第38話 4種類の薬草
「本当にお前たちは…まだ話しは終わっとらん。」
天上に打ち付けられたわしは、ゲタンの方を睨む。
ゲタンはバツが悪そうに顔をそらす。
「このどんぐりと豆はたぶんお前さん達の森にもあるじゃろう。どこにでも自生している、珍しい物でもないしの。」
「新しい食材は助かるな。これを商人との取引材料にもできるし」
「うむ、ゆくゆくは取引していくつもりじゃが、今は、あくまでも森の民の身体をつくりあげるための必要最低限の栄養素じゃ。輸出は自生頼みでなく、栽培して一定の収穫が見込めるようになってからじゃな」
「そうか…まずは森の民の生活習慣を改善してからにしたほうがいいか…」
わしとゲタンは話合いながら、これからの森の展望に思案をめぐらせる。
「わしの提案に満足してもらえたかのう?」
一息ついた雰囲気になったので聞いてみた。
「ああ、まず足下を固めようという地道な所が気にいった。わしもじゃがいもだけじゃなく、もっと食材を増やせないものかと考えていたとこだ。東の食材を取り寄せてなんとか森で育てられないかとかな。色々考えてもみたのだが…
まだまだ森の恵みを最大限に活かしてなかった事にジジイに気づかされるとはな。それが一番の収穫だ!」
ガハハハハと豪快に笑う。
それに釣られみんなも笑い合い和む。
しかし、そんな空気を切り裂く大きな声が…
「しぇからしか〜〜〜〜〜〜」
わしです。わしが言いました。福岡の方言で「少しだまりなさい」と言ってやった。なんとなく、ゴロがよかったので…九州男児風に言ってやった!
みんな驚いた顔でわしを見る。
「まだわしの提案は終わっとらんぞ、ゲタン!」
指を2回鳴らす。
今度はレイクとリイナが後ろの荷物から袋を4つ出してくる。それをゲタンの前に差し出し袋の中を開ける。
「なんじゃ、この草みたいなのは」
「これは薬じゃ。薬草じゃな」
「なんと…そんな物まで…いや、まさかこれも…」
「そうじゃ、森の恵みじゃ。今まで気づかなかっただけで、森の恵みは無限なのじゃ。」
まあ本当は何十年、何百年もかけて蓄積されていくだろう情報がわしのチートで簡単に露呈してしまったんじゃ。大丈夫かな?と、ちょっと気が引けるがこれも森の民のためじゃと割り切る。
薬草の説明をする。左から
●オナモミ〈頭痛、解熱〉………果実を乾燥
村長で実験済み。効果あり
●オオバコ〈咳止め、下痢止め〉種子を乾燥
まだ検証せず
●ガマ〈止血〉……………………花粉を乾燥
まだ検証せず
●イカリソウ〈強壮、強精〉……葉、茎を乾燥
商人ネズミに渡し効能検証中。
4種類を揃えた。薬草の名前は地球語をそのまま使用している。こちらでは名も無き草だったのでな。
「とりあえずこの4つじゃ。多分まだまだあるじゃろうが、森の民にはこの4つが取り急ぎ必要じゃと思ったからな」
「ありがたい!これはすごい発見だ。やっぱりジジイただ者じゃなかったな。
これからはおれも尊敬の念で仙人さまと呼んだほうがいいな」
ゲタンは薬草を見て目を見開き驚く。あのゲタンが尊敬の念などと、まあそれほど感激してくれたのかなと…。
しかし、この知識はチートで得たものなので自分の手柄というのは違うのではと、内心は複雑じゃ…しかしこんなに喜んでくれるならまあ、それでも良いかと思えてきた。
「ジジイでもよいが、ジューローでよいぞ。」
「そうか、ジューロー。わしは歳は下だが親しみを込めてこれからもため口でいいだろう?」
「もちろんじゃ」
わしは満面の笑みで応える。
するとゲタンがすっくと立ち上がり、
「胴上げじゃーーーーーー」
と叫んだ!
「「「「「わーーーーーー」」」」」」
と大歓声に包まれ皆がわしを担ぎあげる
「いや、またんかい!」
お前ら学習能力ないんかい。また、天井にぶち当たるわ!
なんとか興奮をおさえて、やめてもらった。




