第37話 どんぐりとまめ
セイムさん達が運んできた木の皿の上に載っていたのは…
「これはパンじゃねえか。どうやって…わしらでさえ、交易で手にいれたトウモロコシ粉を使ってでしか食べる事ができないのに、トウモロコシ粉がないジジイ達がなんでパンを作れるんだ」
わしはニンマリと笑う。ゲタンが驚いてくれて、してやったりじゃ。
「まあ、とりあえず食べてみんか。」
みんな一つずつ、つまんで食べる。
「うん、すこしパサパサしてはいるが香ばしい感じがして、とてもおいしい。だが、トウモロコシ粉のパンとは少し味が違うな。」
そういえば、セイムさんとわし以外食べるの初めてか…完成するまで時間がかかったからのう。レイク、リイナ、他の人も笑顔でおいしそうに食べてくれている。
セコスだけ、真顔でばくばく食べている。おい、食い過ぎるなよ。
「で、なんだこれは?」
「これはどんぐりじゃ!」
「どんぐり?なんだそれは」
「ほれこういう実を見たことないか?よくそのへんに落ちているじゃろ」
と指先大くらいのどんぐりを見せる。
「ああ、森にどこにでもある木になってる実じゃないか。こんなものをどうやって」
「詳しくは省くが、この実を細かく砕いて、粉状にして練って焼くだけじゃ。」
本当は粉にする為に細かい行程がいっぱいあるのじゃが、まあ、それは言わなくてもよいか。一応どんぐりと言ってはいるが、あくまでもどんぐりに似た木の実じゃ。
地球のどんぐりと違って渋味成分「タンニン」が入ってなかったのは幸いじゃった。本当のどんぐりじゃったら、お腹を壊し下痢や便秘の原因となるからのう。
身体を強化するどころか、下痢ピーを量産してしまうところじゃ。
「もうひとつあるぞい。」
指をパチンとならすと、またセイムさんがもう一つの底が深い木の皿を持ってきた。
なんか指鳴らすとかっこいいからセイムさんに伝えて、やらせてるけど…なんか…こう、
指だけの指示ってかっこいいというより、何様だよ!って感じじゃな。
何か恥ずかしくなってきた。わし反省。
その器の中には、丸いちいさな物がいっぱい入ったスープのようだ。木匙ですくって食べてみる。………柔らかい。木の実なのかこれは、スープは塩味だけなのだが、小さい実がほくほくした柔らかさで、ひとつひとつがとても味わい深い。
「うまい。いつものじゃがいものスープと違って味が濃縮されておる。実にうまい。」
ゲタンも驚いて夢中で食べてくれておる。
「ほれ、こういう実を見たことないか?これも探せば、よく見かけるじゃろ」
それは緑色をした鞘を開くと、中から小さな丸い実が1つ、2つ出てきた。
「これは、ひよこ豆じゃ。まあ、豆でいい。」
「豆だと。何とも不思議な実だ。」
「これも詳細は省くが、この鞘から取り出した豆を水に漬けて1晩置き、煮るだけじゃ。」
レイク、リイナ、他の人も笑顔でおいしそうに食べている。
セコスだけばくばく食べている。ズズズズズズズーーーーッッと音を立てて食べまくっている。おい、食い切るなよ。残しておけよ。
「この“どんぐり”、“ひよこ豆”はものすごく栄養価が高く、すばらしい食べ物じゃ。いままで森の民に足りなかった栄養がすべて詰まっておる。森の民の身体にこれまで以上の活力を与えてくれるだろうよ。」
わしが言い終わると同時に、みんな食べ終わって静かになった。
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だれもしゃべらなかった。
あまりにも静かなのでわし、おならがしたくなった。
回りが静まりかえってると、あるよね? そういう時?
と、おならをしようかどうか考えていたらゲタンがすっくと立ち上がり、
「胴上げじゃーーーーーー。」
と叫んだ!
「「「「「おおおおおーーーーーー!!!」」」」」」
と大歓声に包まれ皆がわしを担ぎあげる
「いや、っちょちょっと待つのじゃ・・」
あわてて声を出し、制止しようとするが時すでに遅し。
天井にめり込んだ…………
ここは室内じゃろ、おい!みんな、なんで気づかないの!
あっこいつらマジで忘れてたな、知らんぷりじゃ。
めり込んだわしを知らんぷりじゃ!
まあ、それぐらい興奮したという事か。ポジティブにそうしておこう。




