女子部隊が到着したとの報告じゃった。その報告を聞くやいなや、わしは脇目もふらずに走り出した。
ふと見ると、ビークもわしの横に並ぶくらいの足の速さで追いかけてくる。ジジイ二人がまるでビーチフラッグかのように砂浜を並んで疾走する。
こわっ、ジジイ二人揃って速いと…こわっ!
やばい、負けそうじゃ…
「ビーク、お主は仕事があるじゃろうが、ほっておいてよいのか。早く戻れ。」
「バカモン!わしなんか飾りじゃ、総指揮なんてうそじゃ!本当は塩なんて若いもんの汗をしぼりとって出来とるんじゃ!わし必要ない!」
「えっーーまじで!んじゃ、女性の汗を集めて塩を作れば大ヒットするんじゃね?ってそんなうそに騙されると思うか!」
「えっーー、その発想なかったわ。ジューロー天才じゃな。絶対需要あるぞ。よし検討しよう。」
と、しょうもない事をしゃべりながらも砂浜を疾走するジジイ2人。
わしは待っていたのじゃ。この時を心待ちにしていたんじゃ。若い女子
達がキャキャいいながら海辺を走る姿を。現代の日本なんぞ、まあ写真に撮るのはいきすぎじゃと思うが、砂浜で座って見てるだけでも変質者扱いじゃぞ。じゃあなんじゃ、そんな扇情的な布切れを人前で着る事自体やめてしまえばいいんじゃ! 海水浴なんて止めてしまえばいいんじゃ。夏なんて、夏なんて〜〜〜〜〜。
「第2章 夏なんて」
(ビークとジューロ、2人そろって砂浜を走るのをバックに。)
ジャジャヤンン〜〜〜〜♪
夏なんて〜〜嫌いだ〜〜♪(あついから〜〜)
海なんて〜〜嫌いだ〜〜♪(砂浜あついから〜)
海水浴なんて〜〜若者達だけじゃ〜〜♪
9割が出会い〜〜〜目的じゃ〜〜〜♪(当社比)
たまにいる家族で〜〜きてる奴〜〜♪
お母さん丸太だよ〜〜♪(水着は着なくていい)
お父さんヨレヨレじゃ〜〜♪(くたびれてる)
子どもはプールいけ〜〜〜♪(海をなめんな)
夏なんて〜〜嫌いだ〜〜♪(嫌いだ)
海なんて〜〜嫌いだ〜〜♪(大嫌いだ)
もう1回
夏なんて〜〜嫌いだ〜〜♪(うそうそ)
海なんて〜〜嫌いだ〜〜♪(本当は好き)
ジャジャヤンン〜〜〜〜♪
とアニメのエンディングのような映像が流れたところでもう目と鼻の先じゃ。
おお、結構みんな砂浜で戯れておる、楽しみじゃ〜〜〜。ここからはゆっくり歩く。べっ、別に楽しみにしてないんだからね。という体でゆっくり歩く。果たしてこの異世界は水着という概念があるのか…
ゆっくり歩いていくとセイムさんがこちらに気付き寄ってくる。
「あっジューローさん、ビータさんお久しぶりです。」
「おお、セイムさん。毎日料理指導ご苦労さんです。順調かな?」
セイムにはヌル族の女衆にどんぐりと豆の調理方法を教えてもらっている為、会うのは久しぶりじゃ。
「はい、みなさんと楽しくやらせてもらっています。」
「ところでセイムさんは海で泳いだりはせんのかの?」
「はい、えっとちょっと格好が恥ずかしいので。どうしようかと。」
えっやっぱり水着あるの?いつもは貫頭衣という布を頭からズボってかぶって腰を紐でしばる服装で下着は履いてないんじゃ。もちろん男女共に。
そこにエメリさんが登場。
「おう、ジジイ来てたのか。それよりセイム、一緒に海に入ろうぜせっかく来たんだから。」
おおっナイスエメリさん。エメリさん良いとこをやっと見つけたのじゃ。3日間一緒にいて初めて良い所見つけたのじゃ。ナイスじゃぞ!
「う〜〜んじゃあ、かぶるの恥ずかしいけど、エメリとならいいか。
じゃあ一緒に行こう。」
と美人二人向こうに準備に走っていった。
楽しみじゃ。ってさっきからビータおとなしいのう。どうした?
「お前海をすすめるな、砂浜を薄着で遊んでいるのをみるのが楽しみなんじゃぞ、わし。あんなものを着て、海で遊ぶの見てなにが楽しいのじゃ。」
といい、遠くを指差す。そこには他の女衆が海に入っている姿があった。ここからではよく見えないが…しばらくすると、セイムさんとエメリさんが着替えて現れた。
そこには……
中国の海水浴場で見られるおばさんみたいな格好をした2人が立って板
いた…。そうあの目出し帽みたいな感じの水着じゃ。
こちらの場合は布をズッポリ頭からかぶって上から下まで同一っていうか、ダンボーみたいな感じっていったほうがいいっすかね。
つまりそんな感じじゃ。
ぺっ!
…すんごいなげやり。




