第44話 ヌル族のために
結局スペードはあの後セイムさんと少し談笑した後(もちろん兄のセコス監視の元だが…)
「今度あなたの前に現れる時は、誇れる身分ととなってお会いしましょう。」とイケメンの流し目スマイルで、ネズミと共に去っていった。
あれ、ネズミ、スペードに付き従ってずっと選考会が終わるまでまってたの?商隊ごと待たせるって…ひょっとしてあいつ豪商の息子とか?どういう関係なんだ。
その後もセイムさんは他の人達に、ちやほや囲まれて、とまどいつつも楽しそうだった。
今までの狭い村の狭い範囲でしか会わない、毎日同じ人間関係だったのが、自分の生活とは全く関わりのない人たちと知り合い、狭かった視野が広がったのじゃ、とても刺激になったことじゃろう。
もう結婚するお年頃じゃし、もう結婚してもいいお年頃だし。ぜひ良縁に恵まれてほしい。わしの心からの願いじゃ。できればわしの嫁に来て欲しいのじゃ。
※※※※
わし等が選考会で遊んでいる時も、実は同時進行でちゃんと仕事はやっていたのじゃ。まず、ネル族のセコスの部下がヌル族の女衆を連れて森へと入る。昨日お披露目した、どんぐりと豆の自生状況を確認して収穫。その食材を女衆の人たちに調理する方法を周知して各家庭で日常的に食してもらう。
まあ教えるのに2、3日はかかるじゃろうが…
そして、レイク、リイクにはいつもネル族の子供達、てへぺろ隊を指揮してもらっているようにこのヌル族でも薬草の収集と乾燥、袋詰めまでの全行程を総指揮してもらおうと頼んである。
選考会の合間合間に見に行ってたんじゃが、いつものごとく、子供達を巧みに操っておった。
「整列。テヘペロ!これから諸君はネル族と同様、私の管理下に置かれる。あいさつはすべて“テヘペロ”だ。ちゃんとポーズもつけろ。このポーズは私達が仙人様の支配下に置かれている証であると同時に、勇気ある行動者の証でもあるのだ!」
うわ〜レイク張り切ってるな〜なんか軍隊みたいだな。
「仙人様の配下となれば特典がある。それぞれの働きによってポイントが配付され、100ポイント貯まると仙人様直々に称号がもらえるのだ!」
えっ…この村でも称号授与があるんだ…考えるのわしなんじゃけど…
「ちなみにリイナは“カワイーナ”の称号だ。めっちゃめちゃ可愛い娘だなという意味だ。
そして俺、仙人様の右腕である俺の称号は“コシギンチャク”だ!仙人様以外に並ぶものがいないほどの勇者という意味だ。」
おい、レイク。めちゃめちゃ話し盛ってるな。“コシギンチャク”の本当の意味は
エライ人の機嫌を取りながら周りをチョロチョロする人といったニュアンスなんだじゃど…まあ…本人がいいならいいけど。
「みんなも頑張ればこのような称号を手に入れ一生楽に暮らせるぞ。」
…ウソをつけ、ウソを。わしが適当に付けた称号なんぞ一生どころか、1日も無理じゃぞ。その歳で今から楽に暮らす事教えるなよ…
しかし、意外に盛り上がっておるな…
「それではてへぺろ部隊出発!」
「「「「うおおおおおお」」」」
「「「「てへぺろ」」」」
皆盛り上がって歓声をあげる。やっぱり森の民はチョロイのか?
レイク達は2列になって、薬草を探しに森の中に消えて行った。
4種類の草を薬草にするための全行程をどんぐり、豆と同様に2〜3日で教えなければならないので、大変じゃ。
あと、残るわしなんじゃが、族長にお願いしてヌル地域を探索するためにサポートを1人お願いした。若い、美人さんでお願いした。いいじゃないか。わしじゃって…わしじゃって……恋したい!
まあそんなロマンスとか関係なしにサポートが欲しかったのじゃが…
そんなわしにステキなサポーターが付きました。
ご紹介します。サポーター兼秘書のエメリさんです。
「ちっ…早くしろよ」
すんごく無愛想で応えられた…舌打ちだよ舌打ち。
そうなんです…すんごいツンなんです………デレはないんです………
ツンツンに尖ってますよ