第50話 ミチミカのターン
「なにこれーーーーー。」
「急にどうしたのミチ。びっくりするわね。」
「だってこれ見てよ。ミカ」
「また箱見てたの…仕事しなさいよね、たまには………。」
「いつも頑張ってるしー。いや、そんなことよりこれ見てよ。」
四角い箱が敷き詰められた部屋のすき間に埋もれていたミチが箱を持ち上げ、ミカに近寄る。
「あっ、立ちくらみが……」
「うそつきなさい。イメージ体なのに立ちくらみなんてあるわけないでしょ。それにまたツインテールの格好して。」
「てへへ、週4はこの格好よ、わたし。」
「週4って、あんたもうなかなかの常連よ。マスターあれ、って言ったらお店の裏メニュー出てくるぐらいよ、ミチ。」
「…週4のイメージってそれしかないの?ミカ。…まあいいや、それより見てこのドメス星。」
「なにこれ、何もない無いじゃない。」
「そう、無になっちゃたの、これ見て。」
ミチが何もない箱の真ん中を、人差し指で差し示す。すると、指を中心に雲のような渦が巻いて映像を映し出す。
ドメス星が無帰す前の50年前ぐらいに巻き戻ったようだ。
ここには転生者20人を送り込んだ。転生なので赤ちゃんからチートなしでの人生だ。
送られた19人は平凡な転生者だった。しかし残る1人は平凡ではなかった。
2年母胎にとどまり、突き破って出てきたのだ。
人の子にあらずと恐れられ、産まれてすぐに村人に山に捨てられた。
その後すぐ、通りかかった他国の人に拾われて育てられたが、その者は悪に染まっていた。そんな者に育てられはしたが、転生者の魂の器はグレーだった。
「ちょっとミチ、この話長い?ちょっとトイレいってきたいんだけど……」
「そんなもん出るかい!私たちイメージ体やっちゅーの。なんやもう飽きたのか?
仕事は真面目だけどミカは飽きっぽいところあるもんな〜〜。会う彼氏、会う彼氏いっつも違うもんな!」
「あんたの飽きっぽいイメージそれしかないんか!イメージ体のわたしたちに雌雄の区別どころか存在自体必要ないわ。」
「ちょっとイケイケな女子高生みたいな会話言いたかっただけや、ミカ。」
「そんなことより、もうちょっと巻いてくれる。長いのはダラケちゃうから、ミチ」
はいはい、と言いながら話を巻く。
「結局この子の大人になるにつれて、器が黒く変色するのだけれどとんでもなく膨れあがってるの。魂の器がもともとは転生7回ぐらいだったのが、急に10倍以上に膨れ上がって、最後は抑制が効かなくなって、膨張に膨張を重ね、星全体をすべて巻き込んでの ボンっ や。
最後のほうはもう、全ての生きとし生ける者全部吸収しつくしての膨張だったのだけど…おかしくない?」
「確かに珍しい例ではあるけど、どこがおかしかったの?」
「実は、この子の膨張する原因が襲われたからなのよ。一緒に転生された他の19人全員に。一人残らず全員に襲われたのよ。」
「それは確かにおかしい。そもそも転生なのだから前世の記憶など残ってはいない。それなのに…転生者が全員襲ったというのは、最初から狙われていた可能性があるわね。」
「例の奴が関与していたのかもね…」
ミカもうなずく。
ジューローを転生する時に一度だけ気配を察知した奴だ。ひょっとしたら、あれもわざとかもしれないと考える。こちらに悟られたくないなら、転生した後にでも細工すればいいものを、わざわざ私たちの目の前で転移させて違う場所に送ったのだ。
ジューローが狙いなのか、飛ばした星が狙いなのかわからないが…ただ今は相手の出方を黙って観察するのみだ。
「わかってるわよね、ミチ」
「わかってるわよ、ミカ。わたしはジューローのツッコミに専念するわ。」
「何がわかったのよ、ミチ。」
「いや、ちゃんとジューローのこともみてるんやで、あたし。この間もジューローがまたラノベ展開のハーレムの事考えていやがったもんだから、わざわざ始祖鳥飛ばして、神々しい演出で、ツッコンでやったわよ。頑張ってる事ない?わたし。」
「また、つまんない事で介入して。それがどんなすごい事なのかわかってんの?まあジューローもさぞやびっくりしたことでしょうね。鳥にツッコまれては…」
「あははは、がーーーんって顔しとったわ。もちろん一緒にいた人たちの記憶はそこだけカットしといたわよ。」
「あんた、どんだけ1つのツッコミに命かけてんのよ。無駄使いしなくていい!」
けらけら笑っているミチ。やはりツインテールの幼い格好はしているが才能は目をみはるものがある。まあ無駄なことの方が多いが…
「まあいいわ、これからもジューローを見張っていてね。何かあったら連絡を。」
「らじゃー」
このツインテール達はまだ知らない。
今からジューローを毛を逆立てる程の出来事が起こることを…
……………………………
あっ、ジューローハゲだった…逆立てる毛なかった!




