第53話 ジューロー月に吠える
今日もむなしく日が暮れる。
わしはコバルトブルーに輝く月に向かって吠える。
「禿げてても大丈夫。むしろわざと毎日剃ってるんだからねー。」
月に向かって見栄を張る。
本当は剃ってません。
いや、今回も禿げネタでひっぱるのはやめよう。
本当にむなしい一日だった…
最近の収穫は
●エメリさんの両親を改心させた
●赤い三連星をやっつけた
●シギンに逃げられた
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なんにもしてね~~~わしだけ。
他のみんなは日中、どんぐり、まめを採取、調理法を伝授したり、薬草を採取、乾燥、保管したり、狩猟チームと合同で交流してたり充実した毎日を過ごしておる。
それにひきかえ、なんじゃわしは…
エメリさんにののしられ……
エメリさんになじられ……
エメリさんに叱責され……
ほとんどエメリさん!エメリさんとの思い出しかない!しかもツンしかないし…
ダメじゃダメじゃ、こんな実の無い話ばっかりしていてはダメじゃ!
わしのこれからの展望はこうじゃ!
地球の武器を異世界で生成してドンパチ現地人を無双して世界を手に入れるじゃとか、現代地球に自分だけ帰れて、色々な素材を異世界で売りまくってのし上がるとか、現地の素材で料理を作って大絶賛されて金持ちになるとか、
そんな輝きが私は欲しい!頭の輝きはいらん!
……もうハゲネタはいいっちゅうに。
そしてまだその後のお楽しみはこれからじゃ!
どんどんヒロインが増えて、7人8人増え過ぎた頃に物語も佳境じゃ、1人ずつ結婚イベントを行い、夜の描写も一人ずついれていくもんだから話数が増える増える。そして読者も増える増える。
うらやましい…そんな主人公にわたしはなりたい。
「なりたいのじゃーーーーーー。」
青い月に向かって吠える
「じゃーーー、じゃーーーー。」
やまびこか?何度もはね返ってくる…
「りじゃーー、りじゃーー、むりじゃーーーー。無理じゃーー」
…返事がかえってきた。
やまびこで。っていうかこの辺りに山ないし。
不思議に思い翌日エメリさんに聞いたら、月に向かって吠えると低い確率で答えが戻ってくることがあるらしい。森の民は「神々の戯れ」と呼んでいた。
………………
無理なのかよ。わしの無双展開無理なのかよ!
まあ落ち込んでもしょうがない、今自分がやれることをやろうとしょぼ~~~~んしてたら族長のゲタンが明日海に行こうと誘ってくれた。若い森の民も大勢行くらしい。
わしはすぐに立ち直った。
わしはスグにいきり立った!
……下ネタじゃないぞ。
しかし、1つだけ疑問が…まさか若い森の民って男だけじゃないよな。女の人も行くんだよな? 老い過ぎず、若すぎない。
一応考えられるオチをつぶしておく、前ふりじゃ。
よし、明日に備えてすぐ寝よう。楽しみじゃ。寝床に入ってから、ふと思う。もう1つだけ疑問が…この世界って水着あるの?まっまさか…裸か?
落ち着けわし、負けるなわし、早く寝ろわし。
待て次号!




